PARK GALLERY × crevasse presents『COLLECTIVE』2018 特設ブログ
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オオイシモヘ 『MAYDAY』 (静岡県静岡市)
多くの小学生がそうであるように他聞にもれずぼくも毎日のように漫画を描いていた。日本中の男子が人生に一度は描くであろう『主人公』が剣を持って冒険するタイプのギャグ漫画である。誰に見せるでもなく描かずにはいられない衝動あれは今思えば ZINE の目覚めかもしれないが、日々廊下を全力でダッシュする少年の有り余るエネルギーと感受性の矛先がノートの上に描かれたスライムかと思うと泣けてくる。けれど、あの時、誰
もっとみる山上 健太郎 『2』 (新潟県)
ぼくの髪が少し伸びすぎてる時、ぼくの髪がおかしな方向にハネてる時、ぼくが髪をくしゃくしゃに掻きむしってる時、そんな時は決まってあんまり『よくない』。よくない時期であり、よくない日であり、よくない瞬間である。そういう時は決まって仕事が忙しかったり、生活のリズムが乱れていたり、そのせいで余裕がない。時間が経つのが早い。足並みが揃っていない。昨日のランチが思い出せない。そんな時は「えいっ!」と目に止まっ
もっとみるヤグチリコ 『アサクサジン』 (東京都台東区)
とにかく本とお酒、それと音楽が好きな彼女が指定する待ち合わせ場所は、いつだってお酒が飲めるお店で、遅刻癖のあるぼくに罪悪感を感じさせないよう本を読んで待っている。メールで「遅れる」というと、「もっと遅れて」と返ってくる。
その日は浅草。指定された待ち合わせ場所は昭和の風情漂う喫茶店。指を挟んだ吉行淳之介の文庫本(エッセイ)をそっとポーチにしまいながら、「冷房が効きすぎのくせに瓶ビールはぬるい」と
星野佑奈 『in a water.』 (東京都杉並区)
一冊の本に綴じられたとき、そこには「一つに綴じられるだけの何かがあった」と感じる。それはコンセプトと呼ばれたりテーマと呼ばれたりして、「私」と「あなた」の接点がない場合には特にそれは重要な意味を持つ。
「私」と「あなた」の間にはなにひとつ共通言語がないから、互いの共通言語となりえるポジションを設定することは大事になるんだと思う。ZINE の場合もそれは同じはずだが、比較的その共通言語が未成熟なも
イシミチヨ 『わたしのお気に入り』 (福岡県福岡市)
捨てられないでずっと持っている『お気に入り』があるひとがうらやましい。モノ・コトを大切にできる気持ちがうらやましい。『便利』に負けない気持ちがうらやましい。
いまこうして原稿を書いている部屋にだって集中できないくらいたくさんのモノが溢れているけれど、とっておきのお気に入りというものが1つも見当たらなくて愕然としている。捨てられないものはある。一点物もある。けれど、だいたいのものはまた買えばいいし
福田 真也 『FLOPS & LINES - 10 stories about "Good Life" -』 (東京都世田谷区)
一度レビューは置いておいて(ついにレビューを置いた!)
今回の COLLECTIVE 。『ZINE』のあり方について大いに語る時間も機会もたくさんたくさんもらえたし、それを理論的に構築する相手も、感情的に隆起させる相手も幸いいて、でもまだまだ輪郭が掴めずにいる。エキシビジョンも終わったばかりでとてもじゃないけれど整理されていないので、語弊なく言えたらいいけれど、輪郭が掴めない要素を少しだけ分解し
saorin 『旅と山と、』 (東京都台東区)
羨ましい。
今回並んだ ZINE を見た時に、もしくは今回並んだ ZINE の制作のプロセスをひとつひとつ見た時に『羨ましい』=『嫉妬』に似た感覚を覚えたのはこの1冊に尽きると言える。デザイン、写真のクオリティはもちろん、ストイックなようでやわらかな雰囲気も残っていて、遊び心やロマンチックな要素も忘れていない。自分が作るんだったらこういう ZINE だったなあと頭をかく。
saorin『旅と山
さかもとめぶき 『めぶきの本』 (大阪府大阪市)
今回の COLLECTIVE の会期中よく会場を飛び交ったフレーズの1つに『レトロ印刷』という存在があります。ZINE ブームに拍車をかけたとも言える『レトロ印刷』とは。
製本しかり、紙しかり、手触り、立体感、発色などなど、ZINE の個性を強く印象づける多くの要素はレトロ印刷にお任せ! とも言える存在。今回の COLLECTIVE でもレトロ印刷による印刷・製本は多く、見るにも触るにも楽しめま
