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#エッセイ部門

たったひとり、いや、たった一言だけでよいのかもしれない

たったひとり、いや、たった一言だけでよいのかもしれない

いい人

が出てくる映画が苦手だ。

その理由は単純明快で、要するに

僕自身がちっともいい人ではないからだ。

だから、あの国民的アニメが映画化されて、

「◯◯を燃やせ!」

というあの有名なセリフが出てきたときも、劇場にいるほとんどの人は感動して泣いていたけれど、僕はまったく泣けなかった。

むしろ突然、自分の周りに現れたたくさんのいい人たちの姿に怖気付いてしまっていたかもしれない。

でも

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数年前、毎日怒鳴りあっていたころの私達について

数年前、毎日怒鳴りあっていたころの私達について

 数年前、私と夫は喧嘩が絶えず毎日のように怒鳴りあっていた時期があった。

 私のすべてを夫に理解してほしい。
 夫のすべてを理解したい。
 ずっとずっとそう思い続けていた。

 自分のすべてを与えながら、奪われ、夫のすべてを与えられながら、奪う、そんな生活をしていた。
 たくさん泣かせて、たくさん泣いた。
 加害者であり、被害者であった。

 夫は、私が今まで出会った人間のなかで、一番優しい人間

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自分だけの特別なもの

自分だけの特別なもの

数日前のこと
車で出かけている時に
隣を通り過ぎて斜め前に出た車のナンバーが
私の誕生日の数字だった。

例えば今日が誕生日だとしたら626というナンバー。

自分の誕生日の数字は、それだけが光って見えてるかのように
浮き上がって私の目に飛び込んでくる。

ゾロ目でもないし、私以外の人にとっては、ただの数字が並んでるだけの、何の意味もないナンバーだ。

家でもデジタルの時計が誕生日の数字になるのを

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樹が年輪を刻んで生きるように。

樹が年輪を刻んで生きるように。

世の中には「おじさん/おばさん構文」だとか
「カジュアルおばさん」だとかいう言葉たちが
のさばってるけれど、みんないずれそうなるのにな

という3行日記を書くつもりだった。
いつも通りその後の写真のキャプションに
この3行日記に書き加えたいことを
短い文章で書いて更新するつもりだった…

けれど短い文章に収まらなかった。笑

だから少しだけ、書きたいと思う。

誰もがおじさんおばさんになり、
おじ

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君も正しい。俺も正しい。

君も正しい。俺も正しい。

ある日の朝
朝ドラ『虎に翼』を観ていて
大きく頷いた。

食卓を挟んだ向かい側でも同時に頷くひとが。

その通り!
と。

俺が正しい!
いや、私が!
と、おそらくお互い心の中で叫びながらであろう小競り合いも時々ある我が家ですけども。笑

でも、
「君も正しい。俺も正しい。」
でいいんじゃないかと思うんです。

みんな、見てる立ち位置が違うのだから。
その人から見れば、それが正解で。
その正解を違

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「あなたと出逢えてよかった。」と言うのだと思う。

「あなたと出逢えてよかった。」と言うのだと思う。

「生きていてよかったなぁ。」と、思う瞬間があった。

先日。よく行くバーの20周年の記念で歌を歌わせてもらった。
実は、2年くらい前からお話を頂いていた。

普段は、バー営業をしているその店で
スピーカーからギターの音を鳴らし歌う不思議。

リハーサルを終えて
カウンターでビールをいただきながら
マスターがこの店をオープンするまでの
紆余曲折を、聞いていた。

あの時こんな失敗があったから
この道

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友人が私にくれた誕生日プレゼントは、唯一の「あの世へ持って行けるもの」だった。

友人が私にくれた誕生日プレゼントは、唯一の「あの世へ持って行けるもの」だった。

今日書くのは12月から1月末にかけての出来事。

1月末からずーっと書こうと思っていた。

けれど、
ただのお出かけ記事のようにはしたくなくて
じゃあどう書く?どんなふうに書く?
と、少しばかり迷っていたのです。

綺麗な場所へ行き、
美味しいものを沢山食べた1日ではあったし、
写真も沢山撮ったものの、
当日の様子に加え、行った場所食べたもの、
写真全部!盛りだくさん!だと、いつもの
ただのお出か

