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わたしの本棚

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好きな本、本棚にある本を紹介しています。
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わたしの本棚159夜(最終)~船団・散在号

わたしの本棚159夜(最終)~船団・散在号

 船団という俳句のグループが解散して(散在して)2年が経ちました。コロナ禍とあいまって、最後の集いも開かれないまま、時が過ぎました。
 この度、コロナ禍の2年あまりの近況報告のような感じで、1冊の冊子を発行し、集いも開催できました。坪内稔典氏の他22人あまりの楽しいエッセイ、160人弱の参加会員の俳句、ひとり10句掲載です。表紙は、山本真也氏です。

 ☆船団 散在号 船団の会編 創風社出版 非売

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わたしの本棚158夜~「映画宣伝おばちゃん」

わたしの本棚158夜~「映画宣伝おばちゃん」

 男性中心だった映画業界で、松井寛子さん(通称かんこさん)がなしてきた仕事。35年で600本の映画宣伝に関わり、監督、スタッフを励まし、映画のヒットにつなげてきました。今回、映画に係わる書籍を制作・刊行する零号出版が、宣伝という仕事で映画業界を支えている松井寛子さんの本を出版してくれました。厳しい出版業界の不況状況の中、クラウドファンテイングによって。
https://camp-fire.jp/p

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わたしの本棚157夜~「浅草ルンタッタ」

わたしの本棚157夜~「浅草ルンタッタ」

王様は ルンタッタ ルンタッタ
いつも ルンタッタ ルンタッタ タッタラー ハイ!

 リズム感あふれる言い回しが、切なさとともに、読んだあと心に残りました。明治・大正時代の浅草の遊郭を舞台にした人情物語です。まるで舞台か映画を観ているような、映像がはっきりわかる描写力で、時としてお笑いやズッコケ描写もあって、泣き笑いしながら読み進めました。

☆浅草ルンタッタ 劇団ひとり著 幻冬舎 1650円

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わたしの本棚156夜~「シュンペーター」

わたしの本棚156夜~「シュンペーター」

 タイムリーな1冊です。コロナ禍後の世の中を考えるとき、地方のいち主婦にすぎないわたしにも、わかりやすく経済を、閉塞感を打ち壊すイノベーションの考えを解説してくれました。シュンペーターをほとんど知らなかったわたしは、資本主義の先を予言した1883年生まれの彼の言動を、時に詠嘆しながら読み進めました。経済学は、高校生の時の公民、大学の教養課程でほんの少しかじった程度だったので、学び直した感じで、重厚

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わたしの本棚155夜~「谷さやん句集」

わたしの本棚155夜~「谷さやん句集」

 コロナ禍の3年あまりで、幾度も句座をともにし、メールのやりとりをした句友のひとりが著者の谷さやんさんです。船団在籍時は、愛媛と大阪在住ということもあり、あまり会えなかったのですが、この3年、zoom句会などによって、距離を越えて話しあえた句友です。
 さやんさんに逢ったとき、ウオン・カーウイ監督の「恋する惑星」のフェイ・ウオンと雰囲気が似てると勝手に思ったのですが、彼女曰く「髪型だけ」と謙遜され

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わたしの本棚154夜~「リセットの習慣」

わたしの本棚154夜~「リセットの習慣」

 わかりやすい文章で、共感を得る内容で、面白く、さくさく読めました。
なぜ今、リセットが必要なのか。医学の進歩と情報伝達の確実性で、体調をくずす要因を分析しやすくなりました。そんなか、著者の順天堂大学医学部教授である小林弘幸先生は、専門の自律神経の知識から、リセットの重要性を説いてくれています。

☆リセットの習慣 小林弘幸著 日経BP 日本経済新聞出版 800円+税

 自律神経には交感神経と副

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わたしの本棚153夜~「旅をする木」

わたしの本棚153夜~「旅をする木」

とにかくスケールが大きいエッセイでした。アラスカを舞台にして、自然、仕事、仲間、生き方・・・どれもスケールが大きく、哲学的な思考もあって、面白く読みました。上質の珈琲を飲んだときのような心地の良い読後感で、ページをめくるのが惜しくなる、終わってほしくない、ずーっと読んでいたい気持ちになるエッセイ集でした。

