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ピアノ調律師同士で考えたい

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同業者の方と一緒に考えたいことや、おすすめのグッズなどを紹介しています。
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記事一覧

ホームページから調律のお申し込みをもらうために、こんな工夫をしています

今回の記事はキホン、同業者さんに向けての記事となります。 せっかく良いサービスを展開しているのに、なかなかご新規の依頼が増えないというお悩みがある方は、もしかしたらちょっとしたことが妨げになっているだけかも知れません。 この記事は、ホームページの「お申し込みフォーム」に焦点を当てた内容です。色々と試行錯誤していく中で「これは効果があったし、評判も良くてお客さまのためになってるな」と手応えがあったことを共有したいと思います。 予約がめんどくさいお店は後回しになってしまうサ

有料
500

専門家の見えているものとユーザーの見えているもの

ピアノの故障をお客さまに説明するときに、ピアノの内部を見てもらうことがあります。 ひとつの事象を説明するにも ・何のための部品なのか ・何の素材でできているのか ・本来はどうなっているものなのか ・今はどうなってしまっているのか ・どんな不都合があるのか ・どう直すのか ただでさえ前提条件からの説明が必要で、さらにピアノの中身は複雑なので…なるべくピンポイントに絞って説明しているつもりですが、うまく伝えられてないな〜と思うことがあります。 最近気づいた原因のひとつが、

誰かが手を入れないとピアノは整わない

ピアノと「時間」は切っても切れない関係です。 〈ピアノの演奏と言うのはいわゆる時間芸術〉 〈ピアノはメンテナンスをしない時間が長ければ長いほど悪くなっていく〉 〈新品のピアノが鳴るようになるためにも時間が必要〉 あたりまえすぎることですが、ふと思いました。そもそも「時間ってなんなんだろう?」 いろいろ調べてたどり着いたのはどうやら「エントロピー」という熱力学の法則が重要らしいこと。 なるほどエントロピーの観点でピアノを見ていくと色々と納得ができましたし、このイメー

同業者の友人に独立を相談されたときに伝えたい10の本音

フリーランスのピアノ調律師として働き始めてちょうど15年が経ちました。 ゼロから始まった当時は想像もできなかったお客さまも1,500名を超え、小さいながらもなんとかひとつの形にはなったかなと、しみじみと感じています。 もちろんこれらはただの数字で、これからもひとりひとりに向き合っていくことは変わらないのですが。でも改めて、これだけ長くたくさんの方の大事なピアノのメンテナンスに選んで頂いたと言うのは本当にありがたいことです! 今回の記事は節目として初心にかえる意味もありつ

弾き手にピアノの「あら探し」を手伝わせないようにしたい

ピアノ調律の作業って、そのピアノのポテンシャルを引き出すことをゴールにしているわけで、言うなればピアノの「あら探し」をする仕事とも言えます。 〈いま何がこのピアノの100%を邪魔しているのか?〉 大きな原因を改善したら中くらいの問題点を潰して、さらに細かいところまで潜っていき...重箱の隅をつつくように、調律師は常に悪いところを血眼になって探しています。 なので以前は調律をはじめる時にお客さまには「なにか気になるところはありますか?」と聞いていました。 調律のいちばん

ピアノ調律師にとっての生産性とはなにか

先日フリーランスの調律師で集まってはじめての勉強会をおこないました。 同年代で同じフリーランスと言う立場の仲間の存在はものすごくありがたいです。 その中で「生産性をあげるには?」という議題がありました。工具やデバイスの最適化、事務処理や移動のムダを省いたり、より効率的な働きができるようにしたいというのは共通の悩みです。 この議題は突き詰めたら沼なので今回はさらっと話す程度におわりましたが、それもこれも、なにを「生産」とするのかが多岐に渡っているからなんだと思います。

ピアノ調律師のための「錆を化学的に知る」

弦、フレーム、チューニングピン、キーピン、レール、スプーン、蝶板、ペダル...ピアノには多数の金属が使われています。そして金属とは切っても切れない「錆」 金属が錆びるのは酸化するからという程度の認識くらいで、ふと実は錆のメカニズムを正確には把握していないなあと言うことに気づきました。より的確で無駄のないメンテナンスをするためにも、こういったピアノに関する事象を化学的に知っておく必要があると最近は感じています。 と言うことで、こちらの本を読んでみました。 化学的な基礎知識