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散る散る、満ちる

散る散る、満ちる

日曜日、昆虫の標本作りのために、息子と一緒に千駄木に出かけた。

駅から目的地まで20分くらいあったから、久しぶり父と息子二人きりゆったり会話ができた。

どーゆー経緯か忘れちゃったけど、まず僕が平家が権力を握って、源氏がそれを滅ぼして鎌倉幕府を作る歴史の話をした。

きっと心のどこかで学校に満足に通えてない息子に対してそろそろ社会とか歴史とかに興味を持ってほしいというスケベ心があったんだと思う。

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料理から学べることがある

料理から学べることがある

俺は

料理はイマジネーション

だと思ってます

こういう料理を作りたいな、という
ある程度の結果を想定して
その後、プロセスを組み立てていきます

慣れた過程のものであればあるほど
効率が良く、手間も細部までゆき届くし

初めての食材や苦手な調理過程ならば
なかなか都合よくならないことになる

そんな得手と不得手の工程を
頭の中で組み立てて
仕上がりのイメージが
徐々に鮮明になってゆくのです

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たんぽぽの綿毛が飛ぶように

たんぽぽの綿毛が飛ぶように

 深夜、居間に一人でテレビを観ていると、祖母が入ってきた。

「親方は? ねぇ、親方は?」

 祖母の口から親方なんて聞いたことがなかった。思い当たる人もいない。何のことを言っているのかわからない。
 こんなとき、どうすればいいのだろうか。
 返答に窮する間に、祖母の注意は切り替わる。少しバランスの悪い歩き方で、暗い廊下を歩き、玄関の方へ向かっていった。
 
「親方はここにいないよ」

 慌てて祖

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言葉より大切なもの

言葉より大切なもの

息子と2人で釣りに行くのは、なんとほとんど3年ぶりだった。

でも、その間、一時はもう二度と行けないのではと思っていた時期もあったくらいだから、むしろ再開できただけでも嬉しかった。

ちなみに今回の釣りスポットとなる多摩川の下流の汽水のある場所の近くには大きなお寺があったから、まずは神頼みだよね、という話になって、そこでお参りをした。

いつも以上に時間をかけてお祈りする彼の横顔を永遠に見つめてい

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孤独って、ひとりぼっちのことじゃない。

孤独って、ひとりぼっちのことじゃない。

孤独を感じることってありますか。

私は今まで生きてきた中で
子供の頃からたくさんあったんですけど、
孤独=ひとりぼっち
じゃないんですよね。

孤独って、
ひとりでいるから感じるもの
というわけじゃなくて、
誰かといようと、大勢の中にいようと、
関係なく感じるものなんですよね。

自分の心が孤立している状態。

心の中に、
埋められない寂しさや苦しさがある状態。

実際、
天涯孤独なわけでも

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叔父への祈りに浮かぶもの

叔父への祈りに浮かぶもの

 小さい頃に一緒に暮らしていた叔父が倒れた。現在、近くの病院に入院している。
 下半身は不自由になり、もう歩くことはできない。認知機能の低下も著しく、まともな会話ができない状態になってしまった。
 近いうちに知り合いの勤めている病院に転院することが決まっている。
 回復が望めないとしても、どうか、穏やかに過ごせるよう祈るばかりである。

 いつか叔父は、山梨県にある瑞牆山に私を連れて行きたいと言っ

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何歳になっても新しい友人はできる。

何歳になっても新しい友人はできる。

先日この記事で書いた

会いたかった人に無事に会うことができ、
予想していた通りに、あっっっという間の、
それはもう、お昼から夜までの8時間以上が
え、もう今日という日が終わるの?
と思うくらいのスピードで、
楽しい楽しい1日が終わってしまいました。

大人になって歳を重ねてからも
こんなふうに新しい出会いや、
友人ができることがあるのだということ、
それを教えてくれた彼女に会えた喜びと
感謝の気

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