凸 works 『GM / ZINE no.1 2018 / August』 (徳島県)
今回、47都道府県の各地から100冊以上の ZINE が集まった COLLECTIVE。100冊の ZINE があれば100通りの梱包があると思いきやそうでもない。
一番多いのは『レターパックプラス(510円)』なんといっても番号による追跡機能があるのと、対面での(署名による)受け渡しが必須になるので郵便事故などがないので、取り扱い側も安心。送る側もポスト投函で済むので楽。対面の受け渡しのないレ
かなた 『Kindar garten』 (秋田県)
中学1年の時に付き合っていた村岡さんとは、ぼくの転校がきっかけとなって別れることになる。父の仕事の都合でぼくは東京から山形へ。ときどき手紙を書くね、と村岡さん。うん、と、ぼく。公園のベンチでクールにうなづいたはいいけれど、どうでもいいからキスしたかったのを覚えてる。
村岡さんは美人なうえにスタイルもよく、スポーツもできて頭も良くて明るくて手先も器用、女優を目指すと言って中学では演劇部に入った。そ
廣田くみこ 『Q』 (兵庫県伊丹市)
あっという間に終わってしまった COLLECTIVE。もっともっとたくさんのひとに来て欲しかったし、参加してくれた作家さんや来てくれた人にもっと喜んでもらえるようなアイデアもたくさんあったしカタチにできないまま終わってしまったのが本当に悔しい。カタチにしたかったアイデアのひとつに、ZINE とのコラボレーショングッズ案がありました。ZINE の中の印象的なページをTシャツやトートバッグなどに落とし
もっとみるhatopan 『hatopan FIRST BOOK 2018』(神奈川県横浜市)
21歳の頃、自分が何をしたいのか、何を表現をしたいのかまったくわからずひたすら写ルンですを片手に街に出てみたり、とにかくスケッチブックを買ってきて絵を描いてみたり、原稿用紙を買ってきて文章を書いてみたりするのだけれどどれもこれも途中で終了。最後まで完成させたものなど、ない。
『表現したい』
という漠然とした感覚を抱きながら、『表現なんて別にしたいと思っていない』ひとたちと自分の間に線だけ引いて
久米 真弓 『あなたは本当に猫ですか?』 (長崎県大村市)
やっぱり猫が好き。猫が好きなひとも好き。かく言うわたしも猫が好き。10年くらい前『アトム』という名前の猫を恋人と一緒に飼い始めた。猫を飼うために豪徳寺駅のペット可のアパートへふたりで引っ越した。仕事から帰ると、主人の帰りを待ち侘びた子猫アトムが窓のそばに駆け寄ってくる。音で気づくのか、においで気づくのか、気配で気づくのか不思議なものだなあと。『主人』という言葉を使うと、主人は私だと、もうひとりの飼
もっとみる東地 雄一郎 『A=A A≠A(moutain)』(東京都武蔵野市)
繰り返し行われることについて少し考えてみる。毎日寝て起きる。ごはんを食べる。歯を磨く。シャワーを浴びる。息をする。これらはまぁよくも飽きずに毎日毎日という感じではあるけれど、『必要』に駈られているわけで、かつこれらの行為には常に『選択肢』が与えられているのでまぁなかなか飽きない。そして毎日同じようでほんとうは毎日少しずつ違う。逆に言うと昨日とまったく同じというのは不可能。
工場の機械も、永遠に反
こばやし まい 『コーヒーのはなし』 (富山県滑川市)
ぼくが高校生の頃に所属していた演劇部では代々、先輩から『喫茶店文化』が受け継がれる。ある日、数人が先輩に連れられてそのジャズ喫茶へ行くのだ。席も決まっていて、必ず入ってすぐ右のボックス席。店の外から覗いても見えない位置にある席だからたばこが吸える。コーヒーとたばこ、それにジャズと演劇論さえあれば何時間だって居ることができた。時にジャズの音が大きくて口論がヒートアップして行くこともある。『先輩のその
もっとみる上杉あき 『夢と日常』 (静岡県三島市)
絵はうそがつけるからいい。雨の日に青空の写真は撮れないけれど、雨の日に青空を描くことならできる。そっけない窓辺に花を飾ることもできる。あの時食べたトーストの味をいつだって思い出すためにつく嘘ならどんな嘘を筆に乗せてもいい。夜の街にキリンがいたっていいし、行ったことない世界に旅することだってできる。夢みたいな光景がたくさんあったっていい。遠くの景色を描くために空を飛んだっていい。葛飾北斎だって空も飛
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