sakai_creativejourney

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    最近の記事

    何かに夢中になることは悪いことじゃない

    観終わったあと、気づくと、毎日のように妻と作品の感想やさかなクンのことを話している。「さかなのこ」はそんな映画だ。 監督が「さかなクンの映画であって、さかなクンの映画ではありません」と言っているように、さかなクンの人生を下敷きにしているけれど、単なる実話ものになっていない普遍的なメッセージを我々に投げかけてくれる。 主人公はミー坊。お魚が大好きでたまらない子供だ。最初は奇妙だと思う周囲の人たちも、その姿に自分もお魚への興味が湧いて来てしまう。あるいは、ミー坊を応援したくな

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      • 瀬戸内で、ハンセン病の歴史と「いま」に触れるということ

           この夏も行ったワーケーションで高松を選んだのは、開催中の瀬戸内芸術祭を鑑賞することも目的のひとつだった。今回は、これまで訪れたことのなかった女木島、男木島そして大島に向かうことにした。しかし、大島での体験は他の島とはまったく「別物」だった。  きっかけは2年前に観たEテレの「100分de名著」だった。そこで取り上げられた「生きがいについて」という本に大きな感銘を受けた。著者は神谷美恵子さん。19歳の頃にハンセン病の療養施設を訪れたことから医師を志し、やがて岡山県にある

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        • 土地とともに作家の魂は生き続ける-イサムノグチ庭園美術館と平山郁夫美術館を訪ねて-

            一昨年から、夏に「リトリート」と称して地方に1週間程度滞在することを始めたが、今年はその場所を香川県の高松市に選んだ。その最も大きな理由は牟礼町のサムノグチ庭園美術館への訪問。昨年、東京都美術館で開催された展覧会で鑑賞した彫刻群に大きな感銘を受け、現地でその全貌を何としても体験したかったからだ。    イサム・ノグチは、1904年に英文学者である日本人の父と作家であるアメリカ人の母との間に生まれ、両親の2つの祖国で活躍した彫刻家だ。だが、そのフィールドは彫刻に留まらず、

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          • 出来事の背後には、何があるのだろうか

             今も強く目に焼き付けられている写真がある。眼鏡が外れかけ、驚いたような表情を浮かべた巨漢の男性と、何かを手に挑みかかろうとしている小柄な青年が対峙する。1960年(昭和33年)10月12日、全国テレビでも放映された各党党首演説会の、正に演説中に社会党・浅沼稲次郎委員長が右翼の青年に刺された瞬間をとらえた、毎日新聞の長尾靖カメラマンによる1枚だ。その年の、最高峰のジャーナリズムに与えられるピューリッツァー賞を受賞した。  参議院選挙中の最中に起きた元総理の銃撃事件が起きたあ

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            「失われたもの」を取り戻しにいらっしゃい-上野村探訪記

             昨年度から立命館大学東京キャンパスが主催する「チェンジ・メーカー育成プログラム」というプロジェクトにファシリテーターとして関わらせて頂いている。社会人がチームとなって、地域の社会課題を発見・解決する2か月間の越境学習だ。本年度は、その対象地域が群馬県上野村に決定し、先だって現地視察を行った。  上野村は群馬県の最南端に位置し、人口が1100名。関東地方では内陸で最も人口の少ない村だが20%がIターンという全国でも有数の移住者が多い自治体として知られている。    視察当

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            「いけばな」が現代アートになるとき

             数年前から「いけばな」のワークショップにファシリテーターとして携わらせて頂いている。日本マンパワーと草月流が共同開発したもので、大きな環境変化に直面する企業人に、自己を内省する意味と他者と協働する価値を体感して頂くことを目的としている。ワークショップは、前半パートで個人としての作品制作、後半ではグループ作品制作にチャレンジする流れになっている。  参加者のほぼ全員がいけばな初心者だ。しかし、いつもながら作品の出来栄えに驚かされる。先日開催した回では、特にグループ作品が素晴

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            モノクロの時代を生き抜いて来た作家の軌跡-「ゲルハルト・リヒター展」を観て

             東京国立近代美術館で開催中の「ゲルハルト・リヒター展」を鑑賞した。リヒターは、1932年にドイツ東部のドレスデンで生まれ、ベルリンの壁が作られる直前に西ドイツに移住し、比類のない作品群で今や現代における「生ける伝説」的な存在になっている作家だ。その生涯も映画化されている。 ゲルハルト・リヒター展 (exhibit.jp)  そのリヒターの全貌や最新作も紹介されることもあって、本展覧会は本年最大の注目を浴び開催が待たれていた。語り尽くされて来た作家だが、私自身はその作風につ

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            「夢想する力」は、誰にも奪えない-「大地の芸術祭2022」探訪記-

             初めての「大地の芸術祭」探訪記。前編は、越後妻有という土地に根ざし、その土地の記憶や文化を知る「案内役」としてのアートについて書いたが、後編では印象に残った作品について書き記したい。  まず、集落で廃校となった学校を美術館として再生させた2つの作品を紹介する。ひとつは「鉢&田島征三 絵本と木の実の美術館」もうひとつは「最後の教室」である。  「絵本と木の実の美術館」は、絵本作家・田島征三が2005年に廃校になった鉢集落の旧真田小学校を「空間絵本」として、集落の人たちと共

