つくし@ピアノ調律師の書斎

フリーランス16年目。埼玉のピアノ調律師です。 ピアノや仕事について言語化することで、…

つくし@ピアノ調律師の書斎

フリーランス16年目。埼玉のピアノ調律師です。 ピアノや仕事について言語化することで、言語化できない大切なものを見つけていきたい。 毎週水・日曜に更新。 同業者の妻とピアノが好きすぎて寝床にしてしまった文鳥と3人暮らし。 https://www.tukusi-piano.com

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    ピアノって、調律って、本当はこうなんです。 ひとことで伝えるのは難しい「ギャップ」を解消する記事をまとめました。

記事一覧

固定された記事

調律師がすすめる、ピアノの本

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味とニオイが消えた1ヶ月

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梅雨のピアノに関する記事を6つまとめました

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ピアノの湿気対策には色々な方法があります。 乾燥剤、除湿機、そして今回取り上げる「ダンプチェイサー」という機械。 ダンプチェイサーはピアノの内部に設置するヒータ…

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香りを残さず立ち去る仕事

美容院で髪を切ってもらった直後ってなんか違和感ありますよね。 慣れなのか、馴染みの問題なのか、ピアノの調律でも同じことが起こってるんだろうなと思います。 調律師…

調律師がすすめる、ピアノの本

調律師がすすめる、ピアノの本

弾くだけじゃなくてピアノのことをもっと知りたい!と思ったときに、ピアノ関連の本はたくさんあってどこから手をつけて良いか難しいです(専門書は価格も決して安くないですしね)

そんな方に向けて、まず最初の一歩としてここを押さえておけばピアノの全体像が見えやすい、おすすめの本を紹介します。

ピアノのことをもっと知りたい方向けの本青山一郎著「1冊でわかるピアノのすべて」

ピアノの歴史から音律のこと、構

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味とニオイが消えた1ヶ月

味とニオイが消えた1ヶ月

先月、人生初のコロナに罹りました。そこそこ辛かったですが、さいわい熱もそこまで高くなく軽症で済みました。

各所にはだいぶ迷惑をかけてしまいました。でも何もしないしできない5日間はけっこう貴重で、フリーランスになってから16年で初めてと言っていいほどリフレッシュできました。

でも快復するのと引き換えに…あれ?

味がしない。ニオイも無い。

後遺症ってやつです味は鈍いとか薄いと言うより、ある部分

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ピアノにこそスマート家電を

ピアノにこそスマート家電を

家電を声で操作したり自動化したりと便利なスマート家電。

こういった機器を試すのが好きで、数年前から10種類以上使ってきました。だいぶ生活が変わったなと思います。もちろんピアノまわりにもめちゃくちゃ便利で、練習から管理、レッスンまで一度使ったら戻れなくなるほど捗ります。でも特にピアノ界隈ではいまいち浸透していない印象…

自分では思いつかないような活用法も知りたいので、もっと盛り上がっていろんな方

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世の中で一番状態の悪いピアノは...

世の中で一番状態の悪いピアノは...

一般家庭からホールや学校、飲食店、ホテル、屋外や船の上まで、いろいろなところにあるピアノを調律をしてきましたが、断言できます。

「世の中で一番ピアノの状態が悪いのは学童施設である」と。

小学校に併設されているいわゆる「学童さん」
毎年10台くらいの学童さんのピアノを診ていますが、まあ壊れること。

学童に入ったピアノがもれなく受ける最初の洗礼は譜面台の破壊。そんなことは序の口で、1年で10本近

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調律師に「ピッチはどうしますか?」と聞かれたら

調律師に「ピッチはどうしますか?」と聞かれたら

調律のときにこう聞かれて困ったことがあるかもしれません。正直「ピッチ」ってなんなのかよくわからない、と言う人がほとんどなんじゃないかと思います。

そもそも「ピッチ」とは?この場合の「ピッチ」というのは下から49音目のラの音の高さを何Hzにするか?という話です。

基本的にはラは 440Hz〜442Hzで調律します。

それぞれの音どうしの関係性は変わらないので、ラの音を高く調律した場合は他の音も

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子供の頃の常識からは逃れられないのかもしれない

子供の頃の常識からは逃れられないのかもしれない

ピアノの管理においては「換気」はやっかいな要素です。

なるべく置き場所の環境を変化させたくないので、窓は開けず、カーテンは閉め切って、エアコンや除湿機はつけたまま、と言うのが理想です。あくまでピアノのことだけを考えれば、ですが。

窓を開けての換気は今の時期、部屋が一気に湿ったり暑くなる原因になります。なのでやむなく換気をする場合も本当に一瞬だけにしたいところですが、ご家族の理解を得るのが難しい

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調律予約の「時間フリー」というシステムのメリットと問題点

調律予約の「時間フリー」というシステムのメリットと問題点

ピアノ調律料金の割引の一環として、「時間フリー」というシステムを設けています。

通常のご予約では調律の日程と時間をピンポイントでお約束します。「時間フリー」では日程だけ約束をして、訪問時間は前日夕方にこちらで決めてお客さまに連絡するという流れ。その代わりに出張料金から一定額の割引となります。

