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わたしの本棚157夜~「浅草ルンタッタ」

王様は ルンタッタ ルンタッタ
いつも ルンタッタ ルンタッタ タッタラー ハイ!

 リズム感あふれる言い回しが、切なさとともに、読んだあと心に残りました。明治・大正時代の浅草の遊郭を舞台にした人情物語です。まるで舞台か映画を観ているような、映像がはっきりわかる描写力で、時としてお笑いやズッコケ描写もあって、泣き笑いしながら読み進めました。

☆浅草ルンタッタ 劇団ひとり著 幻冬舎 1650円

 明治・大正時代の浅草六区の置屋「燕屋」に、いろんな傷を持った遊女たちが集います。そんな「燕屋」の前に、ひとりの赤ん坊が捨てられます。お雪と名付けられた赤ん坊は、燕屋の人々に育てられることになります。千代、鈴江、福子・・・そして信夫。雪の楽しみは、芝居小屋に通うこと。浅草オペラの真似をして、踊って・・・。


浅草オペラ・画像はFCさんから借りました。


一気に読みました。読みやすい文章で、魅力的な登場人物がいて、風情ある浅草の置屋の光景、そこで生きる女たちの相関図。そして、起こった事件。関東大震災。逞しく生きる庶民の生活と浅草オペラ。

当時、監獄法第二十二条というものがあって、「災害時に囚人を安全に避難、移送できないと判断した場合は監獄法第二十二条により、囚人を二十四時間に限り解放することができる」には、びっくりしました。この法律を利用して、関東大震災が起こったとき、鈴江は、一計を案じます。
 刑務所内の千代にあわせるために、囚人であった鈴江も刑務所を出て、関東大震災で被災した街の中、雪を捜しだします。信夫やハルミも加わり、鈴江と雪4人で刑務所までの道を歩く描写には、特に心を打たれました。

 描かれているのは、遊女たちの置屋、殺人事件、関東大震災などと決してハッピーな話ではないのですが、小さな親切や思いやり、人情が垣間見れ、何より、ところどころ出てくる、ルンタッタ、浅草オペラ、それを踊る雪の姿に救われます。
 
 当時の浅草オペラは、「オペラと言っても、全て歌で演じる本場のオペラではなく、台詞と歌で構成されたオペレッタにと言われるのもの近い・・・・次第にそれえも曖昧になり、洋楽の楽器を使って歌うもの全てがオペラと言われていた」(p117)そうです。

王様は ルンタッタ ルンタッタ
いつも ルンタッタ ルンタッタ タッタラー ハイ!

 この調べ、雪の踊る姿とともに、読み終わった今も頭をぐるぐる回っています。余韻あふれる、哀しく切ない、それでいてちょっぴり笑える作品で、読後、温かい元気をもらった作品です。

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