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誰からも美味しいと言われない美味しいごはん。

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一人暮らしなので、どんなに美味しい料理を作っても誰も喜びません。だからと言って、手を抜く料理を作り続けるのは、ちょっと残念な気がするのです。
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#ひとり暮らし

潮干狩りとボンゴレ。

潮干狩りとボンゴレ。

会社に行くとまさおさんが上機嫌だった。

外は大雨。みんなは鬱々としていた。。。

週末家族と潮干狩りに行ったという彼は、きみどり色のクーラーボックスから
じゃらじゃらとあさりをポリ袋に分けて会社の人に配って回っていた。

曇天の週末だったとは思えないほど真っ赤に日焼けした腕。

きっと家族が呆れるほど真剣に貝を掘っていたのだと思う。

さらに常人では考えられない量を獲れるのだから、潮干狩りのセン

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牛肉の煮凝りとドラマの紅茶。

牛肉の煮凝りとドラマの紅茶。

災害のニュースしかテレビでやっていないと、
ちょっとだけ憂鬱な気分になる。

時間のかかる料理をしよう。

雨が降りそうでもわっとした暑さの空気の中、スーパーに出かけた。

こないだのステーキランチの時、
前菜で出てきた料理が気になっていた。

牛肉の煮凝り。

きっとお店ではステーキの端っこのお肉とかを煮て、
すじ肉のタンパク質とかで固めてあったりするんだと思うんだけど、
それは家ではできないか

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サバ味噌とコンタクトレンズ。

サバ味噌とコンタクトレンズ。

昼過ぎ。私用携帯が鳴った。

メールには、コンタクトレンズを取りに来てください。

そう書いてあった。

普段は眼鏡をかけている私。

休みの日だったり、ここぞという仕事の日にはコンタクトにする。

そのほうがはっきり見ることができるし、視野が広がるから、
多くのことを考えられるような気がする。

逆に人に怒られるときや、強く意見をするときは私は眼鏡を外す。
そのほうが相手の顔や表情を見なくて済む

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ステーキランチとなすの味噌汁。

ステーキランチとなすの味噌汁。

昼過ぎに電話がかかってきた。

相手は同僚のホノカ。

ステーキを食べよう。ランチの誘いだった。

会社から歩いて10分ほどのところにある高級なステーキ店。

看板しか見たことなかったその店になぜか行こうと誘ってきた。

話を聞くと仕事が忙し過ぎてステーキでも食べないと話なならない。
ととても怒っている様子。

大きなビルの地下に目的の店はあった。
入り口の階段を降り始めてホノカがひとこと。

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夕立とナスの瓦そば風。

夕立とナスの瓦そば風。

今日はよく晴れていた。

7月のつもりで気持ちよく会社に行ったけど、
よくよく考えたら7月はもう少し先だった。

早く7月にならないかな。一日中そんなことを思いながら仕事をこなした。

定時を過ぎ、家路に着く。

もうすぐ家に差し掛かったところ。

ポツ。ポツ。ザーッ。

夕立だった。

夕立は字面だけ見れば高級みかんみたいなのに、
実際目の当たりすると、それはかなりの迫力があるといつも思う。

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旧友とジュリエンヌサラダ。

旧友とジュリエンヌサラダ。

仕事を終え、商店街を歩く。

今日の目的地は非常に明確で、信号を2つこえる。

その先にある2つの商店街の重なる場所。。。

ここが今日の目的地。大学時代の友人の大野さん。

今は隣の県で農家をしているのだけれど、久しぶり。と連絡をくれた。

今日は彼女と食事をする。

わざわざ車で来たそうで、そのまま家に泊まることになった。

久しぶりの彼女は少しだけ痩せていて、少しだけ日焼けをしていた。

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アネッサの無駄遣いと夏野菜スパゲティ。

アネッサの無駄遣いと夏野菜スパゲティ。

梅雨の中休みがここ数日続いていた。

久しぶりに外での仕事が長いと見た私。

朝から日焼け止めを入念に塗る。

夏は冬に比べて寒くないのが魅力だけど、そのぶん日焼けが心配になる。

日焼けしない夏があればいいのに。いつもそう思う。

