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ピアノに消費期限は無いけれど

「ピアノって何年くらい持つものなんですか?」

結構聞かれます。

調律師としては「ピアノに寿命は無いのでその気になればいつまでも使えますよ」と答えたくなりますし、それはある意味真実です。でもこれってきっと、聞きたいこととはちょっと違いますよね。

「車って10万キロがひと区切り」「さすがにスマホは5年つかうのは厳しい」みたいな、だいたいのレベルの話をしたいと思います。

それで言うと、ピアノのひと区切りは50年です。

工業製品としての寿命

このくらい経つと、そのピアノのベストなパフォーマンスを発揮できなくなってくる、賞味期限を意識するタイミングになります。

ピーク時の音の張りが無くなり、調整や修理ではごまかせないタッチのバラツキ、一部の音が狂いやすくなったり、工業製品としての安定性が無くなってきます。

でも反対に部品の馴染みによって個性や枯れた良さがでてきます。若いピアノには無い魅力です。

このあたりはスポーツ選手の現役引退後の活動とか、アクション俳優の若い頃とは違った演技とか、ミュージシャンのライブの曲数が少なくなる分1曲の深みが増すとか、そんな活躍のステージが変わってくる現象のように捉えています。

楽器としての寿命

ピアノは新しくても古くてもあまり見た目が変わらないので気付きづらいですが、年代によってそう言った適したステージがあります。

そして寿命が来たと言えるのはピアノがその使用用途に適さなくなったときです。

極端な話、音がいくつも出なくても、調律が合わなくても、その用途に適していればまだまだ使えるピアノということになります。逆に言えば、用途に適さなければどんなに新しいピアノでもその人にとっては寿命と言えます。

もちろん現実的な金銭面も重要ですし、思い出や境遇など、そのピアノに関わるストーリーも無視できません。いろいろな要素が絡み合って、ピアノの寿命は人それぞれです。

工業製品である以上、どこかで必ず線引きがありますが、楽器としての引導を渡すのは使っている方ご本人なんです。

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