☆「旅をする木」 星野道夫著 文藝春秋 1500円+税

 文藝春秋11月号の巻頭エッセイ

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わたしの本棚152夜~「鈴木しづ子100句」

わたしの本棚152夜~「鈴木しづ子100句」

 元船団の会の武馬久仁裕氏よりご恵贈いただきました。ありがとうございます。10年ほど前に、俳人鈴木しづ子氏に関しては、調べて文章を書いたことがあって、その時、自分を投影したような俳句には痛々しさを感じて哀しくなりました。

 町田康先生の著作「私の文学史」(NHK出版新書)のなかに、「おもろい詩の四条件」というのがあります。この捉え方が好きで、詩だけでなく、俳句にもあてはまると思っています。おもろ

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わたしの本棚151夜~「あちらにいる鬼」

わたしの本棚151夜~「あちらにいる鬼」

 11月に廣木隆一監督で映画化されるので、原作を読んでみました。作家井上光晴さんと妻、愛人であった瀬戸内寂聴さんをモデルに長女の井上荒野さんが描いた長編で、どこまでが事実かわからないですが、かなりセキララに描かれています。本の宣伝インタビューで荒野さんが答えていたのですが、「寂聴さんは本当に父を好きだったんだなあ、というのがわかってもらえます」との言葉に同意でした。一人の男性をめぐって、妻と愛人に

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わたしの本棚150夜~「映画を早送りで観る人たち」

わたしの本棚150夜~「映画を早送りで観る人たち」

 日曜日朝8時からのTBS「サンデーモーニング」で、以前、この本が紹介されたとき、女子アナウンサーの方がこう言われました。

 今のZ世代(10代~20代)が1日に受け取る情報量は、江戸時代の人が1年に受け取る情報量に匹敵するそうです。

 ちょっと衝撃な事実でした。情報過多。受信過剰の時代。そんな時代背景から、若者を中心に、2時間の映画を1時間で観たり、つまらないものは倍速視聴、観る前にネタバレ

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わたしの本棚149夜~「夜に星を放つ」

わたしの本棚149夜~「夜に星を放つ」

 芥川賞は文藝春秋で、直木賞はオール読物で、選評を参考にしながら読むのですが、今年は、近所のママ友さんが、「夜に星を放つ」を直木賞発表時に購入して読み終わり、早々に貸してくれました。読書家の彼女からは、「いい話だけど、短編集で、直木賞としては物足りないかな」というメッセージつきでした。

☆「夜に星を放つ」 窪美澄著  文藝春秋 1400円+税

 連作ではなく、独立した5編の短編集です。コロナ禍

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わたしの本棚148夜~「しろくまのパンツ」

わたしの本棚148夜~「しろくまのパンツ」

 22日に、NHK朝イチで紹介され、友人がフェイスブックで絶賛していたツぺラツぺラさんの絵本です。絵本といって侮るなかれ、その発想は面白く、大人でも楽しめます。しろくまさん、パンツがなくなりました。どんなパンツをはいていたか忘れたしろくまさん、ねずみさんと一緒に、パンツを捜しにでかけます。いろんな動物たちのいろんなパンツが紹介され、そのうち、今日は新しいパンツをはいていたことを思いだし・・・。絵が

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わたしの本棚147夜~「酔いどれ」

わたしの本棚147夜~「酔いどれ」

 幻創刊45周年を記念して、幻主宰の西谷剛周氏の第3句集が刊行されました。記念DVDと御恵贈いただき、恐縮です。おめでとうございます。      

 あとがきによると、不謹慎だと思われる懸念はあるが、今回の句集の中に酒の俳句が20句以上もあったから、「酔いどれ」という句集名にしたそうです。句会のあとの一杯が好きという剛周氏。定例句会後の直会が幻の原動力となっているそうですが、45周年を機に、酒の

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わたしの本棚146夜~「天上の花」

わたしの本棚146夜~「天上の花」

 今年の冬、片嶋一貴監督で映画化されることを知って、原作を読んでみました。映画は、三好達治を主人公とし、戦争の時代に翻弄され、詩と愛に葛藤し、懸命に生きた人々を描く文芸ドラマだそうです。小説の方は、作者萩原葉子さんが、三好達治と父萩原朔太郎との関係、叔母の慶子さんと三好達治のロマンス、慶子さんと別れたあとの16年、達治が独身に戻り、文学を志した葉子さんとの接点などを描いています。第55回芥川賞候補

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