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『動物農場』における現代ウクライナとロシアのカリカチュア
ディストピアSFの先駆けと名高い『1984』はあまりにも有名だ。その『1984』を書いたイギリス人ジョージ・オーウェルは、子供にも読めるおとぎ話という形でユートピアがディストピアへと変質する物語を執筆した。その作品が1945年に出版された『動物農場』である。
『動物農場』あらすじ
舞台はジョーンズさんが経営する「荘園農場(マナー・ファーム)」から始まる。その農場で暮らす動物たちは虐げられ、
フィットボクシングと私
昨年のクリスマスに任天堂の家庭用ゲーム機switch(スイッチ)が子供へのプレゼントとして届いて以来、我が家の和室に置かれたテレビ横にはswitchの本体ソフトとリモコンが鎮座している。昼には子供がゲームをするスペースとしての役目のみだったテレビ前だが、子供が寝静まってから私も電源を入れて十五分から二十分程度ゲームをするようになった。そのゲームの名前が「フィットボクシング」である。
まずはゲーム
四歩目の玉座は誰のもの
久しぶりに小説を書きました。フォロワーさんに「かってえスジ肉」と言われました。全部咀嚼して随筆にできるなら小説なんて書いてないのよ(言い訳)
梅雨が逆戻りしたような雨続きの夏の夜、葛西志帆は大学図書館のポストに貸出資料を返却した後、予定より少し遅れて透析センターに向かった。
テレビから一番遠いベッドを選んだが、オリンピック真っ只中だから嫌でも中継のアナウンスは耳に入ってくる。定期的な通院が欠
LOTUS(第4回阿波しらさぎ文学賞落選作)
ここは私の夢、暗くつめたい私の夜。
泥の中で幾多の木片や土器の欠片と一緒に眠りについた私は幾万の日を超えてまた歌う日を夢見るも、泥に塞がれた夜はしっかりと帳をおろし、光が届くことはない。八方塞がりとはこういう事をいうのだろうか、花を咲かせることはおろか芽を出す事も難しい。固い鎧で私自身を守りながら光も射さず空気も届かぬ泥の中で私は再生の日を待ち望んでいた。
その日は突然訪れた。私の上に積み重
BEACONよりCOLD SONG感想とTAB譜について自分用メモ
十年来のクラシックオタクだった人間が平沢進のファンになり馬骨になって初めての新譜発売である。まずはめでたい。基本贔屓にしている指揮者や奏者でもいなければCDを買うという行動はしないので、在命のアーティストのファンになるとはこういうことかと楽しませてもらった。カートに放り込んだものの決済がギリギリになってしまい、続々と入手報告があがっているTLを横目で見つつ、ポストの前を一日に何度も往復したり、家
もっとみる男の子がミニモルカーを飼う話を書きました
「ねえ、パパ。ぼく、自分のモルカーが欲しいんだ」
土曜日の朝、トイザらスから来たDMとバースデイクーポンを持って、どきどきしながら新聞を読んでいたパパに話しかけてみた。パパの読んでいる新聞には『子供用モルカー【ミニモルカー】ついに発売!』と大きく書いてある。
問題は値段だ。誕生日プレゼントの予算としてはおねだりする候補だったゲーム機よりもゼロがひとつ多い。
「ねえ、いいでしょ。ぼく、ちゃんとお
数学者の言葉はいかにして大作曲家の名言と取り違えられたかーーまたはN.チャイコフスキーと数学【追記あり】
もしも数学が美しくなかったら、おそらく数学そのものも生まれてこなかったであろう。人類の最大の天才たちをこの難解な学問に惹きつけるのに、美の他にどんな力が有り得えようか。――ピョートル・チャイコフスキー(1840-1893) 永野裕之『とてつもない数学』
この言葉は2020年に出版された『とてつもない数学』のエピグラフ(巻頭の題句)として、ピョートル・チャイコフスキーの言葉であると引用されている
隣の芝生の芝目を読みながら実りの秋を想う
私が今持っているtwitterアカウントはひとつが育児メインのものでもうひとつが趣味のアカウントである。
育児アカウントに居たころにはバイアスがあって気付かなかったのが「へえ…子供いらないっていう人結構多いんだな」ということである。まあそりゃ育児アカウントだって「子育てしんどい、夫は頼りにならない」という怨嗟に溢れている。娯楽に溢れている世界でわざわざ不自由を選び取る人はいるまい。世間の流れ