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静馬
2020年12月30日 09:54
ある朝 空から音がしたトライアングルを鳴らしたような高く清らかな銀色の音なにかに呼ばれた気がしてクリアな冬の青空をみあげた空がわたしを呼んでいる風がわたしを呼んでいるそれは約束された朝だったこんなところにあったんだね探していた白い扉は噴水のまわりに吹くような澄んだ空気が通り過ぎていくなにかを忘れていると思ってたとても大切なことなのに思い出せないいろいろなこと
2020年12月28日 11:59
今年の八月頃、韓国映画「ビューティー・インサイド」を観た。毎日目が覚めるたびに性別も年齢も人種も全く違う身体に変わってしまう主人公のウジンと、彼が愛した女性イスのラブストーリー。ウジン役は123人の役者が演じたらしいけど、どんな姿であってもウジンの目の奥に浮かぶ表情はどことなく似ていた気がする。もう幸せはとっくの昔に諦めたというような寂しげな瞳が印象に残る作品だった。この映画を観ている間、銀色
2020年12月26日 10:42
霧雨の降りかかる静かな森の中で物言わぬ大きな木にもたれかかるように肩を寄せあって目を閉じていた八月の夜胸元から古い木の香りがしたホワイトムスクのような濡れた樹木のような 重く深い香り夜の湿気で肌が濡れるよう帰れば とわたしが呟くと帰れないよとあなたは言ったこんなにちがう生き方をしてきたのにわかり合おうとする人、人、人あの夜 わたしの夏は死んだあなたの可愛いまつげが
2020年12月22日 09:30
過ぎた日々に涙を落とさないできみはもうそこにはいないから眠るきみの頬にささやくよ目を開けてごらん もうすぐ夜明けだと窓の向こう 地平線からきみを眠らせた青い闇が波のように引いていくよと長い眠りだったさ果てしない時のなか小鳥の巣のようなこの部屋でぼくらなにも知らずにいたけどぼくはそれを悲しまない涙はでるけど悲しんでいるわけじゃないこの涙がどこから来るのかわかった
2020年12月24日 10:39
深夜0時半車で山道を登っていく深い闇の向こう銀色の雪が吹き荒びフロントガラスから見える景色をにじませる闇の奥へ向かって引き伸ばされていくガードレールそれは白いドレスを着た幽霊のようにずっととなりに張りついてどこまでもどこまでもついてくるくたびれた車はけたたましく音をたてながら身体を引きずるようにして走り続けた標高五六〇メートルの広場エンジンを切るすべての表示
2020年12月21日 14:17
なんだか一週間むだに疲れてしまったような気がするけど、今はヨガマットの上に寝転んで太陽の光を浴びながらAir Supplyを聴いている。今日は何もしない日にするんだ。やっと休日。やりたくないことは念入りに無視する。窓に貼ったかけら柄のシールが反射して、手のひらに虹色の光を落としているのをぼんやりと見守る。天気予報は曇りでも時々こうして雲の隙間から射し込んだ太陽の光がわたしの手元まで届く。暖房と
2020年12月23日 10:13
夢の中のあの人はいつも怒っている。それは私があの人の夢を見ることに負い目を感じているからなのか、あの人を好きでいることに罪悪感を抱いているからなのか、それとも本当に怒っているからなのか、よくわからないけれど、とにかく夢の中のあの人はいつも怒っていて、私は目が覚めるたびに誰もいないさびれた浜辺に打ち上げられたような気分になる。不思議な時空の空白に放り出される。夢の中で私はあの人とゆるやかな長
2020年12月17日 12:42
凍えた黒い瞳を見開いてあなたは細い椅子に座っていた痩せた青白い頬に悲しく光がさす壁に塗られた深い緑色の闇冷たく閉ざされた窓あなたの膝には白い天使がもたれていた薔薇色の頬をあなたの膝にのせて顔を曇らせながら天使はなにも言わずに寄り添っていたあんなに無邪気な天使がはしゃぐことも遊ぶことも忘れ笑顔も捨ててあなたと共にいるあなたと同じ痛みを感じるためにその部屋には
2020年12月20日 13:15
あなたを愛したあとでわたしはどこを旅していけばいい?むかし読んだ本に書いてあった始まる前に神はすべての経験をやり終えたとそれはつまり神様は永遠が始まる前に永遠のすべてを体験したということそれなのになぜ神様は時計を見るのだろう時間を止めてくださいわたしやあの人にとって永遠とは人間にとって永遠とは時間が無限にあることとはちがうんです時間を止めてください抱き合っ
2020年12月7日 09:30
冬の朝は水のにおいがする海みたいなシアンブルーの空光る雲にはグレイッシュブルーの翳り冷たく新しい空気がわたしに息をするようにと風で語りかけてくる熱いコーヒーとホワイトチョコレートをひとかけら息ができるこんなにも深くこういう気持ちを忘れてたこういう気持ちが大事なんだということをいの間にか忘れてたわたしはその朝長いあいだ閉め忘れていた扉をそっと手のひらで押
2020年12月2日 23:20
雑草の茂った空き地にひとつだけ残された椅子を月明かりが照らしていた痛みを和らげてくれるようなやわらかな白い光は人々を惑わし暗示にかけるような冷たく静かな光はあなたのようあなたのよう広い夜空を見上げた先に大きな月があったとき目が合ってしまったそんな気がして怖くなるそこに美しい女がいるようなあなたがいるようなそんな気がして怖くなるその光で傷を癒し 隠してく