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#短編集
美しき、百“希”夜行(夜天/女王蜂)
今、『先が見える人』と『先が見えない人』は、どちらの方が多いんだろう。
終わりが見えないなんちゃらウイルスに、もしかしたら明日起こるかもしれない震災に。
行きたい場所へ、行けない。
誰かに会いたいのに、会えない。
ピリピリした現実。
あっちを向いても、こっちを向いても、一寸先は闇。
自分のこともそうだけど、自分が好きな人達も。
たとえば、好きなミュージシャンのこと。
僕の大好きなバ
それはそれとして、(月とコーヒー/吉田 篤弘)
『月とコーヒー』
読み終えたのは、9月。
ただし、1年前の。
1年後に、ボクは本の記憶をそっと取り出し、ここに書いている。
月は、9月がよく似合う。コーヒーも、涼しくなった季節によく似合う。つまるところ、頃合いなのだ。
*
記憶は、2種類ある。
一つは、何度でも思い出したくなるもの。もう一つは、年に一度会うことが出来たなら幸いのもの。
前者は、身に覚えがある人も多いだろう。しかし、
僕には、君が必要なかったから(一生好きってゆったじゃん/横槍メンゴ)
僕には、パートナーがいる。「すてきな人だね」って、いってもらえるような人が。僕もそう思うし、僕はパートナーのことを、ちゃんと愛していると思う。
あの人と出会って、恋をして、結婚して。パートナーが恋人から伴侶になった今でも、時々思うことがある。僕は、「いい人」を好きになることができたんだ、って。
なんで俺を通報しないんだ
先生も同じ地獄(ところ)に居るからです
――『Stand by you』
辛そうで辛くない少し辛い話(今日というより凶な今日/みのわようすけ)
「……」
「それ、おすすめですよ」
「どれが1冊目ですか? ……ああ、これか……でもこれ、もう見本しか無いですね」
「ああ……あ。でもそれ、第二版ありますよ。ほら、隣にある。これ、表紙は違いますけど中身は同じなんで」
「じゃあ、これ下さい」
*
「こんな夢を見た」とは夏目漱石の弁だけど、かくいう僕も、数ヶ月くらい前までは『ゆめにっき』なるものを残していた。フリーアドベンチャーゲームじゃなくてね
ふえる、ふるえる(ボルヘス怪奇譚集/ホルヘ・ルイス・ボルヘス他)
く、く、く
だれかが、笑っている。
けれど、そのだれかはいない。
ここには、だれもいないよ。
僕の他には、だれも。
く、く、く
また、笑っている。
僕を、笑っている。
*
ベッドサイドに置いてあると間違いなく眠れなくなるから、安眠したい人はこの本を手に取らない方がいい。(中略)眠ることなどとうに諦めた不眠症の人がベッドサイドに置いておくのはいいかもしれない。
――朝吹真理子「解説 眠れ
こじれる(谷崎潤一郎犯罪小説集/谷崎潤一郎)
悪いことがしたいな。
辻斬りのように男遊びをしたいな、というのは川村優奈の弁だけれど、
僕は、男遊びにも女遊びにも興味は無いけれど、
悪いことなら、してみたいな。辻斬りのように。
悪いことは、いけないこと。
指をきらきらと染めるのは良いことだけど、
手をどろどろに染めるのは悪いことらしい。
「手を染める」といえば、やはり犯罪だろう。
手っていうのは染めれば染めるほど、後ろ指を指されるものだ。
擦り切れるほど、(夢から覚めたあの子とはきっと上手く喋れない/宮崎夏次系)
Q.友人はいますか?
A.いることには、いる。
大学時代の友人が2、3人ほど。
あちらにとって、僕は友人じゃないかもしれないけど。
Q.定期的に連絡をし合う相手はいますか?
A. パートナー。
あと、たまに母親。
好きなものは 世の中にいっこでいい
失くしたらおしまい そんな感じの
だってさ
大切なものに代えがあるのは さみしいから
――『明日も触らないね』より引用
やさ