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深淵を覗き込むかのようなエッセイ

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人間の心の奥を覗くという稀有な体験を提供。
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記事一覧

【エッセイ】行儀なんて知らなければ、俺だってクチャクチャ言わせながら飯が食えた

小さい頃、家族で回転寿司へ行った。
目の前を踊るように回る寿司たちは、さながら「パルプフィクション」のトラボルタとユマサーマンに見えた。
あれは俺にとってツイストだった。
瞬時に心躍った俺は、来るもの拒まずの精神で寿司をどんどん回収し、バクバク食べた。
するとすかさず、母親からの指導が入る。
箸の持ち方が汚い、逆の手をお皿に添えなさい、落ち着いて食べなさい——。
幸せな食事に水を注されて、俺の食欲

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【エッセイ】死にたいんじゃなくて、死んでもいいと開き直って生きてみたいだけ

大学受験を翌日に控えた夜。
俺は勉強するでもなく、公園のベンチに座っていた。
いろいろと理由はあるけど、要するに全てが面倒臭かった。
勉強したくなくて、何かしたいとだけは思っていて、かと言って明確にやりたいこともなくて、結局それって勉強したくないだけじゃね?とか思って、でもやっぱり何かしたくて、何かは分からなくて。
嫌でもそんなことを考え続けてしまうことが面倒臭かった。
死にたいけど、死ぬことすら

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【エッセイ】俺、倫理マンじゃん

TikTokでたまに、外国の調子こいた奴が街中でシャレにならないドッキリを仕掛けるみたいな動画が出てくる。
最後まで観る前に、コメント欄を覗いている自分がいる。
炎上気味だと「やっぱな」と思うし、賞賛されていると「これセーフなんだ」と思う。
そこでふと気づく。
俺、倫理マンじゃん。
自分がどう思うかより、これが世間的にどういう評価が下されてるかの方が気になってるじゃん。
ただの倫理マンじゃん。

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【エッセイ】時間とは、秒針と同じリズムでハイヒールを鳴らし歩くイイ女

なんでか分からないけど、いつも時間が足りない。
別に朝から晩まで働いているわけでもないのに、昼まで寝てるわけでもないのに(たまにあるが)、なぜか時間がない。
忙しくないのに忙しい。
最近、そんな自分に業を煮やし、1日の行動を詳細に記す日記を始めた。
1日の始めに予定を書き、答え合わせのように実際のスケジュールを書く。
そこまでやっているのに、平気で3日ぐらいスルスルと時間が経っていることに気付く。

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【エッセイ】死んでもいいとか言っといて、頭皮がちょっとピクピクするだけで怖くて眠れない

昨日、パソコンに向かっていると、左こめかみの上あたりがピクピクと痙攣するのを感じた。
ピタッ、と、水を打ったようにキーボードを打つ手が止まる。
全神経が、左こめかみの上あたりに集中する。
確かに皮膚がピクピクしてはいるが、特別痛いわけではない。

——これ、死なんよな?

めちゃイケだったら、右下に「死?」という面白テロップが出てるな。
とか考えるぐらいの余裕はある。
一向に激痛が襲ってくる気配は

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【エッセイ】今日は筆の調子が良いのか悪いのか、という中毒性の高いギャンブル

悲しいぐらい「調子」に左右されている。
8時間パソコンの前で唸っても何も出ないこともあれば、ベロンベロンで帰ってきて一瞬で名文を紡ぎ出すこともある。
そこにどんなジンクスがあるのか、まるで分からない。
たっぷり寝た日よりも一睡もしてない方が上手くいく時もあるし、逆も然り。
つまり自分が今日調子が良いかどうかは、パソコンの前に座ってみないと分からない。
そもそもパソコンの前に座らないなんてのは論外。

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【エッセイ】右へ倣えの教育をしてくれてるから、逆張りするだけで個性になるのに

脚本家は孤独だ。
職業柄、横の繋がりがほとんどない。
ひとり大好き人間の自分としては最高だけど、ひとり大好き人間でも孤独を感じるのだから、よっぽど孤独な職業なんだと思う。
だから、たまに脚本家と出会うとすごく嬉しい。
孤独と同等か、それ以上に感じる弊害は、個性が出しづらいこと。
たとえば脚本家が30人集まったクラスがあるとして、その中で個性を出すのは簡単だ。
誰もやっていないこと、すなわち逆張りを

