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画家・ペーの日記
2024年5月8日 17:36
物語とは事実に基づいたメタファーである。ーーーーーある村に、二人の小さな兄弟がいた。 とても貧しい暮らしゆえに、兄は街に出稼ぎに行き、妹は家に残った。・・・・ <妹の物語> 彼女は、一人で家を切り盛りしなければならなかった。 両親は農作業で家を空けることが多かったので、朝、ヤギに餌を与えることから始まり、晩御飯の後片付けまですると、夜も更け、クタクタになって寝床に着くのであった。 そんな日々
2023年10月10日 17:56
80歳になろうかという老婆が秋に差し掛かる真夜中の歩道にただ独り立ちすくむ肋骨や鎖骨は浮き出しもはや水も飲めず低く唸りながらそれでも前を向いて一歩踏み出そうとしている背後の気配も感じず耳も目も見えずそれでも間際に迫る闇に向かって歩き出すその姿がかくも悲しく美しいのは残された私たちの罪を背負って全うする最後の輝きだからか一歩また一歩過去も未来も闇に消えてた
2023年4月11日 23:48
私はいつも誰かの心を想っている散歩すればあの人の表情を思い出して笑ってしまいお風呂にはいっていたらあの人の言葉を思い出して悲しくなるご飯を食べていればあの人のことを心配し珈琲を飲めばあの子のことを愛おしく思う私の心はどこへやら頭を空っぽにして誰もいない部屋で私は一人になってただぼんやりと 外を見ている木々の木漏れ日愛犬の寝息光のかがやき風は揺れ動きふ
2023年3月19日 00:35
「一週間」過去と未来が通り過ぎていた。それは誰もいないホームで目の前を圧倒的に通り過ぎる長い車両の特急列車。灰色の光の帯。轟音。歪んだ、時間という概念。まだ、続く。どこまでも走り過ぎる列車。影を追うことさえ出来ない。1日経ち、2日経ち、まだまだ列車は走っている。3日目。目が慣れてきたのか窓の輪郭がなんとなく見えてくる4日目。人影が見える。5日目。乗
2023年3月14日 10:37
遥か1万m上空から見えるのは漆黒に染まる故郷の大地と汚れなき群青色の空 そしてそれらを遮る真っ直ぐな夕焼けの炎思い起こせば実に長い間いつも二つの色が心の内に在って決して交わることがなかった恩讐の彼方に二十一年の歳月をかけて洞穴を貫通させた市九郎と実之助の一振の槌の力は目の前に在る夕焼けの炎を想わせるそれは祈りそれは懺悔それは数奇な親子の縁ほら
2022年12月30日 21:38
作者のオーリア・マウンテン・ドリーマーは、アメリカ先住民の文化に詳しいカナダ人女性だそうです。20年前の詩が多くの心を揺さぶり続けています。ーーーあなたの職業が何であるかは、私には興味がありません。私が知りたいのは――、あなたがどんなことを心から望んでいて、その願いが叶うことを夢見ているかどうかです。あなたの年齢がいくつなのか、私には興味がありません。私が知りたいのは――、あなたが愛
2022年10月12日 01:00
私の息は息子の息私の息は妻の息 私の息は愛犬の息私の息は妹の息私の息は妹の子の息私の息は父の生き私の息は母の息私の息は祖先の息私の息は子孫の息 私の息は友の息私の息は知人の息私の息は彼の息 私の息は彼女の息私の息は師の息私の息は弟子の息 私の息はまだ見ぬ存在の息息の次は手を手の次は眼差しを眼差しの次は足先を足先の次は心臓の鼓動をそうやって一つ一つ合わせ
2022年11月16日 21:11
心が還る場所はありますか。わたしにはありません。どこに行ってもありません。だから、わたしの心の中に求めるしかないのです。わたしの癒される場所。教え子が描く世界。子供の笑顔。季節の気配。すこし、ほっとして。また、あてもなく歩いて。どうせ還るところがないのだからと、公園でテントを張って。真夜中に一人、ランプシェードの炎を見つめながら、わたしの心を探しているので
2022年9月27日 10:27
一羽のカラスが走る怪物に飛び込んだたくさんの怒りを道連れにして哀れなカラス甘美なささやきに取り込まれ旅立てど もはや 道はなく
2022年7月3日 08:40
大昔、生き物たちはそれぞれに自分の気に入らない色を持っていました。ある時、白い鳥がそれらの色を1つづつ引き受けましょうと名乗り出ました。木々は、朽ちゆく茶色をわたしました。空は、どんよりとした灰色雨は、不透明な青ゾウは、病に侵された皮膚の緑キリンは、抜け落ちた毛の黄色魚は、剥がれた鱗の銀・・そのほかにも、あらゆる色を引き受けたその鳥は、真っ黒な姿になっていました。
2022年7月15日 09:56
骨そこには動物たちがいたただし、全て骨だった生前の躍動感そのままに空洞の眼差しは虚空の闇を睨んでいるあるものは脅威から飛び立とうとしているあるものは安寧な世界で食しようとしているそれら生き物としての成り立ちを支えている圧倒的な神の所業美しきフォルム進化を重ね多様性を生み生き物はその宿命を全うするべき役目を負ったそこに心を見出そうとするのは人間がもっ
2022年8月9日 12:17
嵐は過ぎ去った。後には大きな爪痕が残った。そこに二人の小さな兄妹が佇んでいた。 嵐は、兄の大切にしていた名誉を奪い、妹の大切にしていた聖書を燃やした。 優しかったおじいさんは、戦地に赴いて、仕立て屋の友人に銃を向けた。 おばあさんは、天に召される前に、虚空に向かって、そっと不義を告白した。 猫は、誰かのそばにいることを諦めて、大きな伸びをした後、屋根から飛び去った。 兄妹
2022年8月17日 11:00
かつて、母の車椅子を押しながら見た夕日。もう残された時間はわずかだった。目の前には鮮やかな真紅の光があった。その光は僕と母を照らしていた。僕は、同じく支え合う群像を見た。それぞれに夕日に向かって歩き続ける。それぞれの人生。 「人間がこんなに哀しいのに 主よ 海があまりに碧いのです」遠藤周作は、沈黙の碑にこう記した。1人で歩く。2人で歩く。3人で歩く。1匹と歩く。2匹と歩く。3
2022年3月29日 14:04
アトリエで本を読んでいて、ふと机に目をやると、携帯の黒い画面に、庭の柿の木が反射して映り込んでいた。影の柿の木には、若い芽の息吹まで映っていた。なんと美しいんだろう!と感動し、しばらく眺めていた。携帯の端末にこれ以上の役割があるのだろうか。美しさを現実以上に切り取る、黒き鏡。全ての情報や、あらゆる人と繋がれる端末。しかし、実際、目の前にある柿の木の、もっと奥深い美しさに気づかせてくれる