監督から母へその7~「いきぽんの言い訳」

今年(2021年)の5月末、私は自宅で途方に暮れていました。

「キッチンの掃除しなくちゃ」「庭の花を植え替えなきゃ」「玄関のドアを磨かなきゃ」どこから手をつけていいかわからないほど、やることは山積。

テレビ局でディレクターとして20年間働いてきて、たくさんの方を取材してきました。そのうち取材相手の自宅にもカメラを持って乗り込んだことも多々あります。でもまさか、自分が取材される側になるとは、さらに自宅ロケをされる側になるとは!そしてそれがこんなに大変だとは!!!

くみちょ。(主人公の母)の前回の手記を読んで、爆笑しながらも「ごめんね〜」と謝る自分がいました。これまで自宅に乗り込んで撮影させていただいた方々、改めてふかーくお詫びを申し上げます。

一番自責の念にかられたのが、くみちょ。の手記の「いきなりぽんぽん質問されて」の部分!

確かにいきなりぽんぽんだったかも。世間話から始めろよ!言い回しにもっと気をつかえよ!と思えども、取材のときって、限りある時間のなかで、できるだけ多くの答えをいただかなきゃならないし、私も焦ってハイテンションになっているから、どうしても「いきぽん」(いきなりぽんぽん)になっちゃうんだよね…。

この「いきぽん」は、映画の中でも本領発揮されていて、各方面からおしかりをいただきます(この釈明会見は改めてじっくりと…)。

でもくみちょ。も言ってくれているように、取材のあとは、見たこともないような整理整頓された我が家が目の前に現れて、しばらくは優雅な気分になったことを付け加えておきます。ときどき取材はいいもんだ。

さてさて。くみちょ。にしっかりとインタビューしたのは、この日が最初でしたが、初対面の時から「このお母さん只者ではないな」と思っていました。だって、自分の子どもに「性別違和があるんじゃないかな」と気づいていても、子どもが自分で気づいてそれを言い出すまで2年間待つって、なかなかできなくないですか?その2年の間に、専門書を読んだり、相談窓口を探したり、病院のリストを作ったり、子どもが言い出した時にすぐに対応できるように準備するって、なかなかできなくないですか?

映画を上映し始めてから、たくさんいただく質問の1つに、「なぜお母さんはそんなに簡単に子どもの性別違和を受け入れられたのか?」です。その秘密は、くみちょ。の生い立ちにありました。

次回からは、くみちょ。の生い立ちのストーリーに入ります。

PS。ちなみに、私が自宅ロケをしていただいたのは、宝島社の「大人のおしゃれ手帖 2021年10月号」です!




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