つくし@ピアノ調律師の書斎

フリーランス17年目。埼玉のピアノ調律師です。 ピアノや仕事について言語化することで、…

つくし@ピアノ調律師の書斎

フリーランス17年目。埼玉のピアノ調律師です。 ピアノや仕事について言語化することで、言語化できない大切なものを見つけていきたい。 毎週水・日曜に更新。 同業者の妻とピアノが好きすぎて寝床にしてしまった文鳥と3人暮らし。 https://www.tukusi-piano.com

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  • 有料記事でリアルな話をしたい

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  • お客さまと調律師のギャップを埋めたい

    ピアノって、調律って、本当はこうなんです。 ひとことで伝えるのは難しい「ギャップ」を解消する記事をまとめました。

  • ピアノのポテンシャルを引き出す方法を伝えたい

    ピアノをもっと楽しんで頂くための管理方法をご紹介しています

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    同業者の方と一緒に考えたいことや、おすすめのグッズなどを紹介しています。

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    スマートデバイスをつかったピアノの練習方法や管理方法をまとめています。

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調律師がすすめる、ピアノの本

弾くだけじゃなくてピアノのことをもっと知りたい!と思ったときに、ピアノ関連の本はたくさんあってどこから手をつけて良いか難しいです(専門書は価格も決して安くないですしね) そんな方に向けて、まず最初の一歩としてここを押さえておけばピアノの全体像が見えやすい、おすすめの本を紹介します。 ピアノのことをもっと知りたい方向けの本青山一郎著「1冊でわかるピアノのすべて」 ピアノの歴史から音律のこと、構造から考えた弾き方のこと、調律のことなど色々な角度からピアノのことが書かれていま

    • 調律料金についてもう一度考えて、どのピアノもスタートラインに。

      料金と言うのは、サービス提供者それぞれの考え方が強く出る部分だと思います。 正直、料金設定は常に悩みます。そして今回はけっこう大きな変更をしました。 初回のピアノ調律料金を「完全に一律料金」とすることに。 今まで、「前回の調律から何年空いていても一律」「アップライトピアノ・グランドピアノに関わらず一律」としてきました。その次の形として、初回は状態や作業内容に関わらず一律料金。 誤解がないようにしたいのは「どんな状態のピアノでも同じ料金で100%にします...ではない。」

      • ピアノの調律をなにかに例える

        ピアノのメンテナンスの絶妙なあれこれはやっぱりわかりづらくて、なるべく別の一般的なものに例えて説明するようにしています。 その中でも確実に伝えておきたいのは、「久しぶりに調律をするピアノは一回で急に良くなることは無い」と言うこと。年単位でゴールに近づけていくニュアンスをお客さまにも持っておいてもらうため、ゴルフに例えることがあります。 まず大前提、ホールインワンはほぼありえないこと。 どんなコース(ピアノ)でも地道にゴールに進めていくしかありません。 最初の数打はとにか

        • アップライトピアノの左のペダルって、いつ使うの?

          これホントよく聞かれます。 右のペダルのように誰しもが使うわけではない。そもそも踏んでも何かが変わった気もしない。謎のペダルですよね。 実は微妙に変わってるんですこのペダルは「ソフトペダル」と言う名称で、踏んでいる間だけ音が少し小さく、少し柔らかくなると言う効果があります。 通常、ピアノのハンマーは4.5cmくらいの距離から弦を叩きます。 ソフトペダルを踏むとすべてのハンマーが前進して、弦にちょっと近づきます。 近い距離から弦を叩くので通常時より勢いが弱まって少しソ

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        記事

          弾く人、ピアノ、調律師

          9月に入ってだいぶ涼しくなりました。いや、まだだいぶ暑いですが感覚が麻痺してますね。車から降りて灼熱じゃないだけで涼しいと感じますから。 今年から日傘を使い始めました。日傘ってこの時期こそ効果を発揮する気がします。一番暑いときはいくら日を遮っても熱が横から回り込んできましたが…このくらいの暑さだと日陰がつくれる恩恵がより大きい気がします。 そんな昨今の異常気象。ピアノにも影響が大きいです。 さすがにピアノもこのままではマズイ以前のように「ピアノのためにできるだけ〜」と悠

          弾く人、ピアノ、調律師

          ピアノ探しの地図と、KAWAIのピアノ

          ピアノの買い替えを考えているお客様からご相談を受けました。 今回はヤマハのグランドピアノで20年以内のものをお探しなので、大体の各モデルの立ち位置を伝えつつ、良さそうなものが出てきたらご提案したり、お客様が見つけたピアノで「これってどんなピアノですか?」と聞かれたものについて解説したり。 この条件「ヤマハでここ20年のピアノ」は一番スタンダードなご相談で得意分野です。特に仕事をはじめた前後以降に発売されたモデルは新品の時から触れてきているので、各モデルの立ち位置や文脈が把

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          ピアノ調律師をやっていて地味につらいこと

          職業ごとに「大変なこと」はそれぞれ。 内容自体が大変だったり、責任が大きかったり、長時間労働、金銭面とか人間関係とか。 小学校の先生をやっている友人が「駅のホームで椅子に立ち上がっている小学生集団を見かけたりすると、疲れてても関係なくても一応注意しないといけないのが地味につらい。スルーしても良いんだけど立場上ね…」と言っていました。 職業紹介のページには載っていないような、なってみて初めて感じる些細なこと。ピアノ調律師にもそんな「地味につらいこと」があります。 スーパ