調律師の方やピアノの引っ越しを頼んだことがある方は馴染みがあると思いますが、多くのピアノ運送屋さんで採

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梅雨のピアノに関する記事を6つまとめました

梅雨のピアノに関する記事を6つまとめました

関東は先週、平年より2週間ほど遅れて梅雨入りしました。

最近は冬の乾燥が大きな問題になっていて梅雨の湿気はなんか忘れられがちですが、やっぱりピアノには湿気も大敵なことは変わりありません。

エアコンのことや乾燥剤のことなど、季節的な記事は毎年同じ内容になってしまうので一度書いたきり埋もれてしまうのが悩みです。でも大事なことなので改めて掘り起こしてまとめておきたいと思います。

ここに書いているこ

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細かすぎて伝わらない、ピアノの好きなところ

細かすぎて伝わらない、ピアノの好きなところ

ピアノを購入してまもないお宅へ調律に伺ったとき、わりと高確率で聞かれること。

「ここから部品が無くなってるんですけど、不良品ではないですか?」

「ダンパー」というこの部品のことです。

低音から1音にひとつずつ付いていますが、高いほうの音ではあるところから急にこの部品は無くなります。他の部品は最初から最後まで同じように全部あるのに。でもこの部品に限っては、途中からは付いていないのが正常なので大

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「アンドロイドは電気音叉のなんちゃらかんちゃら」(原題:チューナーアプリには気をつけろ!)

「アンドロイドは電気音叉のなんちゃらかんちゃら」(原題:チューナーアプリには気をつけろ!)

タイトルは、ウマイこともじろうとしてよくわからなくなったのでスルーしてください。

オケで団員の方が何人かのチューナーアプリでピアノのピッチを計ったら、それぞれのアプリで違う数値が計測されて困ったと言う話題がありました。

ピアノの調律にも、今やチューナーアプリは手放せなくなっています。

ピアノの調律は全ての音をサポート無しで合わせてると思われがちです。ほぼ正解ではあるのですが...必ず基準の音

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ピアノは夜も眠らない

ピアノは夜も眠らない

ピアノの湿気対策が必要な時期になってきました。

これは毎年伝えていきたいのですが、ピアノに対してエアコンでの除湿は効果が薄いです。

そして調律先でピアノの湿気対策について話していると、「あ〜これ意外と盲点なんだな」と感じることが。

ピアノは24時間そこにあるということ部屋に除湿機があるのに、点検をしてみるとなぜか湿気の影響を大きく受けているピアノがあります。ピッチが妙に上がっていたり、出づら

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自動演奏ピアノについて考える。たかが演奏情報、されど...

自動演奏ピアノについて考える。たかが演奏情報、されど...

自動演奏ピアノの歴史は意外と古くて、150年以上前からあると言うと驚かれます。

当時のものは演奏情報が“穴”として開けられたロール紙が回転してそのとおりに演奏される仕組み。バイオリンや木琴、太鼓などが入っていて合奏されるようなものも多くてどちらかと言うと「すごいオルゴール」のようなイメージの楽器です。

1980年代にはヤマハが「MXシリーズ」と言う自動演奏内臓のアップライトピアノを出していてま

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世の中のピアノの鍵盤は、だいたい深い

世の中のピアノの鍵盤は、だいたい深い

「本番で弾くピアノはいつものピアノよりも鍵盤が浅く感じる」
「お店で指弾したピアノも同じく浅く感じたけど気のせい?」

こんな投稿をXで見かけました。

これ、そのとおりなんです。

フリーランスになってからいままで、調律するピアノはすべて同じ内容で点検をしているので1700台ほど見てきたことになります。そして感じたこと。

「世の中の多くのピアノは鍵盤が深いな」

体感ではふつうの深さのピアノが

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ピアノ除湿用の「ダンプチェイサー」に対する本音

ピアノ除湿用の「ダンプチェイサー」に対する本音

ピアノの湿気対策には色々な方法があります。

乾燥剤、除湿機、そして今回取り上げる「ダンプチェイサー」という機械。

ダンプチェイサーはピアノの内部に設置するヒーターで、ピアノの横幅くらいの長いヘアアイロンを想像してください。

ダンプチェイサーという除湿方法ダンプチェイサーは発熱してピアノ内の空気をあたためます。空気中の水分を減らす除湿機とは方法が違って、空気をあたためて水分が入るキャパを増やし

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そもそも「湿度」とはなんぞやという話

そもそも「湿度」とはなんぞやという話

「湿度90%って!ほぼ水の中にいるってこと!?」

と言ういにしえのジョーク。子供の頃は勘違いを…どころか湿度についてきちんと理解したのはこの仕事に就いてからだと思います。これって中学校とかで習いましたっけ?

6月は湿気対策について書くことも多くなると思うので、湿度というものについて、ピアノに関係のある部分をかんたんに整理しておきます。

ピアノを管理するにあたり「湿度50%がベスト」と言うこと

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香りを残さず立ち去る仕事

香りを残さず立ち去る仕事

美容院で髪を切ってもらった直後ってなんか違和感ありますよね。

慣れなのか、馴染みの問題なのか、ピアノの調律でも同じことが起こってるんだろうなと思います。

調律師としては調律直後はピアノがピシッと揃ってベストな状態のつもりですが、必ずしも弾き手も同じように感じてはいないはずです。もちろん特有の隙のない良さがありますが、「調律直後の秩序立った状態よりも少し狂い始めたくらいの方が好き」と言う方も多い

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