“ゆっくり”でいいじゃないか
先だって「年齢を超える」をテーマにしたイベントに登壇させていただいた。プロデューサーとして参画している日本マンパワー・キャリアのこれから研究所が開発した「これからのキャリア発達モデル」が提唱している“9つのテーゼ”のひとつが「年齢を超えよう」。その実践者?としてお声がけいただいたのだ。
私自身、果たして年齢(という枠組み)を超えたのかどうか・・・モヤモヤしている。その理由は後ほど述べたい。
ただ、会社勤めを卒業して小さいながら自分のビジネスを立ち上げるようになってから、年齢を意識することが少なくなっていたのは確かだ。それは裏返せば、会社という“装置”が強制的に年齢を意識させる構造になっているからだと言える。年次主義、昇格、役職定年そして定年・・・。常に「大人になれ」と言われ続け、身にまとう鎧(よろい)が重くなっていき、いつしか“ミドル”“シニア”と一括りにされていく。同時に、子供時代に持っていた創造性が失われていく。なので、「年齢を超える」を私なりに定義すれば
強制的に年齢を意識させる構造から自由になろう
ということになる。
さて。イベントの冒頭では、81歳でiPhoneアプリを開発した世界最高齢のプログラマー 若宮正子さんのインタビュー映像が紹介された。2年前の撮影にも立ち会ったが、再びお話をお聞きして、改めて心に残る言葉があった。
慌てなくていい
この春突然、私は体調を崩した。息切れがして病院で診てもらうと呼吸をつかさどる左の横隔膜が半分ぐらいに萎(しぼ)んでいた。横隔膜麻痺という症状らしい。以来、度重なる検査をやってもその原因がわからない。困ったことは、ひとつの疾患によって、どうやら体のバランスを崩してしまったことだ。腹痛、胸やけ、吐き気・・・日々、異なる症状が現れる。
困り果てて、漢方の薬局に飛び込んだ。そこで言われたことは、どうやら体の機能を調節したり維持したりする自律神経の障害、いわゆる自律神経失調症になっているらしいということだった。
その時に、見せてもらった画がこのようなものだ。本来ならしっかりと根が張った状態の上に木が立っている体の状態が、根の生え方がバラバラになり幹も枝も傷んでいる。
幸い、漢方薬によって徐々に症状は改善してきている(しかし、横隔膜麻痺の原因は依然、謎のまま)。
この経験を通じて実感しているのは、人の機能を分割し、対処療法を行う西洋医学の在り方というか限界だ。それぞれの科(消化器、呼吸器、内科、外科・・・)は、自分の専門範囲には知見があるが、その枠から外れると途端に興味さえ失うように見える。それは西欧的な近代科学の限界でもあるように感じる。
自律神経の専門医の本を読むと「ゆっくり」が神経を整える秘訣だという記述があり考えさせられた。自分がなぜ、年齢をさほど意識せずここまで何とかやって来ることができたのか。それは、年齢を意識する余裕が無いほど全速力で駆け抜けて来たからだ。
しかしいま、その“ツケ”が体に影響を及ぼしているようだ。こうした想いから、若宮さんの言葉が心に刺さったのだろう。
そして思うのだ。私に限らず多くの人も組織も社会全体も根っこが弱くなっている自律神経失調状態になっているのではないか、「ゆっくり」でいいんじゃないか、と。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?