有言実行タイプのヒーローは、何を考えているのか？｜【EPISODE8：射手】「仮面ライダークウガ」に学ぶ（3）

※引き続き、「仮面ライダークウガ」の【EPISODE8：射手】を分析します。本記事の前に、以下の記事をご覧になることをお勧めします。

【ポイント⑥】有言実行タイプのヒーローは、何を考えているのか？

＜1＞

実加が行方不明になり、さらに自殺をほのめかす電話があった後に、こんなシーンがあります。

・Step 1：考古学研究室は重苦しい雰囲気に包まれている

・Step 2：しばらくして、ふいに雄介が駆け込んできた。桜子、ジャン、そして倫子（実加の母）は「何事か！？」と驚く

・Step 3：雄介は倫子に向かって「彼女、本気で自殺なんかするような子じゃないですよね？」「大丈夫！絶対見つかりますから！」。そしてすぐまた出ていった

・Step 4：残された3人はポカンとする

＜2＞

このシーン、どう思われます？

初めてみた時、私はちょっと引きました。

だって、倫子はいま「娘がいなくなってしまった！まさか自殺！？」「夫に続いて娘まで……嗚呼、私はどうすればいいの！？」と気が狂わんばかりに心配しているわけですよ。

そんな彼女に何1つ根拠を示すこともなく、「大丈夫！絶対見つかりますから！」って……いやいやいや！あまりにも無神経だろ！

＜3＞

では、なぜ雄介はこんなことを言ったのでしょうか？

アレコレ考えてみたのですが……思えば、雄介は＜有言実行＞タイプのキャラなんですよね。

一番象徴的なのは、EPISODE2の以下の場面でしょう。

・1：雄介がコウモリ怪人と戦い、苦戦する

・2：雄介は「このままでは勝てない！よし、俺は命を賭けて戦うぞ！」と覚悟を固める

・3：雄介はその覚悟を一条の前で語る

・4：雄介が初めて自発的にクウガに変身してコウモリ怪人と戦闘。そして勝利する

そう、雄介は【宣言することなく行動する = 不言実行】タイプのキャラではありません。また、【行動した後で宣言する】というタイプでもない。

彼は【宣言した後で行動する = 有言実行】タイプのヒーローなのです。

だから今回も、

・1：捜索を開始する前に、

・2：「大丈夫！絶対見つかりますから！」と宣言した

……のでしょう。

＜4＞

ところで、雄介のような＜有言実行タイプの人＞は、なぜ行動する前にわざわざ宣言するのでしょうか？

様々な理由が考えられますが、例えば……

▶ 仮説1：「宣言してしまった以上やるしかない！」と自分を追い込むため

「退路を断つ」という発想ですね。

▶ 仮説2：「言霊」を信じているから

「言霊（ことだま）」という考え方があります。「言葉には魂が宿っており、いいことを言えばいいことが、不吉なことを言えば不吉なことが起こる」というものですね。

言霊 - Wikipedia

▶ 仮説3：宣言することで、周囲の協力を得やすくなるから

「俺は〇〇をするぞ！」と宣言することで、「じつは私も関心があります」「よし、協力は惜しまないぞ」「□□と聞いたよ」などと仲間や情報、資金が集まりやすくなるというのは、広く知られた現象です。これを期待して、行動する前に宣言するという人もいるでしょう。

＜5＞

雄介がいずれに当てはまるのか作中では明言されていませんが、しかし彼の性格からして、おそらくは【仮説1：「宣言してしまった以上やるしかない！」と自分を追い込むため】でしょう。

つまり……雄介はヘラヘラした男。一見すると頼りなく見える。そんな彼が根拠を示すこともなく「大丈夫！絶対見つかりますから！」と宣言したわけですからね。

「嗚呼、このバカ！なんと無責任なことを言うのか！」と呆れた人も少なくないでしょう。

が、しかし！実際には、「無責任」だなんてとんでもいない。雄介は「もうやるしかない！」というところまで自らを追い込み、120％の力を発揮しようとして、「大丈夫！絶対見つかりますから！」と宣言したのです。

＜6＞

じつは誰よりも強い責任感を持ってことにあたっているのに、無責任に見えてしまう……。こう考えると、雄介って損な性質ですよねぇ。

【ポイント⑦】雄介は損な性質。しかし、彼は不幸ではない

＜1＞

上記に関連して、もう1つ。

じつは先ほどご紹介したシーン（桜子、ジャン、倫子が思い悩んでいる → 雄介が突然やってくる）の後に、こんな場面があるんですよ。

・Step 1：再び考古学研究室。ジャンと倫子は重苦しい雰囲気に包まれている

・Step 2：一方、桜子はパソコンに向かい、古代文字の解読に精を出している

・Step 3：オロオロするジャンに対して、桜子が言った「大丈夫！五代くんって嘘つかない人だから。絶対大丈夫！」

ご注目いただきたいのは、

・ジャンと倫子：相変わらず重苦しい雰囲気

・桜子：1人だけ重苦しい雰囲気を脱し、前向きに仕事に取り組んでいる

……という点です。

＜2＞

桜子はいま、事件解決（= 怪人の撃滅）に貢献すべく忙しく仕事をしています。

「まだ実加が見つかったわけではないのに、ちょっと冷たいのでは？」という気もしますよね。

しかし、それは誤解です。

桜子は冷たいのではない。彼女は、雄介を信じているのです。

「雄介は、一度宣言したからには必ず成し遂げてくれる！だから、実加の捜索は雄介に一任しよう。そして私は、私にしかできないことを……そう！古代文字の解読を進めるのだ！」というわけですね。

＜3＞

私は先ほど、【じつは誰よりも強い責任感を持ってことにあたっているのに、一見すると無責任に見えてしまう雄介は損な性質だ】と申し上げました。

しかし……どうなんでしょうね。

確かに損ではあるものの、雄介はあまり不幸ではないのかもしれません。なぜなら、雄介の周りにはちゃんと彼の性質を理解してくれている人がいるのですから。

桜子がそうですよね。おそらくは一条だってそうでしょう。たぶん、みのりだって兄のそんな性格を熟知しているはずです。

「周りに自分を理解してくれる人がいる」「信じてくれる人がいる」と感じているからこそ、雄介は辛い戦いに立ち向かえるのかもしれません。

次は【EPISODE9：兄妹】の分析です！！

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（担当：三葉）