「犯罪被害者の遺族」と「捜査関係者」の間の如何ともしがたい溝！！｜【EPISODE7：傷心】「仮面ライダークウガ」に学ぶ（1）

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2021年3月18日 16:59

※引き続き、「仮面ライダークウガ」の【EPISODE7：傷心】を分析します。本記事の前に、以下の記事をご覧になることをお勧めします。

【ポイント③】「犯罪被害者の遺族」と「捜査関係者」の間の溝

＜1＞

本話は、【「犯罪被害者の遺族」と「捜査関係者」の間の溝が露わになるエピソード】です。

本記事では、それがどのような溝なのか、詳しくチェックします。

＜2＞

まず、夏目家の面々についてプロファイルを確認しておきましょう。

・夏目教授：EPISODE1で0号怪人に殺された考古学者。EPISODE2では葬儀が営まれた

・倫子：教授の妻

・実加：教授の娘、14歳。教授の葬儀では涙を流していた

＜3＞

続いて、時間の流れも確認しておきましょう。

・1月29日（土）：夏目教授が0号怪人に殺される

・1月31日（月）：夏目教授の葬儀

・2月24日（木）：本話

つまり本話は、教授が殺されてから1ヵ月弱経過した後のエピソードです。

＜4＞

さて。

本話のファースト・ターニングポイントで、倫子と美加は一条を訪問しました。

この時の2人の気持ちを考えてみましょう。

2人は「捜査のお役に立つのではないかと思って持ってきました」と夏目教授が発掘した金属片を差し出しますが……まぁ、これは半分くらい口実でしょう。だって、金属片を渡すだけなら宅配便で送ればいい。地元の警察に預けたっていい。その方が早いはずです。

2人の本音は、

・疑問や不満：「どうして0号怪人は見つからないの？」「いつになったら事件は解決するの？」「警察は本気で捜査をしているの？」「早く解決してよ！」

・祈り：「お願いだから、『捜査は進んでいます』『この金属片があれば、グッと捜査は進みますよ！』といった希望を持てる言葉を聞かせて！」

……でしょう。

特に実加。

彼女はまだ子どもです。しかも思春期。どうしたって視野狭窄になりがちです。「警察にもいろいろ事情があるのだろう」とはなかなか考えられない。

ゆえに、実加は強い不満や不信感を抱いていると考えられます。

＜5＞

そんな状況で2人は一条のもとを訪れ、さらにその後、桜子の研究室も訪問するわけですが……嗚呼！実加は（そしておそらくは倫子も）、一条や桜子の態度に失望します。

何しろ……

・一条の態度：倫子や実加と話している間も、不審な遺体が見つかったとかで終始そわそわ（私たちの話よりそちらの方に関心があるってわけ！？）。そして金属片を預かることもなく、「専門家に見てもらうといい」と言って桜子の研究室の住所を伝える。

・警官の態度：一条が倫子や実加と話しているところにやってきて、「早く切り上げて事件現場へ向かってください！」と催促。

・桜子、雄介の態度：「この金属片は捜査に役立ちますよね？」と訊かれても、何も答えられない。曖昧な表情を浮かべるのみ。

・ジャンの態度：金属片に対して「素晴らしい研究対象です！ワクワクしますよ！」と陽気にコメントする。

いかがでしょうか？

こうして見ると……実加が「ないがしろにされている！」と感じ、ショックを受け、「どうして皆、そんな風なの！？お父さんは死んだのに！」と叫ぶのも無理ありませんよね。

＜6＞

しかし、ですよ。

一条や桜子は冷たい人間ではない。というか、彼らは人一倍善人です。

では、そんな彼らがなぜ上述の態度を取ったのか？その理由を見てみましょう。

・「一条の態度」の理由：一条は終始そわそわしていたわけですが、これは致し方がないでしょう。だって、不審な遺体が見つかった。つまりは、新たな怪人が出現したかもしれないのです。どうしたって気になる。また、彼が金属片を桜子の研究室に持っていくよう伝えたのは、自分が預かるよりもその方が速いから。他意はないでしょう。

・「警官の態度」の理由：「いままさに怪人が出現したかもしれぬ」という状況です。一刻も早く現場へ向かうよう一条を急かすのは、当然のことですよね。

・「桜子、雄介の態度」の理由：「この金属片は捜査に役立ちますよね？」と訊かれた時に何も答えられなかったのは、2人が遺跡発掘の専門家ではないから。これはどうしようもありません。

・「ジャンの態度」の理由：彼が軽口を叩いたのは、事情を知らなかったからです（倫子と実加が夏目教授の遺族だということすら知らなかった様子）。ジャンを責めるのはお門違いでしょう。

さらに一条を擁護するなら……

・擁護1：その日の朝、一条は、夏目教授が殺された時のビデオを見返していました。どうやら定期的に見返しているようです。何か見落としがないか何度も確認しているのでしょう。つまり、一条は0号怪人を捕まえる気満々。

・擁護2：ビデオを見返す以外にも、一条は射撃訓練に精を出すなど怪人撃滅に向けて全力を尽くしています。

・擁護3：じつは倫子と実加が訪ねてきたのと時を同じくして、一条に「不審な遺体が見つかった。怪人の仕業かもしれぬ。至急現場へ向かえ」という指示が下りました。しかし一条は、倫子と実加の気持ちを慮って2人との面会を優先しています。

＜7＞

ここまで申し上げてきたことをまとめると……

・1：実加（や倫子）が、不満・不信感を抱くのもわかる。何しろ彼らは愛する家族を亡くしているのだから、そりゃ感情的になるでしょう。

・2：しかし同時に、一条や桜子に落ち度があったとも思えない。彼らにはそれぞれ事情があるし、また怪人撃滅に向けて奮闘しているのですから。

つまり、どちらかが悪いという話ではない。それぞれの言い分はよくわかる。こういうのを【「犯罪被害者の遺族」と「その他の人々（捜査関係者ら）」の間の如何ともしがたい溝】っていうんでしょうね。