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短歌集

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亜希が詠んだ短歌を集めてみました。 ぜひ作品に触れてほしい。
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【短歌】少しずつの秋

【短歌】少しずつの秋

少しずつ短くなった蜂蜜を夜に溶かしておやすみをいう

すこしずつみじかくなったはちみつをよるにとかしておやすみをいう

秋がお散歩しはじめてクーラーが少し寒く感じるようになりましたね。

蜂蜜はお日さまのことなのですが、日が短くなってどことなく真夏の陽射しというより、蜂蜜のようなトロリとした甘さが溶けて夜になっていく。

夏は中々に蒸し暑く寝苦しかったのにいつのまにか眠ってしまえる夜がきて心地よい

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【短歌】目玉焼き

【短歌】目玉焼き

サニーサイドの黄身だけにしょう油をたらし夏をはむ朝
サニーサイドのきみだけにしょうゆをたらしなつをはむあさ

むかしカセットテープにお気に入り曲をいれた。テープにはA面B面があった。黄身ときみ(君)食むとハム(加工肉)この歌もそんなかんじに遊んでみる。

サニーサイドアップという言葉が好き。サニーサイドアップは目玉焼きの焼き加減で黄身が半熟なものを言うらしい。

サニーサイドというだけで、爽やかな

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【短歌】黙とう

【短歌】黙とう

黙とうの私の足を探り当て犬まるまりて眠りはじめる

もくとうのわたしのあしをさぐりあていぬまるまりてねむりはじめる

終戦の日に祈りを捧げる。

毎年考える。
非力な私に何ができるだろうか、よりよく生きるにはどうしたらいいだろうと。

過去、行きたくない戦争へいき、呑み込まれ、ささやかな暮らしと人生は、翻弄されて狂わされた。

終戦をむかえて

十年、二十年と時は過ぎ、私は生まれた。

私は戦争を

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【短歌】夏空に散りゆく雲へ

【短歌】夏空に散りゆく雲へ

夏空に散りゆく雲へ 君たちは死に給ふことなかれとつぶやく
なつぞらにちりゆくくもへ きみたちはしにたもふことなかれとつぶやく

先週、映画『君たちはどう生きるか』を観てきました。(感想は別記事にしたいと思います)そして、今週、青い鳥が消滅しました。

私の中でこのふたつの「青」「鳥」「飛び立つ」「自由」「表現」「弱さ」「巨大な勢力」「生きること」「自己中心的」「X・バツ・罰」が交差しながらめぐって

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【短歌】金曜日と土曜日の食べ物

【短歌】金曜日と土曜日の食べ物

麻婆で激務凌いだ金曜とパンケーキ焼く寝グセの土曜

マーボーでげきむしのいだきんようとパンケーキやくねグセのどよう

「なぜだろう・・・」曜日で食べたくなるものがある。
月曜日は焼き魚、火曜日は唐揚げ、水曜日はパスタ・・・といった具合になんとなく食べたくなる。

酷暑やぐずついた気持ちをリセットしたい時は豆板醤と花山椒のきいた真っ赤な麻婆豆腐が食べたくなる。麻婆豆腐には木綿がいい。あのごつっとした

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短歌:夏の部屋

短歌:夏の部屋

冷蔵庫うなる部屋にてあてどなくラグに寝ころびマルバツをして

れいぞうこうなるへやにてあてどなくラグにねころびマルバツをして

♢    ♢    ♢

ほんの15分前まで出掛ける気でいたのに買ったばかりの真新しいワンピースで汗をかくのがイヤになって予定をキャンセルした。

6年目を迎え、35歳になった私は、停滞気味だった彼との関係をこのまま続けることも、夏の暑さの勢いにまかせてはしゃげる歳でもな

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助けてほしいが言えなかったから

助けてほしいが言えなかったから

くつしたも見つからぬまま よわさも布バックにいれ 明日をむかえに

くつしたもみつからぬまま よわさもぬのばっくにいれ あすをむかえに

亜希

助けてほしいが言えなかったから、いま、ここで伝えます。

こんばんは。亜希です。

何もしなかったら絶対、後悔する。やりたい。

