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覚悟を決めろ!「皆の笑顔のためなら、俺は悪にでもなる」と!!|【EPISODE2:変身】「仮面ライダークウガ」に学ぶ(1)

※引き続き、「仮面ライダークウガ」の【EPISODE2:変身】を分析します。本記事の前に、以下の記事をご覧になることをお勧めします。


【ポイント③】雄介が<覚悟>を決めるまでのプロセス


<1>

本話は、【主人公・雄介が「俺はやるぞ!正義のためなら暴力を振るうぞ!」と覚悟を決めるエピソード】

雄介が覚悟を決めるまでのプロセスを整理してみましょう。


<2>

▶ Step0(前話の第3幕):正当防衛的な戦い

・雄介はクモ怪人に殺されかけ、無我夢中でクウガに変身しました。<受け身でパッシヴ、正当防衛的な戦い>であり、そこに「俺は皆を守るために戦うぞ!」という覚悟や決意はありませんでした


▶ Step1(第1幕~第2幕前半):葛藤を抱く

・クモ怪人との戦いから半日……。

・雄介は善人です。ゆえに人びとを救いたい。しかし、たとえ相手が怪人といえども暴力を振るうことには抵抗がある。つまり雄介は、「人びとを救いたい。しかし暴力は嫌だ」という葛藤を抱えているのです。

・とはいえ、この時点では雄介は比較的のほほんとして見える。「まぁ、何とかなるだろ」くらいに思っているのでしょう。


▶ Step2(ミッドポイント、第2幕後半):葛藤が深化する

・雄介は、白い戦士に変身してコウモリ怪人と戦います。しかし敗北。そして一条から叱咤されます「これは市民を守るという警察の仕事だ。中途半端に出しゃばるのは止せ!」。

・この「敗北」と「一条からの叱咤」をきっかけに、雄介は悟ります「そうか、俺には覚悟が足りなかったんだ。このままではダメだ!戦う覚悟を決めなければ皆を守れない!」。が、しかし。やはり暴力を振るうことには抵抗がある。かくして雄介の葛藤が深まります。


▶ Step3(第2幕後半):戦う覚悟を決める

・雄介は、遺族(怪人に父を殺された少女)の涙を目撃。これをきっかけに、ついに戦う覚悟を決めます


▶ Step4(セカンドターニング・ポイント):覚悟を言語化する

・雄介が一条の前で覚悟を語ります「こんな奴らのために、これ以上誰かの涙は見たくない。皆に笑顔でいてほしいんです。だから……見ていてください、俺の変身!」

・そして雄介は不完全形態の「白い戦士」ではなく、「赤い戦士」に変身しました。


▶ Step5(第3幕):戦闘、勝利

・雄介は、コウモリ怪人とクモ怪人を相手に奮戦します。コウモリ怪人は途中で逃走。

・そしてラスト、雄介は鋭いキックでクモ怪人を仕留めるに至ります。やったぜ、雄介!


▶ Step6(第3幕):悲壮感の漂うエンディング

・クモ怪人が爆発四散した後、雄介は己の足を見つめます。そう、クモ怪人を死に追いやった足です。

・クウガのマスクを付けているがゆえに、雄介の表情は読み取れません。しかし、おそらくは悲痛な表情を浮かべているのでしょう。「戦う覚悟を決めた」とはいえ、雄介は本質的には心優しい青年です。やはり暴力には抵抗がある。彼はいま、「嗚呼、俺は生命を奪ったんだな」と噛みしめているのでしょう。


<3>

以上をまとめると

・Step0(前話の第3幕:正当防衛的な戦い

・Step1(第1幕~第2幕前半):葛藤を抱く

・Step2(ミッドポイント、第2幕後半):葛藤が深化する

・Step3(第2幕後半):戦う覚悟を決める

・Step4(セカンドターニング・ポイント):覚悟を言語化する

・Step5(第3幕):戦闘、勝利

・Step6(第3幕):悲壮感の漂うエンディング


つまり、

・1【「崇高なる目的(皆に笑顔でいてほしい!)」を達成するためには、「悪(暴力!)」を為さねばならぬ】という残酷な真実に直面する

・2:葛藤する

・3:犠牲者の涙をきっかけに覚悟を決め、悪(暴力!)を為す

……というわけですね。


【ポイント④】雄介はどのような<覚悟>を決めたのか?