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【エッセイ】人はなぜ、物語に惹かれるのか

こないだドトールで作業している時、iQOSにタバコ(ブレード)を入れた瞬間、ポキッとふたつに折れた。
これはiQOSユーザーにとって「死」を意味する。

つまり、この僅かにはみ出しているペーパーの部分を爪でつまみながら、ゆっくり繊細に引き上げないといけない。
少しでも力の入れ方を間違えれば、ペーパーが破れてつまむ場所を失ったり、余った指でさらに奥へと押し込んでしまったりする。
ちなみに、これを取り

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【エッセイ】ラジオ好きとの会話が盛り上がる確率は、地中でモグラ同士が出会う確率よりも低い

自分が深夜ラジオを聴き始めた頃、まだ今ほど市民権を得ておらず、だいぶニッチな趣味だった。
隠れキリシタン的な、バレないようにこっそり聴くものだと思っていたし、実際そうだった。
初めて人に言う時は「俺、シコったことあるんだよね」と打ち明けた時ぐらい緊張した。
相手によっては「エロじゃん!」となり、クラス全員にエロ認定されかねない。
なので、深夜ラジオ好きと出会った時は「俺もシコったことあるんだよねw

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【エッセイ】数学が0点だったくせに数字をモチベーションにすること自体間違っている

高校1年生最初の期末テスト、数学Ⅰで0点を取った。

名前を書き忘れたとかじゃなく、大真面目に50分間答案用紙と向き合った結果の、0点。

その後のテストでも赤点の半分以下しか取れず、3月の終業式前日、数学の先生に呼び出された。

「これ、明日までにやって来なかったら留年だから」

渡されたのは、割り算の筆算のドリルだった。

翌日それを提出すると、すでに印刷されていた通信簿の数学の評定「1」を、

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【エッセイ】嫌いなところ10個あげるのは楽勝なのに、好きな理由はほとんど見つからない

お世話になっている大先輩に「脚本ってどうやって勉強してましたか?」と聞いたら、
「映画を観たらまず面白かったかつまらなかったかを決めて、その理由を10個書く」と教えてもらった。
今までも観た感想をメモ書き程度にまとめてはいたものの、印象の薄い映画はそれこそ本当にメモ書き程度で終わってしまっていた。
それを必ず「面白い」か「つまらない」に色分けし、その理由を10個必ず探し出す。
そうすると、自分が書

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【エッセイ】もし俺に「肛門書道」の才能があったとしても、たぶん一生気付かない

「自分には何の才能もない」と嘆く人へ。
そんなことはない。
誰にだって、ひとつぐらい才能はある。
ただ、それが「肛門書道」である可能性も、ないとは言えない。

肛門書道とは、ケツに筆を突っ込んで文字を書く書道のこと。
無論、俺が適当に考えた。
もし自分が、手よりもケツの方が字を上手く書けるとしても、それに気付くことはほぼない。
実際にやってみたとして、やっぱり手の方が上手かった時の虚無感を想像する

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【エッセイ】KREVAですら上手くいかないんだから、俺が上手くいかなくて当然

浅草の鉄板焼き屋さんでご飯を食べた帰り、イヤホンを忘れてきたことに気が付いた。

しかもまだ買って2日のやつ。

翌日、出先からわざわざ浅草駅で下車して、昨日の記憶をたどりながら、その店を目指す。

ガッツリ猛暑日だった。

しかもやたら駅から遠くて、軽く20分は歩かされた。

汗だくになって店に着くと、定休日だった。

ベタ過ぎて笑えた。

その後すぐ、笑えた自分に驚いた。

2年ぐらい前、KR

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【エッセイ】過去に書いた自分のエッセイに全く共感できない

久しぶりに、過去のエッセイを読み返した。

全くもって共感できない。

「共感を得たい!」と思って書いたものに、自分が共感できていない。

それだけ成長した、ということか。

まず、余計な注釈が多い。

結論めいたことを言ってるくせに、(もちろんこういう場合もあるので一概には言えませんが)みたいなことが追記してある。

いや「効果には個人差があります」か。

腰が引けすぎている。

マイキーが居た

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