ならば、思いを書こう。

こどもの頃、なかよしの親友がいました。

親友はアイドル、私はお芝居が好きでした。

彼女は、アイ

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玉葱を巡る

玉葱を巡る

ひと匙を求めて掬う 呼ぶマンマ 幼き口に初めての聲

ひとさじをもとめてすくう よぶマンマ おさなきくちにはじめてのこえ

亜希

夜、クルマで通りかかった道沿いにある 建物が気になった。
こどもが被る麦わら帽子のようだった。

円形で、簡素に建てられた建物に 木の十字架が架けられている。
いったい何の建物だろう… 教会だろうか?
意匠は、忘れられず、 心の片隅にあるのに 場所がどの辺りなのか

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公園の池の真んなかにて

公園の池の真んなかにて

波留まり これからもずっとスワンボート漕ぎませんかと 彼は汗ばむ

なみとまり これからもずっとスワンボートこぎませんかと かれはあせばむ

亜希

スワンボートが好きだ。
ふつうのボートを私は漕げない。
以前、妹とボートに乗ったことがあるが、オールで水を切っているだけで、ちっとも前進せず、ひたすらその場をくるくると回転し、
「お姉ちゃんっ!!!」と妹にあきれられたことがあった。

盥(たらい)に

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卒業おめでとう

卒業おめでとう

お下がりに「すまん」と思う 桃ジャージ着て 犬と散歩の好々爺

おさがりに「すまん」とおもう ももジャージきて いぬとさんぽのこうこうや

亜希

祖父母とすごした時間がみじかかったので、おじいちゃん、おばあちゃんのいる風景に憧れる。

ことにおじいちゃんが孫の中学や、高校のお下がりジャージを着ている姿に
ゾクゾクとして、次の瞬間、平和な愛おしさに恍惚としてしまう。

ジャージには、白い四角い布に

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卒業の後、日曜の午後。

卒業の後、日曜の午後。

自転車を母の軽へとのせ帰る 卒業のあと 日曜の午後

じてんしゃを ははのけいへとのせかえる そつぎょうのあと にちようのごご

亜希

三年間のお弁当作りが、終わってしまいました。
このマイメロちゃんのお弁当箱、これから何をいれたらいいかと考えていました。

ママが作るお弁当は、女子高生のお弁当とは思えないまっ茶っちゃ弁当だったから、きっとイヤだったよね。
それでも、のり弁好きだからっていつも残

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青豆に春を感じて

青豆に春を感じて

豆ご飯 ラップに包む
ドット柄の営みを愛おしく想ふ

まめごはん らっぷにくるむ
どっとがらのいとなみをいとおしくおもふ

亜希

春を感じると私は、村上春樹さんの
お名前と小説1Q84のことを思い出す。

そして、豆ごはんを炊かなきゃと思うのである。

なぜそうなのかと言うと、
小説の主人公の名前は青豆さんだから。
「青豆」とは変わった名前だなと
思って、以来、忘れられなくなった。

春は、淡い

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おやゆびの使者

おやゆびの使者

くるしいと吐露するきみへ わたしもと伝える指は ハートを染める

くるしいととろするきみへ わたしもとつたえるゆびは ハートをそめる

亜希

体調が悪いとナーヴァスになってしまうのか眠れないことがある。

深夜に誰かと話したくなるが、さっき寝たばかりの家族を起こすわけにもいかず、指でスマートフォンのボタンを探りnoteを開く。

いいなと思うnoterさんのアイコン。
頁に綴られた嘘のない言葉に

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3月31日の嘘

3月31日の嘘

「姉々、四月じゃないよ」と
夢醒めて腫らしたひとみを花粉とウソ吹く

ねね、しがつじゃないよと
ゆめさめてはらしたひとみをかふんとうそぶく

亜希

姉のような人でした。
とても大切な人。いなくなってしまってもうずいぶん経ちました。
そして、はじめて夢を見ました。

嘘だったらいいのに、ぜんぶ嘘だよって・・・
4月馬鹿(エイプリールフール)じゃない日。
3月最後の日に私は嘘をつきました。
花粉症の

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