- 運営しているクリエイター
記事一覧
“The Swimmer” John Cheever
カーヴァー、ブローティガン、アップダイク•・・。少し昔のアメリカの小説家が、全般的に好きである。
今回はそんな私のお気に入りのアメリカ人作家達の一人、ジョン・チーヴァーの、素晴らしい短編小説を一つ紹介したい。
『泳ぐ人』という題名で翻訳もあり、映画化もされている作品だ。
*****
真夏のある日曜日。昼過ぎの高級住宅街。
ネッドは友人宅のプールサイドでくつろいでいる。
もう若くはないもののまだ
『メグレと若い女の死』 ジョルジュ・シムノン
ルコント監督による映画化に合わせてだろうか、出版された新訳版で、初めてのシムノンを読んでみた。
*****
舞台はパリ。
午前3時過ぎ、仕事を終えたメグレ警視が帰ろうとしていると、女性の死体発見の一報が入る。
気になり現場の公園に駆けつけるメグレ。
雨に濡れた歩道に頬をつけて横たわっているのは、まだ二十歳にもならないような若い娘だった。持ち物はなく、寒い季節だというのに肩を出したイブニングドレ
『望楼館追想』 エドワード・ケアリー
円屋根のある古い大きな建物「望楼館」は、周囲が都会化する中で古色蒼然、陸の孤島だ。
「ぼく」ことフランシス・オームは、この望楼館に、両親と一緒に暮らしている。
望楼館の住人はフランシスを含めて7人。風変わりな彼らは、やがて自分が最後の住人になってしまうことを恐れながら、ひっそりと暮らしている。
フランシスの仕事は、町の中央にある台座の上に全身白ずくめで立ち、彫像のパントマイムをすること。
白ず
“The Cement Garden” Ian McEwan
兄弟たちの一夏の物語、ではあるのだが、そんな言葉で表すにはあまりに生臭くえぐみが強い。にもかかわらず、えもいわれぬ引力のある小説だ。
15歳の少年ジャックの、一人称による語り。
ジャックには歳の近い姉と妹、少し歳の離れた弟がいる。
前の年のある日、家にセメント15袋が配達されて来た。注文したのは父。
何に使うのか聞くジャックへの父の答えは「庭にだよ」。
庭は、父の王国だった。
花壇や踊る牧神