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反響が大きかったもの

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これまでの記事のなかから、反響が大きかったものを集めました。 スキが多かったもの、コメントをたくさんいただいたもの、ビュー数が多かったものを中心に選んでいます。
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#日常

幸せはもう寒さに隠れてはいないから

幸せはもう寒さに隠れてはいないから

子どもの頃によく訪れた祖父母の家には、使っていない火鉢があった。中ほどが丸く膨らんだ樽のようなフォルムがなんだかユーモラスでかわいらしかったのを憶えている。炭火をおこすとかいう、その使い方を教わったときは驚いた。「え? そんなことであったかくなるの……?」。

ファンヒーターやこたつのあたたかさよりも、ずっと頼りなさそうに思えた。?? それってほんとうにあったかい? 祖父母の家は古く、寒かったから

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きれいごとの効能

きれいごとの効能

「ん? そいつぁ聞き捨てならねえな!」。思わず、時代劇に出てくる人物みたいなセリフを口にしそうになった。

ちょっと単価の高い喫茶店でコーヒーを飲んでいたときのこと。私は人と待ち合わせをしていて、コーヒーの値段にそわそわしながらカップを持ち上げていた。お、お高いわ……。

近くのテーブルに大きな声で話す男性がいて、いやでも会話の内容が耳に入ってきた。

「世の中の人間は80%がアホ。そのアホをどう

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料理下手が錦糸卵をつくるの巻

料理下手が錦糸卵をつくるの巻

錦糸卵をうまくつくれない。

夏休み中は、娘たちの昼食を用意しなければならない。料理の苦手な私にとって、けっこう大変なことだ。給食ってなんてありがたいシステムなんだろうと、幼稚園の方角に向かって拝みたくなる時期の到来。

だいたい毎日いいかげんな昼食で済ませている。レトルトミートボールをチンしたものに卵焼き、トマトとブロッコリー、スープをつけて終わり、みたいな。オムライスや焼きうどんならいいほうだ

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パプリカのお味噌汁とプチライフハック

パプリカのお味噌汁とプチライフハック

「パプリカのお味噌汁って、ありやと思う?」

スパッと半分に切ったパプリカを手にした私は、夫に聞いてみた。

真っ赤でつやつやの、かわいいパプリカ。あまりにも立派すぎて、昨夕の炒めものには半分しか使えなかったのだ。残りはなんにしよう?

こういうとき、料理経験が浅いのは困る。多少はレパートリーが増えたとはいえ、素材からレシピを連想する力が圧倒的に弱い。

「冷蔵庫にあるものでパパッとなにかをつくる

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もしも夏休みが1か月あったなら

もしも夏休みが1か月あったなら

夏休みを1か月取れたのは、何年前だろう。6年前、妊娠を機に退職した。けれど、夏の盛りに出産を迎え、そこから双子育児にドドーッと突入したので、ずっと夏休みらしい夏休みが取れていない。会社員時代、転職のあいまでも1か月の夏休みなんて、なかった気がする。

となると、大学時代だ。大学生の頃は、夏休みが1か月くらいあった、たしか。

今はどうかわからないけれど、当時、国立大学の試験は9月だった。だから、解

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出会いと別れだらけの人生で

出会いと別れだらけの人生で

夏だというのに、別れがやってきた。

大切な友人が、海の向こうへと羽ばたいてしまう。彼女の人生を考えれば応援してあげなければいけないとわかってはいても、やっぱりさびしい。

井伏鱒二も言ったじゃないか。「花に嵐のたとえもあるさ」と。さよならだけが人生らしい。あ、もとは漢詩なのだとか。

でも、今はオンラインお茶会もできるし、SNSでもメールでも、かんたんに近況報告ができる。現に彼女は「向こうに着い

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最近読んだ本たち(走り去った6月分)

最近読んだ本たち(走り去った6月分)

