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詩の真似事

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憧憬する詩人達の、詩の真似事です。
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記事一覧

詩の真似事「朝の輝き」

詩の真似事「朝の輝き」

朝の輝きに暴かれそうな
原罪めいた後ろ暗さは何だろう
すれ違う人達の顔つき
明るい訳でもない
行くべき場所のある人の顔つき

日中の薄気味悪い落ち着きの中
淡々と作業をこなす
地球が回っているだなんて
どうでも良かったことなのに

夕暮れ時は物語然とした
大袈裟な歩き方の連中ばかり
どうせ沈むのに勿体ぶって
何かに期待をしている

夜の闇は浮き彫りにする
煌めく生活の理性と
浮浪者の美しい酩酊を

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詩の真似事「夜の裂け目」

詩の真似事「夜の裂け目」

窓を叩く答えがうるさくて眠れない
削れた言葉が歪に意味を散らす眩しい夜
イメージを抱かせた筈の言葉が
いつの間にか別の意味を孕んでいる

あの人の笑顔がちらつけば
もんどりをうつよ
どうか幸せでいて

夜の裂け目を探すように真夜中の風を喰らう
燃やし続けたハートは殼になって
焦げ付いた感性で失せた感覚を思う

心底震えているよ
波打つ胸中で
沈殿していた思いや記憶が翻る

詩の真似事「あの、夏の日」

詩の真似事「あの、夏の日」

昼下がりの多幸感
団地の階段を駆け下りて行く
帽子を被り直して

飛行機が低く飛んでいる
もう何も聞こえなくなりそうな
あの夏の日

(胸に湛えた全てで世界に痕を残していく、あの頃はそうだった)

焼け付くようなアスファルトに
バケツをひっくり返すように生きた
あの、夏の日

詩の真似事「夕焼け」

詩の真似事「夕焼け」

"美しいもの程、脆く儚いんだね"
どこかで聞いた気障な科白を
ふと思い出していたんだ

あの人の笑顔が夕焼けみたいだったから
赤く燃え上がりながら
闇にじゅっ、と抱かれていく

端から正常な 人生なんてなかったんだ
夕焼け 沈んだ
あの人は笑っていた 
あの人は笑っていたんだ

詩の真似事「Something ain't quite right」

人間、属することからは逃れられない
死んでも数えられてしまう
数えられてしまうんだ

何かが完全に間違っていた夜
立ち並ぶ街路樹を横目に帰路に着く
綺麗に植えられて整えられて
いつからそこに居たんだ?

"明るく振る舞えば気付かれないさ"
何かが完全に間違っている
それが俺とは思わなかった
いつまで繰り返すつもりだ?

雑巾のように絞られる胸から滴る感受性の泉。
もう二度と出会うことはない。

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詩の真似事「人波」

詩の真似事「人波」

行き交う人波に溺れることもなくなった
昨日に取り残された人が居たとしても
明日にはいない人が居たとしても
毎日綺麗に泳いでいける

街を突き抜ける電車にいくつもの生活が溢れ返る端っこで知らない顔をしていても
見逃してはくれない
絶対に
責任を負うんだ

ふやけてしまったハートを
いくら擦っても発火せずに黒ずんでいくだけ
繊細な感性ほど
自分の鈍感さに気付いているもの

押し殺した感情の返り血がこび

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詩の真似事「詩なんて書けない」

詩の真似事「詩なんて書けない」

この世を疑っている
信じられないようなことばかりでも
自分を疑うこと程悲しいことはないから
唇を噛みながらこの世界を疑っているんだ

明日も今日の繰り返し、二度と無いこの日々を
画面や音声に飛び込んで何もかもを知らない振り
運良く「何か」を書けそうになっても

詩なんて書けない
憧憬した詩人の作品の頁を捲る度
溜息交じりに思う
未開の地を記した地図を広げるような高揚感 
活字が織り成す示唆に導かれ

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詩の真似事「創」

詩の真似事「創」

あの日の創がいま
希望を萌すなんて
当て嵌めていたタイプ
気付けば壊れていた

生きている意味なんて
計り知れないから
いつも分からないよ
始まりのときは

切り捨てた思いも
何処かで根を伸ばしている
見えないだけでずっと
繋がっているんだ

諦めなくてもいい
忘れなくてもいいよ
当て嵌めていたタイプ
気付けば壊れているんだ

詩の真似事「夏の日」

詩の真似事「夏の日」

昼下がりの多幸感
階段を駆け下りていく
帽子を被り直して

飛行機が低く飛んでいて
もう何も聞こえなくなりそうな
遠い夏の日

―胸に湛えた全てで世界に痕を残していく―あの頃はそうだった

焼け付くようなアスファルトに
バケツをひっくり返すように
生きていた
あの夏の日

詩の真似事「寂しいアジテーター」

世界は歪んでたと
アジテーターは叫んでる
どう見えるかなんて自分で決めるよ

踏みにじられたものを掲げて
デモの群れは進んでく
威勢の良い足音を立てながら

騙されてたんだと
間抜けは掴んだ真実を
その手で垢まみれにする

不条理じゃないかと
ロックンロールが叫んでいる
条理の下でのうのうと 

「そうさ俺達アナーキー」
こんな間抜けなフレーズ知らないよ

詩の真似事「落とし穴」

嵌ってしまった落とし穴
何の変哲もない道の上に
人じゃない誰かが仕掛けた
深い暗い落とし穴

なんとか抜け出そうとして
手足を岩肌にかけるけど
いつも滑って底に打ち付けられる
そのときの痛みが
この思いの重さ