<1>

上述の通り、雄介は本話で<覚悟>を決めます

ここでは、彼がどのような覚悟を決めたのかもう少し詳しく考えてみましょう。


<2>

雄介の覚悟……一言で言えば、それは<悪を為す覚悟>でしょう。


中島みゆきさんの傑作「空と君のあいだに」に

君が笑ってくれるなら/僕は悪にでもなる

……という歌詞がありますが、まさにこれですね。


<3>

雄介は心優しい善人です。相手が怪人だろうと、できれば暴力なぞ振るいたくはない。ましてや殺すなぞ!

しかし、雄介は皆のために悪になる覚悟を決めます。


【「皆の笑顔」という<善なる目的>を達成するために、「異種族への暴力・殺害」という<悪たる手段>を用いる】というこのやるせなさを、彼は引き受けたのです。


<4>

我々の生きるこの現実世界に即して言えば、「戦争を止めるために核兵器を使う」とか「治安を維持するために死刑を執行する」とか、要するにそういうことです。

雄介は核ミサイル発射ボタンを押す係、死刑執行ボタンを押す係を自ら引き受けたのです……皆の笑顔のために!


【ポイント⑤】雄介はなぜ燃え盛る教会で<覚悟>を語ったのか?


<1>

上述の通り、雄介は一条の前で覚悟を語ります「こんな奴らのために、これ以上誰かの涙は見たくない。皆に笑顔でいてほしいんです。だから……見ていてください、俺の変身!」。

で、この場面、燃え盛る教会が舞台なんですよ。


なぜ燃え盛る教会なのか?

雄介が覚悟を語るという重要な場面です。何か意味があるに違いありません。


<2>

ということでいろいろ考えてみたのですが……ほら、教会って「聖職者に罪を告白し、神から赦しと和解を得る場」じゃないですか。

※補足:本話に登場する教会は「サン=マルコ教会」。カソリック教会と思われる。


その教会が燃える!

つまりこれ、神に赦してもらえなくても構わない。地獄に堕ちる覚悟はできている。……俺はいまから、皆の笑顔のために悪を為すぞ!」という雄介の覚悟を象徴しているんだと思うんですよね。


嗚呼、なんという覚悟!


【ポイント⑥】雄介はなぜ戦いながら変身するのか?


<1>

前話、そして本話では、雄介は戦いながらクウガに変身します。

【変身して → 戦う】のではない。【敵を殴ったり蹴ったりしている内に → 徐々に変身していく】のです。


<2>

これ、結構興味深いことだと思うんですよね。

だって普通、正義の味方はヒーローに変身してから敵の前に姿を現すもの。ところが雄介は違う。

一体なぜか?


残念ながら、作中では答えは明かされていません。

しかし私は、

・1:制作者は、【クウガ = (正義のために)悪を為す者】と印象づけたかった

・2:だから、暴力(= 悪!)を振るう中で徐々に変身するという演出を採用した

……のだと感じました。


皆さんはどう思われますか?


【ポイント⑦】ラストシーンの意味


<1>

上述の通り、雄介は覚悟を決めそれを一条に語り、そして変身。敵を打ち倒します。

で、その後。


・Step 1:戦いの後、一条は重傷を負い意識を失っている。雄介は彼に肩を貸してやる

・Step 2:やがて一条が目を覚ます。雄介は爽やかな笑顔で「おはよ、一条さん」

・Step 3:一条は自分が雄介にもたれるようにして眠っていたことを知り、「……一生の不覚だ」


以上が、本話のラストシーンです。


<2>

このシーン、なかなかどうしてアレですよね。

アレというのはつまり……「一条さん」だと!?雄介よ、お前はさっきまで「刑事さん」って呼んでたじゃないか!それがここにきて「一条さん」って……うわー!!

そして一条よ!そのツンデレっぽい物言いは何だ!?キャー!


……とまぁ、BLの波動を感じざるを得ない


<3>

しかしですね、このシーンは「BLの波動♥」だけでは語り得ぬものがあると思うんですよ。

重要なのは、【雄介が「悪にでもなる!」と悲壮な覚悟を決め、そして怪人を殺してからまだ大して時間が経っていない】ということです。

それなのに彼は笑っている……。


ここで私たちは、EPIDODE1の雄介のセリフを思い出す必要があります。そう、「俺さ、辛い時笑顔でいられる男ってかっこいいなって思ってる」

つまり……雄介は、内心グチャグチャなのに無理して笑っているわけですよ!本当は泣きたいのに、それをグッと堪えて笑顔を作っているんですよ!

嗚呼、健気!

何といい奴なのか!



続きはこちら!!


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