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ピアノのポテンシャルを引き出す方法を伝えたい

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ピアノをもっと楽しんで頂くための管理方法をご紹介しています
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調律をたくさんすればピアノが安定する、と言うわけじゃない

ピアノは結構音が狂う楽器です。 ピアノ調律師の仕事はいわゆる「狂った音を合わせる」だけではありませんが、基本の作業であることは間違いないです。 でもその「音の狂い」にもいろいろあります。実はただ調律を繰り返せば良くなるわけではなく、適切なタイミングで調律することや、環境を整えたり、持ち主の方の協力が絶対に必要です。 今回はそのために絶対に共有しておきたいけど、意外と調律師の感覚に留まっていてひとことで説明するのが難しい「ピアノの音の狂いとは?」について言語化したいと思い

昭和のピアノの常識と令和のピアノのこれから

他の色々なことと同じように、ピアノの常識も昭和の時代とはだいぶ変わりました。 仕事の性質上、あらゆる場面で元号を使わないように心がけていますが「人の意識も含めた“時代”として考えるときには元号で括るのはあり」と言う投稿を見てなるほどなと思ったので、たまには元号で括ってみます。 ピアノが一番売れていた時代、メーカーも販売店もとにかく「ピアノに湿気は大敵」と言うことを一番に警告していました。 昔のピアノ購入者向けのマニュアルを見ると面白くて「なるべく乾燥させましょう」とすら

保育園で安全に負担なくピアノを使うためのリアルな話。

保育園はピアノが大いに活躍できる場所です。 でも保育園でのピアノは主役では無くて、音の良さやタッチを追求する場所でも無い。悪くない状態で、保育に支障が無く、お子さん方の楽しみの邪魔にならないことが大事だと思っています。そして数ある保育のためのツールとして、なるべく予算をかけずにその状態を長く維持していく必要があります。 この記事は、そんな一般家庭ともホールなどの施設とも違う保育園のピアノをメンテナンスしてきて気づいたこと、多くの先生方からフィードバック頂いたことを踏まえ「

有料
300

「上から給水できる加湿器」は本当に楽なのか?をマジメに考えてみたら...

加湿器に欠かせないけど一番めんどくさい、水を入れ替える作業。 そんな「給水」の方法は2タイプあって、通常はタンクを外して水道に持っていき、水を満タンにしたらまた加湿器にセットするタイプが基本です。 もうひとつは加湿器の上からダイレクトに給水できるタイプで、これができる加湿器が手間が少ない!と言うことで人気だったり、メーカーもそれを大きな売りにしています。 自宅では両方のタイプを使ってるんですが、2シーズン使ってみて、もしかして上から給水って、別に手間は少なくないんじゃ?

今年はピアノにとってどんな夏だった?

言うまでも無いですが、今年の夏はとにかく暑かったですね。 10月に入ってやっと秋らしい気候になったので、今年の猛暑はピアノのコンディションにどんな影響があったか、振り返って書き留めておこうかと思います。 明暗が分かれた2023夏結論から言うと、「やっぱり例年よりも狂いが大きいな〜」と言うピアノと、逆に「あれ?今年はいつもより狂ってない...」と言うピアノにはっきり分かれました。 狂いが大きかったピアノは、単純に暑さにやられた感じです。気温が高すぎるとピアノの弦が伸び、全

メーカーを鵜呑みにしない方が良いこともある

お客さまにピアノに適した環境をお伝えするときは「湿度50%を目安にお願いします」と言っています。 実際にはもちろんピッタリである必要はなくて、45%でも、55%でも、年間を通して一定であれば問題ありません。それでも限度はあって、ずっと40%は低すぎですし、ずっと65%では高すぎます。また許容範囲内でも乱高下は良くないので、今日は45%だけど次の日は55%というのもピアノに負担がかかります。 なのでピアノにとっては湿度が「許容範囲内である」かつ「一定である」ことの2つが重要

エアコンから水漏れした話

お客さまからピアノの設置場所のご相談を受けた際に「できればエアコンの真下は避けてください」と言う話をします。 風が当たるのが良くないというのもあるんですが、コワイのがエアコンからの水漏れです。 「ゆうてもそんなトラブルそうそう無いでしょ?」と思われるかもしれませんが、実際にわが家ではエアコンから水漏れしたことがあるんです… さいわいピアノの部屋ではなかったのですが、これがもしピアノにかかってたら大変なことになっていました。そもそもエアコンの下には大事なものは置かないほう

