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山上 健太郎 『2』 (新潟県)

ぼくの髪が少し伸びすぎてる時、ぼくの髪がおかしな方向にハネてる時、ぼくが髪をくしゃくしゃに掻きむしってる時、そんな時は決まってあんまり『よくない』。よくない時期であり、よくない日であり、よくない瞬間である。そういう時は決まって仕事が忙しかったり、生活のリズムが乱れていたり、そのせいで余裕がない。時間が経つのが早い。足並みが揃っていない。昨日のランチが思い出せない。そんな時は「えいっ!」と目に止まった床屋に入って、短くしてもらう(ついでにヒゲもきれいに剃ってもらう)。すると不思議と足取りが軽くなったり、ごはんがおいしくなったり、悩みがふっと台風が去った後のように晴れていたりする。小沢健二の中でいちばん好きな「天気読み」という曲の一説が浮かぶ。

きみのいっつも切りすぎの前髪のような
変な気持ちだってどうにかなってゆく

あまり関係ないね。閑話休題。

失恋の時、ハレの場に出る時、子供の成長の記念などなど etc... ひとは様々な大事な場面で、髪に感情や想いを託す。しかしある A という場所では茶髪はチャラいと言われ、黒髪や金髪は美人と言われ、天然パーマは馬鹿にされる。B では国民的アイドルは茶髪で、金髪はヤンキーで黒は地味で、で、パーマにたっぷりお金をかける。C ではハゲは死んだも同然で、D ではロン毛は非国民で、E では「キサマッ帽子を脱げい!」と言われる。ただ、『髪』というのは我々が自覚してる以上にそれぞれの個性を記すアイコンで、時に髪には『文化』や『思想』が宿り、時代を内包する『ファッション』とは違った文脈を『髪』に託したかと思えば、多くの人はファッションとして語る(片付ける)。服とは違って、自分の持っているポテンシャルであるにもかかわらず、どうも曖昧にことを済ます。信じたり信じなかったり…と、文化人類学的な話に持って行こうとしたけれどうまくいかなそうなので、話を戻します。

新潟の美容師・山上健太郎氏から届いた ZINE『2』は、街で声をかけた女性の髪を実際に山上氏がカットし、彼女をモデルに撮影をすることでヘアを含む世界観(メッセージ)を『作品』としてまとめた1冊の ZINE 。美容師のインスタグラムあるあるとも言えるディテール紹介のドヤ顔ヘアカタログ的なアプローチではなく、そこに写る女の子たちからは、『かわいい』というアイコニックな印象だけではなく、漲るばかりの自信や希望を感じる。それはヤマケンとカメラマンと被写体のあいだの『コミュニケーション』が育んだ(ファッションやスタイルとは違ったレイヤーが生んだ)『魅力』であると言える(一緒に飲んだ仲なんでヤマケンと言わせてもらいます失礼)

髪を切ることで彼女の魅力=自分らしさを解放する。この解放させるというコミュニケーションがカウンセリングのようなシャーマニズムのような。つまり『髪を切る』という行為は、どこか神秘的で、内面的で、内側があれば外側もあるわけで、そこを開く作業に文化的な交流が感じられる。

会話する → 髪に触れる → 切る → 変わる

探そう 新しい自分を ー 山上健太郎『2』より

美容業界をファッショントレンドや流行の坩堝で片付けてしまうのはもったいない。70億人が1ヶ月に1回髪を切るとして、日々における髪を媒介したコミュニケーションの数は世界的にも膨大。髪を切ることで発電なんてことができたら未来の電力はじゅうぶんかもしれない(うそ)。

いや、ぼくは仕事柄、ヘアの『アート的表現』の可能性を第一線の現場で見させてもらってきた。スタイル(様式美)やコンテクスト(文脈)だけではなく、ひとの心象にまで入り込んで行くようなヘア表現だ。もしくは圧倒的なテクニックで作り上げたアートモチーフとしてのヘアスタイルなどなど。ここ数年でどのくらいの進化を見せたか追えてはいないけれど、まだまだヘア業界のセントラルは国内では東京と言えるような気がする。そしてアートとしてはまだまだ未成熟なんじゃないかなと思う。そんな中、COLLECTIVE を通じて、新潟と PARK は繋がった(そしてこれからはセントラルという感覚はどんどんなくなっていくと思う)誰でもどこにいても新しいことに挑戦できる時代だし、発信だって世界中どこにでもリーチできる時代。センスがあればどこにだっていける。ZINE ひとつでコミュニケーションができる。みんなそれぞれの分野がどうだなんて関係ない。自分のスキルを信じて ZINE にしていくといい。伝えたいことがあるなら、想いがあるなら発信して行くといいと思う。

と、上から目線で猛省(だいたい酒を飲みながら書くのがよくない)。なので、もうこれはレビューというより、ヤマケンへのエールに変えさせていただきます。今度新潟行ったらぼくの髪もかっこよくしてね。どうぞよろしく。

ー Written by 加藤 淳也(PARK GALLERY)

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エントリー新潟県

山上 健太郎 / yamaken.

自分がやってきた事を形として残したい、沢山の人に伝えたい、知って欲しいと思い製作しました。自分なりの表現で ー 山上 健太郎


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2018年8月1日(水)より PARK GALLERY で開催中の 47都道府県の ZINE を公募し展示販売するエキシビジョン COLLECTIVE 2018。各地から100タイトル近く集まった様々なジャンルの ZINE を、その地域の魅力と併せて順に紹介していきます。
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