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目の前の道
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80歳になろうかという老婆が
秋に差し掛かる真夜中の歩道に
ただ独り立ちすくむ
肋骨や鎖骨は浮き出し
もはや水も飲めず
低く唸りながら
それでも前を向いて
一歩踏み出そうとしている
背後の気配も感じず
耳も目も見えず
それでも
間際に迫る闇に向かって
歩き出すその姿が
かくも悲しく美しいのは
残された私たちの
罪を背負って全うする
最後の輝きだからか
一歩
また一歩
過去も未来も闇に消えて
ただその足跡だけが
はっきりと残される
私は泣きながら
ありがとう
ありがとうと叫び続けるが
当然老婆には届かない
ただ2人の前に
道があるだけ
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