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ぼくゼロ監督と母の往復書簡

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『ぼくが性別「ゼロ」に戻るとき 〜空と木の実の9年間〜』監督の常井美幸です。これから、主人公のお母様の小林美由起さんと、9年間のできごとを振り返っていくエッセーを始めます。同じで…
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#性同一性障害

あなたは本当に変わらなくちゃダメなの?

あなたは本当に変わらなくちゃダメなの?

監督「とこちょ。」と主人公の母「くみちょ。」が9年間の撮影を振り返って、お互いの視点から当時のことを語る監督と母の往復書簡。
とこちょ。が、現在、ご多忙中なので、3週続けてくみちょ。が担当します。
脱線した内容が続きますが、お付き合いくださいませ。

映画制作からはちょっと外れますが・・・
私、「常々思っているんですが・・・・・・」
(このセリフ知ってる?あの微妙な終わり方!)

常々、思っている

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ぼくゼロの母は活動家じゃないんですよ

ぼくゼロの母は活動家じゃないんですよ

監督と母の往復書簡。
ぼくゼロの監督「とこちょ。」と主人公の母「くみちょ。」が9年間の撮影を振り返って、お互いの視点から当時のことを語ります。

先週に引き続き、今回もくみちょ。回でお届けします。
ちなみに「くみちょ。」の「。」はゼロです(笑)

誤解されている人も多いので、今日は活動家ではありませんよのお話し。
空雅が顔出し、名前出しで取材に応じ、テレビ、雑誌、新聞に取り上げられる時、母として私

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母から監督へ。その14(我が子の胸オペ)

ここ数回は、とこちょ。とくみちょ。の生い立ちや美由起と美由紀とみゆきと美幸についてと続き、先週はとこちょ。からくみちょ。への質問にお答えしました。
さて、今週はまたぼくゼロ完成までのあれこれに戻ります。

前回は、自宅ロケのお話しをしました。
主人公の胸オペ前日の自宅ロケで、映画のタイトルにもなった「ゼロ」という言葉が主人公の口から出たんです。
『自分は今、マイナスにいるからプラスに行くにはまずゼ

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イギリスに導かれた人生 My Dear UK

イギリスに導かれた人生 My Dear UK

前回、辛かった中学校時代を支えてくれたのは、イギリスの音楽だったことを書きました。私が高校に入った80年代初頭のミュージックシーンは「第2次ブリティッシュ・インベイジョン」と呼ばれていて、イギリス勢がアメリカのヒットチャートの上位を独占していた時代。私はイギリスのビジュアル系ポップバンドの音楽を夢中で聴きまくっていました。特にミュージックビデオが大好きで、深夜に放送されていた洋楽ヒットチャートの番

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監督から母へ その9 「自分をマイノリティと思って生きること」

前回と前々回、くみちょ。がご自身の「生い立ち」について書いてくださいました。数奇とも壮絶とも表現できるかもしれないその生き様を、私は一気に読むことができなくて、ときどき文章から目を離して、自分の感情をリセットしながら読み進めました。

くみちょ。がなぜ性別違和や発達障害のあるお子さんを、すんなりと受け入れ、葛藤なく笑って生きてこれたのか、その秘訣が少しずつ明らかになってきたように思います。そしてこ

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母から監督へ その8「くみちょ。の生い立ち」

くみちょ。(ぼくゼロ主人公の母)は、なぜ子供のカミングアウトを受け入れられたのか?
くみちょ。は複雑な環境で育ったことを、前回お話ししました。
具体的な生い立ちを少しずつ、お話しいたします。

笑っていたかと思うと、突然、鬼瓦みたいに険しい顔つきになり怒鳴りつける父。
私はいつも、父の顔色を見ていました。

空腹で泣いている私を放置していたネグレクトの実母。
やたら厳しく当たる2番目の継母。
オー

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監督から母へその7~「いきぽんの言い訳」

今年(2021年)の5月末、私は自宅で途方に暮れていました。

「キッチンの掃除しなくちゃ」「庭の花を植え替えなきゃ」「玄関のドアを磨かなきゃ」どこから手をつけていいかわからないほど、やることは山積。

テレビ局でディレクターとして20年間働いてきて、たくさんの方を取材してきました。そのうち取材相手の自宅にもカメラを持って乗り込んだことも多々あります。でもまさか、自分が取材される側になるとは、さら

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母から監督へ。 その6(後編)

母から監督へ。 その6(後編)

禁断の自宅ロケの続きです・・・
当時のブログと記憶を頼りに綴ります。

自宅ロケ、それは、それは、掃除が大変でした。
普段、お客様が来ない我が家は散らかってる。
来客がある時、学校の家庭訪問の時だけ片付く。
これって家庭の事情「あるある」だと思うよw
知り合いが来るための掃除とは違い、
全国放送されるということで、かなり念入りに、
お掃除をしました。(見栄っ張り・・カッコつけ)

実は、すごい昔の

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母から監督へ その6(前編)

母から監督へ その6(前編)

禁断の自宅ロケ!

テレビカメラの前で、話しをするという事は、
一生の中で、滅多にある事ではないと思いますが、
その滅多にない経験を、自宅ロケという形で
経験させていただきました。

監督の投稿にも書いてあった通り、
NHKワールドで2回、空雅を取り上げていただき、
国内番組で紹介してもらう事になりました。

なんと、NHK総合「おはよう日本」です。
NHKワールドでは5分弱でしたが、おはよう日本

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監督から母へその6

「禁断の自宅ロケ」

2010年のこと。「性別に違和を覚える子供たちが、小中学校で辛い思いをしている」その現状と課題を伝えるニュースリポートを作りたいと、NHKワールドに提案をしたとき、耳を傾けてくれるプロデューサーは少なく、とても苦労しました。

それから2年後の提案は、打って変わってとんとん拍子に進みました。2012年9月、まずNHKワールドにて、ニュースリポートを放送することができました。さ

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