ピアノの歴史は意外と浅い
「ピアノって誰が作ったんですか?」
調律が終わった後、聞かれました。
「1700年頃にイタリアのクリストフォリって人が作ったのがピアノの原型です」と答えると、
「ピアノって意外とまだ歴史浅いんですね!」
そうなんです
太古の昔から人類と共に...と言う感じでもなく、まだ300年ちょっとしか経ってないんです。日本の歴史では徳川吉宗の時代(いや、そう考えるとけっこう昔な気も…?)
ピアノはオルガン、バイオリン、トランペット、各種打楽器などと比べて新米の楽器です。
ちなみに当時のピアノの正式名称は「クラヴィチェンバロ・コル・ピアノ・エ・フォルテ」
イタリア語で「強い音も弱い音もいけるチェンバロ」と言うなんともそのままなネーミング。その名の通り、当時メジャーだったチェンバロと言う楽器(強弱がほとんどつけられない)から派生した楽器という位置づけでした。
ただ、ピアノの原型と言っても現代のピアノとは色々な面で全然違うので、“あくまで遡るのならば”と言う注釈つきです。
そんな初期のピアノは「フォルテピアノ」と分類されています。そして「モダンピアノ」と括られる今のピアノに直接つながる形になったのは1850年以降。まだ170年くらいの歴史です。
これまでのピアノとこれからのピアノ
そんなに長くないモダンピアノの歴史の中でも、ピアノの中身は変わってきました。一般的によく見るここ50年の範囲で比べても結構違います。寸法や構造の部分はトレンドもあるので一方通行の変化ではありませんが、材料の変化の面では「順当に進化してきた」と言って良いと思います。
大きな変化は、各部品が木材や象牙などの天然素材から金属やプラスチックへ置き換えられてきたことです…と聞くとなんとなく後ろ向きに感じるかもしれませんが、技術革新と共により適材適所にブラッシュアップされたポジティブな変化です。
モダンピアノは今が終着点なのかどうか?と考えることがあります。
いよいよ必要な部分にも木材が使えなくなっていき、これまでとは違ってネガティブな理由で材料が置き換わっていくのかも。
それとも木材の上位互換となる新素材が開発されるのが先か。
さらに過酷になっていくであろう気候に耐えられる抜本的な構造の見直しが必要なのでは。などなど。
どの業界でも職人不足となっている世の中の流れ的に、壊れたら部位ごとに修理するのではなく、周辺を丸ごとガコッと外して新しいユニットをガチャっと取り付けて完了。ピアノもそうなっていきそうです。
そろそろフォルテピアノ、モダンピアノに続く第3世代になっても良いのかもしれません。調律師人生はまだ数十年はある予定なので、いつどこで大きな変革があるかわかりません。
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