6月はいきなり台風による大雨に見舞われた、気がする。1か月も経つと記憶がおぼろげになるのが悲しい。

以前、5月は逃げていったと書いたけれど、6月は走りさっていった。手もとに一瞬たりともとどまらぬ時の流れ、どうにかならないものだろうか。

『出版翻訳家なんてなるんじゃなかった日記』 宮崎伸治

村井理子『本を読んだら散歩に行こう』のなかで紹介されていた一冊。もちろん私は出版翻訳家ではないけれど、読

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後悔と、心のこりと、優しさと。

後悔と、心のこりと、優しさと。

優しさにふれて感激したことがたくさんある。私はたよりない人間なので、ときどき心優しい人が助けてくださる。見ていられないほど危なっかしいのだろうと、反省してばかり。

なかでも、6年前の妊娠中は接する人みんながあたたかかった。あの優しい世界に身を置けるなら、もう一度マタニティライフを送ってみたいと思うくらいだ(思うだけ)。

とはいっても、妊娠初期はつわりがひどく、吐き気をこらえて涙目で通勤していた

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誰かと誰かがつながる世界で

誰かと誰かがつながる世界で

ここのところ、「こわいわぁ……」とつぶやく機会が増えている。

なにがこわいって、旧友や昔の同僚・知人たちが思わぬところでつながるようになったことだ。そういう話を見聞きする。

30年来の女友達は、たまたま私の義弟と同業で、同じ学会に所属している。「先月、学会で○○先生(義弟)とまたお会いしたよ」そんな話をしてくれる。仕事でもメールのやり取りをすることがあるのだそう。

数年前、初めてそれを知った

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いつまでたっても娘の時間

いつまでたっても娘の時間

父と百貨店へ出かけた。近々、自宅にお客さまを迎える予定があるので、お菓子を買いに行ったのだ。

別に父といっしょに行く必要はなかったのだけれど、このところ実家に引きこもりがちになっているのを知っていたから誘った。

腎臓病を抱える父は、一日に数回、家で腹膜透析をしている。だから、あまり遠出はできない。百貨店で買い物して、軽く食事かお茶をするくらいならいいだろうと思った。

百貨店でお菓子のほか、こ

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恥ずかしいってまだ言わないで

恥ずかしいってまだ言わないで

長女が「恥ずかしい」と言ったことにショックを受けるアラフォーの話。

先日、双子の娘たちと手をつなぎ、ピアノ教室に向かって歩いていた。彼女たちももうすぐ6歳。「大きくなったなぁ」なんて親っぽい感慨にひたりながら、おしゃべりする。

「長女ちゃんも次女ちゃんも、大好きだよー。かわいいよー」

歩いているとき、ちょこちょことこんなふうに声をかける。だって、かわいいから。

すると、長女が言った。

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イエローベージュは自由と責任の色

イエローベージュは自由と責任の色

ゴールデンウィークのはざま、今日の大阪はとてもよく晴れている。あまりに気分がよくて、午前中はファミレスに吸いこまれた。レアチーズケーキで、朝のコーヒータイム。なんてしあわせ。

さて。

髪をカラーリングするようになって、もう20年ほどになる。大学生になってすぐ、初めてのアルバイト代をお財布に大切にしまい、美容院でイエローベージュに染めてもらった。それ以来、私の髪は地毛より明るいベージュ系の色を保

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私と彼女たちの人生にゲームを

私と彼女たちの人生にゲームを

思っていたより自分はずいぶん頭の固い人間だ。面白みもない。そう思い知る瞬間が、日常生活のなかにたくさんある。

たとえば、今朝。

幼稚園に行く時間が迫っているというのに、なかなか着替えようとしない双子の娘たち。登園準備がまったく進まない。「はだかんぼだじょー」「制服きるのめんどくさーい」とか言って、いつまでも下着姿または私服のままでギャハギャハ笑っている。手にはレゴ。着替える気はゼロに近そうだ。

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気負わず、勇まず、ランドセル

気負わず、勇まず、ランドセル

来年小学校に入学する双子の娘たちのランドセルを、やっと、やっと購入した。4月からいくつもの店舗をまわり、たくさん試着させていただいた(試着したのは娘たちだ)。始動は早かったというのに、どうにもこうにも決めきれずにいた。

結局、同じシリーズの商品を色違いで注文した。今まで洋服はおそろいを着ることの多かった娘たちが、それぞれ違う色を選んだ。

「ほんとうに違う色でいいの? あとでお互いのことがうらや

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