でも玄関を出たら今にも泣き出しそうな空が広がっていた、

気づけば曇天の1日。ふわふわとした思いで家路に着く。

太陽とは対峙しなかった。なんかそれがモヤモヤとする。

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デパ地下パンとレモネード。

デパ地下パンとレモネード。

仕事が早く終わった日は、ときどきデパートでパンを買う。

商店街をまっすぐ。

郵便局と小さなビジネスホテルの間にこの街のデパートはある。
夕方になると普段なら手が出ない惣菜が半額で売られているから私は好きだ。

エスカレーターで地下へ。時計回りでフロアを巡る。

ワイン屋さんをチラッとのぞき、その隣の隣のパン屋さん。
トレイとトングを手にとって、カチカチと2回ならして店に入る。

このあと食べる

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パンダのマスクと桃のコンポート。

パンダのマスクと桃のコンポート。

梅雨の中休み二日目は、思ったよりもしんどくて。
ランチですら外に行くことを迷うほどだった。

午前中の仕事を片付けて12時半。

意外とかかってしまったな。

そう思いながら会社を出て道を渡ったところにある、弁当屋さんに向かう。
真っ白なペンキで塗られたその店は、優しい老夫婦が営んでいていつもニコニコしながら店に立っている。わたしのお気に入りのひとつだ。

カウンターに立つおじさん、今日はパンダ柄

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クーラーと肉じゃが。

クーラーと肉じゃが。

『梅雨の中休みです』
朝起きてテレビをつけると、天気のお兄さんがそう言っていた。
支度をして家を出ると、見事なまでに晴れていた。

気温もグングン上がり、昼過ぎには汗ばむほどの陽気。

会社のエアコンもどんどん下げられていて、
出先から帰ると、ちょっと寒いほどだった。

いよいよ夏だな。毎年毎年、季節を感じる出来事がある。

テレビで連続放火魔のニュースが出れば、春を感じるし、
暑いのに寒いほどの

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『大人』とアジのつみれのお吸い物。

『大人』とアジのつみれのお吸い物。

いつもの喫茶店でコーヒーを飲む。

まだ午前中だから、西から太陽は入ってこない。

今日はモンブラン。

学生の頃、小さなデパートの中にある小さな喫茶室でアルバイトをしていた。

その店にもモンブランがあって、
それを作るたあとに余ったマロンクリームをコーヒーと一緒によく食べていた。
マロンクリームから香るブランデーの香り、
甘くなった口の中をコーヒーがフラットにしてくれてどんどん手が進む。

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週末の鯵ぽん。

週末の鯵ぽん。

起きると。10時半だった。

昨晩のミネストローネを冷蔵庫からだし、茹でたそうめんを入れてすする。

トマトの冷たい感じ。具材たちがひと晩経ってまとまりを強めていた。

そこへ登場する細いそうめん。

カペリーニがこの世にあるから美味しいに決まっているのに、新たな発見がそこにあるような感じがする。

いい陽気。気持ちも軽い。

洗濯機を回し、ベランダのハーブに水をやり、コーヒーを飲んで洗濯物を干し

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細かい雨とミネストローネ。

細かい雨とミネストローネ。

細かい雨は嫌いだ。

降っているか止んでいるか、そもそもわかりづらい。

傘をさしてもビニール傘の透明なところに雨の気配はないのに

ささないと、私のメガネには水滴がつく。

だったらと再びさすと、私の横を車が通るたびに傘の中に潜り込んでくる。。。

本当に鬱陶しい。

やっぱり私は梅雨がどうしても好きにはなれない。

うつうつとしたまま仕事をこなし、うつうつとしたまま定時で職場をあとにした。

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エスプレッソと鯖そうめん。

エスプレッソと鯖そうめん。

ランチ帰りにカフェに寄ってエスプレッソまで飲んでしまった。

エスプレッソには砂糖をいつもたくさん入れる。

ティースプーン2杯。

そしてそれが溶けきらないうちに飲み、最後だんだん強まっていくビターチョコのような風味。そして最後にカップに残ったコーヒー味の砂糖をスプーンですくって舐める。

スプーンの通った跡がカップの底に残った。

結露のついたコップの水を一口。店をでる。

午後は思ったよりも

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