何気ない言葉が今の自分を形作っている

調律師として仕事をしていて、影響を受けた言葉や考え方というのはたくさんあります。その中でも明確に自分の行動理念となっているなあと感じる、2人の方から頂いた言葉があります。 「調律師って言うのはね、モテないとだめなんだよ。」 高校生のときに、調律の道に進もうと思った際に話を伺ったある楽器店の社長さん(元調律師)に言われたことです。当時は正直「あ〜…おじさんの下世話なノリだ…」と軽く流していましたが(失礼)仕事をはじめると意味がわかりました。 調律の仕事って対・ピアノだと考

ピアノ調律師が買ってよかった、仕事のモノ2022

2022年も色々と新しいアイテムを試しました。その中で仕事道具としてレギュラー入りしたモノたちです。 鍵盤に貼る付箋調律前にお客さまが気になっている音などがあれば教えていただき、該当の鍵盤にペタペタ貼っていきます。台紙がカードになっていて取り出しやすくて、デザインもかわいい。こういう細かいところで地味にテンションを上げていくの大事。 電源タップ自前の掃除機や電動ドライバー・コテなどを使うのにコンセントをお借りする際には、間にこれを差して使っています。延長ケーブルとしての意

「好きを仕事に」の罠

・好きこそ物の上手なれ ・好きを仕事に! ・好きだから頑張れる ここ数年、これらの是非についてよく考えています。 個人的には「好きという感情」は、仕事においてはかなり危ういものだと思っています。 好きなことって不思議なもので、あるとき急にそんなに好きじゃなくなったり、むしろ嫌いになったりしますよね。もちろんさらに好きになることもありますが…とにかく波が激しい感情です。 好きを原動力にして働いていると、本来おまけであるはずの「自分の好きという感情を満たすこと」がメインの報

働くということを考えたら最初に入った会社のことを思い出した話

ピアノ調律師という仕事が珍しいのもあってか、仕事先でお子さんの進路のことでご相談されることがちょくちょくあります。軽々しくアドバイスはできませんが、さすがに18年くらい社会人をやっているので、ひとつの例として少しは参考になるかな?と思うと同時に、改めて自分の仕事についても考える機会になります。 今回はそんな“働く”において大事に思っていることのひとつを書いてみたいと思います。 この仕事ではいろいろな訪問先があります 僕の場合は基本的に一般家庭のピアノの調律がメインで、8

「なおす仕事」の闇

ピアノ調律師の仕事は、音程を直す、音色を直す、音が出ないのを直す、弾き心地を直す… かんたんに言えば【ピアノを直す仕事】です。 僕は基本的に調律するピアノの台数を1日2台までにしています。時間的なこととか、スケジュールの組みやすさなど理由はありますが、一番は単純に疲れでクオリティを落とさないため。1台たった2時間くらいの作業でも、調律をすると結構な疲労感があります。 もう疲れて何もできない〜と言うような疲れと言うよりも、今日はもう調律は無理だ...と言う疲れなので、身体

ネジ1本を替えるか悩む

ピアノの修理につきものの、オリジナルの部品をどこまで残すか問題。 音や弾きごごちに関わるものはなるべく元々の部品を残したいところですが、壊れていたり新しくしたほうが劇的に良くなるのであればどんどん交換した方が良いと思っています。 逆に悩むのが、壊れてもいないけど新しいものにしたらほんのちょっとだけ良くなる部品です。 主にこう言った古いピアノのマイナスネジなどなんですが。 機能的にもここがマイナスネジである必要はなくて、ただその時代主流だったという理由だけなのでこの部分

筋が通っている人はどこまでも筋が通っている

どのピアノの中にも調律カードと呼ばれるメンテナンス記録の紙が入っています。それぞれの調律師の、この紙への接し方を見るといろいろと勉強になることが多いです。 入っていた2枚の記録今回のピアノには2018年5月の記録が書かれた前任の調律師の名刺と、2018年5月〜2019年まで数回のその方のメンテ記録が書かれた調律カードの2枚が入っていました。 実はこの前任の方は亡くなってしまったとのことで、お客様から今回こちらへのご依頼がありました。 前任の方が最初に調律をした際には、こ