除湿機がいらなくなる?新しいピアノ用の乾燥剤を試してみた話

今年のはじめ頃、ピアノ用調湿剤の新製品が発売されました。 長らくピアノの乾燥剤には「B型シリカゲル」が使われてきました。 こちらのSHARPが開発した「TEKIjuN(適潤)」はその3倍の調湿力があると言う素材。発表時にはいろんな湿度管理が必要なものにつかえる夢の素材!と話題になりました。 そして満を持して発売された、ピアノ用に調整されたこちらの商品。 かんたんに言えば…ピアノに入れるだけで除湿機、加湿器が無くても年間をとおして湿度50%に保ってくれるよ!ということの

良い環境の場所ほど気をつけたほうがよいかもしれない

コロナ禍になってからちょうど1年。ピアノにとってもイレギュラーな年でした。 テレワークや外出自粛で在宅時間が増え、冷暖房の使用時間が変わったことの影響を受けたピアノが多かったです。 同じ部屋の2019年の温湿度のグラフと2020年のグラフを比べると形が相当違うんじゃないでしょうか。特にマンションは他の世帯の影響も受けるのでいつもより狂いや故障が多めでした。 意外と、普段は加湿器や除湿機を使わなくてもちょうど良い湿度のいわゆるナチュラルボーン良環境(勝手に呼んでる)のお宅

ピアノの弱さをなんとかして伝えたい

ピアノは弱くて、めちゃくちゃ繊細なんです。ピアノもバイオリンも所有されてるお客様に「バイオリンは見た目的にも環境の変化に弱そうなのは感じてましたが、ピアノがそうだとは知りませんでした」と言われ、ハッとしました。 確かにこんなに頑丈に見えるピアノがちょっとした環境の変化に弱いなんて、誰が信じるのか... でも適切に管理してもらうには、生肉に勝るとも劣らないピアノの真の繊細さを所有者のみなさんに正確に知ってもらわないといけない。納得感がないと手間をかけて管理しようなんて気には

ピアノの湿度管理をしないのはもったいない

4月に入ってから天気の変化が大きく、湿度も乱高下しているのでピアノの故障のご連絡がいつ入るかビクビクしながら過ごしています。すぐに直しに伺えるスケジュールであれば良いんですがね...保守点検という性質の仕事のつらいところです。 調律先でも、ブログやホームページでも「ピアノの湿度の管理」を口うるさいほどにお伝えしています。 湿度管理をしないのはもったいないというのが根底にあるんですよね。 限られたメンテナンス時間とご予算の中でする作業が、故障を直すことに費やされてしまうのが

ピアノにエアコンでの除湿はありかなしか?

6月に入り湿度の高い季節になりました。ちょっと前まで乾燥で困っていたのが嘘のようです。年々季節の変わり方がほんと急になってますね。 よく「ピアノの湿気対策はエアコンでも良いですか?」と聞かれることがあるので考えていきたいと思います。 エアコンの除湿(ドライ)には2種類の方式があります・ふつうの除湿 ・再熱除湿 個室用の小さなエアコンにはふつうの除湿だけのことが多く、大きなエアコンには両方ついている場合があります。 ふつうの除湿とはふつうの除湿では、湿った部屋の空気を

100台に1台のピアノにはネズミが住んでいるかも

ピアノの中にネズミが住み着いてしまうことがあります。 どこから入るの?と思いますが、アップライトの場合はだいたいペダルの隙間から入ることが多いようで、そこから登って行って鍵盤の上や下を住処にしてしまいます。グランドピアノはわりとオープンなので響板と弦の隙間から入り放題ですね。 ピアノの中は暗くて狭い、巣材にするのに良いものがたくさんある、というネズミにとっては居心地が良い空間のようです。巣を作るために木やハンマーやダンパー、鍵盤のクッションなどのフェルト類が食われてしまう

わが家の加湿器3台つかい分け

仕事がら湿度管理には気をつかっていて、いろいろ試した結果、自宅では3台のちがうモデルの加湿器を置いています。 いちばん湿度管理が重要なピアノの部屋6畳の個室でダイニチの気化式加湿器を使っています。 ピアノの部屋の加湿器に求める条件は3つ。 ・湿度の設定ができる ・静か ・電気代が安い 24時間湿度を一定に保ちたいので、湿度の設定が数値でできることと電気代が安いことは必須条件です。あとはやっぱりピアノを弾くのに運転音がうるさいと気になってしまうので静粛性も大事。この部屋