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            「土地の記憶の案内人」というアートの価値

             新潟県越後妻有地域(十日町市、津南町)で開催中の「大地の芸術祭」に、初めて足を運んだ。2000年7月に第1回が開催され、今回が第8回となる。今では日本中に広がった感のある地域芸術祭のパイオニア的な存在だ。開催期間は、4月29日から11月13日までと6か月半に及ぶ。その体験記を、「地域とのつながり篇」「作品篇」の2回に分けて綴りたい。 大地の芸術祭 (echigo-tsumari.jp)  この芸術祭は5つのエリアに分かれ、しかも2000年以来の作品も残っているので、作品

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            その意思決定。誰かに誘導されていませんか?-映画「PLAN75」を見て

             第75回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で特別賞を受賞し話題となった映画「PLAN75」を鑑賞した。早川千絵監督にとって初の長編作でもある。 映画『PLAN 75』オフィシャルサイト 2022年6/17公開 (happinet-phantom.com)  舞台は少子高齢化がさらに進んだ日本。ある事件を契機として、満75歳から生死の選択権を与える制度「プラン75」(まるで生命保険の商品名のようだ)が国会で可決され、制度として導入される。物語は、この制度の当事者や関係者とな

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            「107年の人生」という作品-篠田桃江展を観て

             東京オペラシティアートギャラリーで開催中の「篠田桃江展」を鑑賞した。 篠田桃紅展展覧会について|東京オペラシティ アートギャラリー (operacity.jp)  篠田桃江は1913年に中国・大連に生まれ、1956年に渡米しニューヨークを拠点に作家活動を行いながら抽象表現主義の作家たちとの交流を行った。帰国後は壁画や壁書、レリーフなどの建築に関わる仕事や寺社の襖絵などの大作を描く一方で、リトグラフや装丁、題字随筆を手掛けるなど多岐にわたる活動を長年に渡って精力的に行いなが

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            私たちは本当に「見て」いるのだろうか

                アーティゾン美術館で開催中の「写真と絵画―柴田敏雄と鈴木理策」を鑑賞した。会場入り口の「ご挨拶」には、企画の趣旨として「人間がものを見て表現するという近代(モダニズム)絵画に共通する造形思考を感じる2人の写真家の作品を通じて、現代の写真作品と絵画の関係性を問う」と述べられている。 ジャム・セッション 石橋財団コレクション×柴崎敏雄×鈴木理策 写真と絵画ーセザンヌより | アーティゾン美術館 (artizon.museum)    鈴木のコーナーでは、モネの睡蓮やク

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            頑固なふくよかさーボテロ展を観て

             渋谷Bunkamuraで開催されている「ボテロ展-ふくやかな魔法」を鑑賞した。また、それに先立ち同じく展覧会と同時にBunkamuraル・シネマで公開された映画「フェルナンド・ボテロ-豊満な人生」にも足を運んだ。 ボテロ展 ふくよかな魔法 | Bunkamura 映画『フェルナンド・ボテロ 豊満な人生』公式サイト (botero-movie.com)  フェルナンド・ボテロは南米コロンビア出身の画家で、現在90歳でなお活動中。本展覧会は日本では26年ぶりの大規模展とな

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            アーティストに「オトナの事情」は通じない

               森美術館で開催中の「Chim↑Pom展:ハッピースプリング」を鑑賞。ネーミングやポスタービジュアルのポップさから鑑賞を迷っていたが、研究している領域の代表的な存在でもあり、予備知識のないままに足を運んだ。 Chim↑Pom展:ハッピースプリング | 森美術館 - MORI ART MUSEUM    6人のメンバーによるこのアーティストグループは、コンテンポラリーアートのカテゴリー的には「アーティスト・コレクティブ(複数のアーティストによる協業形態)」ということにな

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            人間性について

             それにしても、2022年のいま、これまで映像や本で見聞きしていた人間の残虐性を毎日のようにニュースで見せられるとは思ってもいなかった。ロシアがウクライナへの侵略を始めて1か月。既に数千の民間人の命が奪われ、避難民は400万人を越える(4月2日現在)と報道されている。だが、その様子を眼にしながら少額の寄付をすること以外、何もできない無力感がある。  日本のメディアに比べて、毎朝NHK-BSで放送されるBBCなどの各国メディアは、容赦なく悲惨な状況を見せる。ロシアがかつてのナ

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            ハリー・ポッターと世界の再魔術化

              先日、東京ステーションギャラリーで開催されている「ハリー・ポッターと魔法の歴史展」を鑑賞した。 ハリー・ポッターと魔法の歴史展 - 2021年秋より兵庫・東京2会場で開催 (historyofmagic.jp)    この展覧会は第一作「ハリー・ポッターと賢者の石」出版20周年を記念して大英博物館で行われた展覧会(Harry Potter: A History of Magic)の国際巡回展。J.K.ローリングの原作に基づき、ハリーが通ったホグワーツ魔法魔術学校の科目

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