          ピアノ調律師をやっていて地味につらいこと

          「帰るコール」を自動化したら楽になった

          我が家は僕のほうが帰宅が遅いことがほとんどなので、仕事が終わったら妻に「帰るコール(LINE)」をしています。 でも仕事おわりはお客さま宅を出て車に乗ってしまうのですぐにLINEを打つ暇は無い。毎日場所も違うので、毎回変わる帰宅時間を調べるのもメンドウ... ということで自動化しました自動化により、やることは仕事が終わって車に乗ったら、貼ってあるシールにiphoneをかざすだけ。 これだけで、家に到着する時間のLINEが自動的に妻に送られます。 使っているのはこれだけ

          「帰るコール」を自動化したら楽になった

          錆のことを少しだけ科学的に知って、ピアノをサビさせない

          弦、チューニングピン、フレーム、鍵盤の軸、ネジ、ハンマーの可動部、レール類、各種スプリング、蝶番、ペダル...ピアノには多数の金属が使われています。そして金属とは切っても切れない「錆」 錆はピアノの耐久性のみならず、弾き心地と音にも大きな影響があります。まさに百害あって一利なし。 いや、見た目の部分で真鍮などの錆は「趣き」と捉えられるケースもあるでしょうか。それでもやはりピアノの美しさは秩序にあると思うので、錆は大敵と言えます。 この記事では錆のメカニズムを知ることで、

          ¥300

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          この修理が、ピアノのどの時間軸に作用しているのかを考える

          湿気でハンマーの動きが悪くなる。 よくあるピアノの故障です。 長いあいだ湿度の高い環境に置いてあるピアノで発生しやすくて、先日も湖の近くの別荘地でこの症状が起こっていました。 弦を叩くハンマー根元の関節部分は、湿気を受け続けると膨らみます。膨らむごとにスムーズさが無くなりタッチが重くなっていき、更にひどくなると最後は完全に動かなくなって、音が出なくなります。 そのピアノも鍵盤全体がかなり重く、中には鍵盤が戻らないほど進行しているものがいくつもありました。 この故障を

          この修理が、ピアノのどの時間軸に作用しているのかを考える

          実は内緒で変わってる

          ディーラーに車を修理に出して数日間、代車を借りていました。隣家の工事中、車に塗料をこぼされてしまうと言う不幸な事故があったので... ありがたいことに乗っている車と同車種、同グレードを貸してもらえたので全く不便なく。こういう時にナビをCarPlay(スマホを繋げばそのまま使える)にしておいて良かったなあと思います。 ただ一点、乗ってみると違和感が。良い違和感なんですが… 「アームレストが自分の車よりちょっとだけ長い」 代車を返すときに営業さんに聞くと、ある時期販売され

          時間通りに仕事を終わらせるためのピアノ調律師のカバン

          写真の整理とともに、もうひとつ夏休み中にやっておきたかったこと。 それは仕事カバンのアップデート。調律師には工具用のカバンも大事ですが、書類などを入れるカバンもスムーズな仕事のためには無視できません。 今のカバンで数年試行錯誤したのを踏まえ、足りないものを揃えたらかなり理想の形になりました。 カバンは引き続きのコクヨのリュックを新調。 とにかく重視したいのは調律の作業中に使うものと使わないものをハッキリと分けること。工具の出し入れは現場ごとに使うものが読めなかったりす

          時間通りに仕事を終わらせるためのピアノ調律師のカバン

          時代と人とピアノと。

          以前調律していた、あるピアノの中に入っていた調律記録です。 出荷された「12年」は平成でもなく、もちろん2012でもなく昭和12年。87年前に製造されたピアノです。 ちなみに出荷検査はヤマハの創業者・山葉寅楠のご長男らしく(養子に出ているので河合姓)、歴史を感じます。 この年は第二次世界大戦の始まる2年前。記録を見ていくと戦時中も調律をされていたようです。 20代の自分には昔過ぎたやはり終戦の頃には調律はストップしていて、終戦後の昭和24年に再開。今になって見るとこの

          写真の整理をしよう

          お盆の時期は毎年、夏休みとまではいかなくても調律の訪問をセーブしています。とにかく渋滞で時間通りにたどり着けないので、近場のお客さまのみです。 少し時間ができるので今年は仕事で撮った写真の整理をしようかなと。 パソコン内をざっと見ると写真は3000枚くらいでした。やはり残っている写真は2009年スマホの時代からで、その前のものは全くありません。そしていまだに写真の整理には迷います。 仕事で写真を撮るのはだいたい3パターンあって ・ホームページやブログに載せる用 ・故障

          持ち主にしか直せないピアノの不調

          ピアノで特定の音を弾いた時、一緒に異音が混じることがありませんか?「ビーン」「ジー」「ビリビリ」など、出している音と同じ長さで鳴る異音です。 これはだいたいピアノの音に「何か」が反応して揺れていることによる「共鳴雑音」という症状です。 どんなピアノにも起こり得ることなのと、その性質上調律師が直せないことがあるちょっとやっかいな現象です。 すべてのモノは、ある音で揺れる前提として大事なことのひとつは「音」=「振動」ということ。 ピアノから発した振動は空気中や壁、床、天井、

          持ち主にしか直せないピアノの不調

          ピアノに消費期限は無いけれど

          「ピアノって何年くらい持つものなんですか?」 結構聞かれます。 調律師としては「ピアノに寿命は無いのでその気になればいつまでも使えますよ」と答えたくなりますし、それはある意味真実です。でもこれってきっと、聞きたいこととはちょっと違いますよね。 「車って10万キロがひと区切り」「さすがにスマホは5年つかうのは厳しい」みたいな、だいたいのレベルの話をしたいと思います。 それで言うと、ピアノのひと区切りは50年です。 工業製品としての寿命このくらい経つと、そのピアノのベス

          ピアノに消費期限は無いけれど