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記事の小説まとめ

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記事で書かれた小説をすべてまとめています。
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記事一覧

【掌編小説】 とある小説家志望の私小説

最初は、絵が好きだった。
フルカラーの漫画を描いてみて、大変だったから、小説を書いた。

こっちの方があってた。漢字のかきとりも好きだったし。

文字が好きだ。言葉が好きだ。

人を傷つけるのに、救うところも好きだ。

だけど、小説家になるつもりはなかった。

ある小説に出会った。

衝撃。

こんな小説を書きたいと思った。

でも、書き方がわからない。

だれも、教えてくれない。

とりあえず、

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【毎週ショートショートnote】 怪人制御冷や麦

「ひやむぎん?」
「当店の看板キャラクターです」

変なポスターだと思っていたが、看板キャラクターだったとは…。

「冷や麦でできたモンスターですわ。そうめんでできたヒーローのソウ・メンが、自分と似ているから、この世から消すために、うどん怪人をあやつって、攻撃をしかけるのですわ」
「くわしいね」
「わたくしが、つくりましたわ」
「…高嶺さん、ああいうの好きだね」
「大好きですわ!!」

わたしは、

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【毎週ショートショートnote】 会員制の粉雪

季節はずれのかき氷を食べに行きませんこと? と、高嶺さんに誘われ、ほいほいついっていった。

そして、わたしは高嶺さんと南極にいた。

「寒い!」
「南極ですもの」

完全防寒の衣服に身をつつんでいても、高嶺さんは品がある。

「二人とも、長旅、ごくろうさまです」

高嶺さんとわたしは、とある南極基地にいた。なんでも、宿泊施設のある南極基地なのだそうだ。

「世界のお金持ちが、こぞってやって来るの

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【毎週ショートショートnote】 逆光のみクジラ

「御神体が、すごいですのよ!」
「へえ…これ、なんの神様ですか?」
「わたくしの先祖ですわ!」
「まさかの!」

いや、高嶺さんなら、ありえる。
すごくお金持ちのご令嬢だし。

この神社は、高嶺さんの祖先がお世話になったって言ってたけど…。

そもそも、先祖が建てたのでは?

「この御神体のすごさは、これだけではなくってよ」

高嶺さんは、ごそごそと、コートのポケットから丸いボタンがついた四角い器

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【毎週ショートショートnote】 夜光おみくじ

年越しの歌番組をひとりで見ていたら、いきなり高嶺さんが家にきた。

「初詣に行きませんこと? 最近、助手席が壊れたから、新調したタクシーですのよ」

真夜中に走るタクシーは、混雑する車道のすき間をぬって、とある山奥の神社にたどりついた。

…どこ、ここ?

「この神社は高嶺グループが、昔からお世話になっていますのよ」
「へえ、いつからですか?」
「平安時代からだったかしら…」
「思ったより、すごい

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【毎週ショートショートnote】 プールの紅トーナメント

クリスマス特番前、控え室で小番が吠えた。

「水泳は寒いだろ!」
「まあまあ、落ちついて。あ、今の狩田っぽくない?」
「っぽいけど! リーダー、今やることじゃねえ!」
「だよねー」

急遽、僕こと猫屋敷と小番が、クリスマスの特番に出演が決まってしまった。

今年のクリスマスは、狩田といなちゃんのために、ネコクインテットは、ぜんいんお休みしていたのに。

テレビなら、断れない。だって、アルバムの宣伝

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【毎週ショートショートnote】 ルールを知らないオーナメント

「メリークリスマス! 狩田くん」
「テンション高いっすね?」
「ああ、うれしいことがあってね。いなは部屋の奥にいるから、クリスマスパーティーの準備を頼むよ」
「わかったっす」

ついに、俺といなちゃんが、二人きりになれる場をイヨさんがつくってくれた。

今日こそ告白する。

リビングに行くと、いなちゃんがポストカードを壁に貼っていた。

「いなちゃん…なんすか、それ?」
「オーナメント。クリスマス

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【毎週ショートショートnote】 愛にカニばさみ

「とあっ!」
「うわっ!」

僕の両足の前と後ろに、林檎ちゃんは横から、自分の両足をハサミみたいにはさんで、僕をうしろに倒した。

ぼすっ、と背中には、やわらかいクッションがあり、身体にひとつも傷はない。

「おもしろいな!」
「うん…。カニばさみされるとは、思わなかったよ」

僕らがいるのは、最近できたデートスポットだ。運動のあとに、お食事を…という、運動施設とカフェが合体した店だ。

店内に入

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【毎週ショートショートnote】 台にアニバーサリー

今日は林檎ちゃんとのデートだ。

いつもは、理香ちゃんもいるけど、今日ははじめての二人きり。緊張して、最近は、ほとんど眠れてない。

「よっ! 鎌犬」
「あ、りん…ご…ちゃんですか?」
「そうだよ」
「あの…いつもと、違いません?」
「なんで、敬語?」

林檎ちゃんは、長めのスカートに、もこもこしたトップス、髪の毛はふわふわしてて、いつものごついピアスは華奢な細工のお花になっている。

どこからど

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【毎週ショートショートnote】 肋骨貸す魔法

はー、はははあ。

いーい、天気だ。こりゃ。

散歩したいがぁ、今日は無理だろおなぁ。

「囚人48番、面会だ」

「久しぶりね『遺品芸術家』」

「べぇつに、無理して、そんなあ、ふうに呼ばなくてえ、いぃんだあよ?」

「無理してないわよ。それより、あんた、どうやって弟子を育ててるのかしら?」

「あの子はぁ、元気かぁい?」

「アンタに教えるわけないでしょ」

「あの子はぁ、ほんとぉに、いい子だ

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【毎週ショートショートnote】 白骨化スマホ

「あのスマホの謎が解けたんですか!」
「はい、今から説明します」

依頼人に内容を報告している探偵ボディビルは、普段とちょっと違う。

なんていうか、こう、きりっとしてる。

「あのスマホは、白いペンキの塗装されたスマホではありませんでした。…すべて人骨でつくられています」

依頼人は言葉を失った。

私も声が出ない。

そんなに怖いものだったなんて! 言ってよ!

「そして、この人骨は、あなたの

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【毎週ショートショートnote】 優先席の微世界先生

私は優先席です。
私は、生まれてこのかた、ずっと電車の席をしておるので、ほかの席から先生と呼ばれております。
というのも、席は、よく転生をするのです。
私のほかにも、コンサート会場だった席や、勉強机だった席がおります。
彼らが幸せの絶頂のときに、他の席に転生するようです。
ささやかな、この世界の電車の席に、新人が来ました。

「お嬢に座られてねえええええ!」
「落ち着いてください!」
「やだよおお

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【毎週ショートショートnote】 助手席の異世界転生

ハァイ! 俺は、高嶺グループのご息女にひいきにされているタクシーの助手席だぜ!

高嶺お嬢が、俺のタクシーに乗るとき、助手席はつかわないぜ、たいてい、うしろにいるな!

まあ、お嬢は俺に座らないよな…。そうやって、あきらめてたぜ!

「今日は、助手席の気分なの。いいかしら?」

ええええ! 俺に座ってくれるの!

夢みたいだ…。

俺、死んでもいいかも…。

幸せすぎて、意識がふっとんで、気がつい

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