【エッセイ】KREVAですら上手くいかないんだから、俺が上手くいかなくて当然
浅草の鉄板焼き屋さんでご飯を食べた帰り、イヤホンを忘れてきたことに気が付いた。
しかもまだ買って2日のやつ。
翌日、出先からわざわざ浅草駅で下車して、昨日の記憶をたどりながら、その店を目指す。
ガッツリ猛暑日だった。
しかもやたら駅から遠くて、軽く20分は歩かされた。
汗だくになって店に着くと、定休日だった。
ベタ過ぎて笑えた。
その後すぐ、笑えた自分に驚いた。
2年ぐらい前、KREVAのインスタライブを見ていた。
コロナでライブが中止になり、「人生って本当に上手くいかないことばっかりだよねぇ」と、一切韻を踏まずに嘆いていた。
KREVAでもそう思うんだから、俺の人生なんて上手くいかなくて当然だと思った。
そう言いつつも、やっぱり上手くいかないことには腹が立つ。
俺が不幸な目に遭ってるのを見て笑ってる神様の視線を感じて、余計に腹が立つ。
別に笑わせようと思ってやってないから(早口)。
その直後、自分が脚本をした舞台「僕らは恋をしなければならない」が、コロナで中止になった。
しかも本番2日前、小屋入りしたその日に。
「こんなのアリかよ……」と思った。
立ち止まらざるを得ないという、苦痛。
結果的に、1ヶ月半後には延期公演ができたんだけど。
今年5月に脚本演出をした舞台「せっかく死んだのに」では、あまり多くを語りたくないアクシデントに見舞われた。
早い話、本来笑えるはずのくだりが、あまりにセンシティブな話題のせいで笑えないものになってしまった。
「こんなのアリかよ……」と思った。
今さら立ち止まれないという、苦痛。
結果的に、役者の力で素晴らしい作品になったんだけど。
その後に脚本をした舞台「今日は楽しいお葬式」では、自分史上最大に「書けない」スランプに陥った。
とにかく時間がなかった。
映画版のドラえもんが、接敵した時に慌てて四次元ポケットを引っかき回すみたいに、あの手この手を繰り出してはみるけれど、全然上手くいかない。
「こんなのアリかよ……」と思った。
立ち止まる時間すらないという、苦痛。
結果的に、いろんな人の励ましと支えによって書き上げられたんだけど。
そんなことを繰り返してるうち、上手くいかないことの方が当たり前に思えてきた。
多少の「上手くいかない」では飽き足らないほどに。
だから「鉄板焼き屋てっちゃん」が定休日でも、ベタ過ぎて笑えた。
そんなもんかい!もっと来いよ!てな具合に。
ちょっと強くなったかもしれん。
さっき、わざわざウチの前だけに蝉が止まっていて、近づくと案の定バッチバチに暴れ出した。
一切笑えなかった。
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