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一条は、いつどこで雄介をパートナーと認めたのか?|【EPISODE4:疾走】「仮面ライダークウガ」に学ぶ(1)

※引き続き、「仮面ライダークウガ」の【EPISODE4:疾走】を分析します。本記事の前に、以下の記事をご覧になることをお勧めします。


【ポイント③】一条は、いつどこで雄介をパートナーと認めたのか?


<1>

本話は、【一条が雄介をパートナーと認め、タッグを組む】というエピソード。

ここでは、一条の心境を整理してみましょう。


<2>

そもそも、一条は雄介にどのような感情を抱いていたのでしょうか?

ざっくりまとめると、以下の4つに集約できると思うんですよね。


・【1】心配:一条は1人の警官として、市民(雄介)の身を案じていた。「お前、いずれ大けがをするぞ!怪人にはもう関わるな!」という具合です。

【2】抵抗感:一条は、雄介(というかクウガ)が怪人に伍する力を持っていることを知っています。が、しかし。雄介は民間人にすぎない。一条は「警官 = 市民の安全や秩序を守るプロフェッショナル」として、民間人を戦いに巻き込むことに抵抗がある。

【3】怒り:一条は、雄介がどこまで本気かわからない。ゆえに「好奇心だか何だか知らぬが、軽率に首を突っ込んでくるな!」と思っている。

【4】疑念と恐怖:上述の通り、一条は雄介(というかクウガ)が恐るべき力を持っていると知っている。だからこそ「雄介は本当に味方なのか?いつか人類に牙を剥く存在になるのではないか?」という疑念を抱き、恐怖心を持っていると推測される。


<3>

【心配/抵抗感/怒り/疑念と恐怖】……これらがストッパーとなり、一条はこれまで雄介を戦いから遠ざけようとしていました

では、本話でこれらが解消されたのでしょうか?解消されたからこそ、一条は雄介をパートナーと認めたのでしょうか?


で、ですね。

ここからが本話の面白いところなのですが、たぶん、【心配/抵抗感/疑念と恐怖】はまったく解消されていないんですよ。

解消されたのは【怒り】だけ。EPISODE2のセカンドターニング・ポイントをもって、「雄介が軽率に首を突っ込んでいるのではない」と一条は理解できたはずです。ゆえにいま、一条は雄介に【怒り】を感じてはいない。


しかし、それ以外の3つ、すなわち【心配/抵抗感/疑念と恐怖】が解消されるような出来事は何も起きていない

つまり、一条はいまも雄介の身を案じているし(心配)、民間人を戦いに巻き込むことには抵抗があるし(抵抗感)、いつか雄介が人類の敵になるのではないか、雄介自身の意思は別としてクウガなるものが人類に仇なすのではないかと感じている(疑念と恐怖)。


……それなのに!

それなのに、一条は雄介をパートナーと認めます。

一体なぜか?


<4>

一条が雄介を認めるまでの出来事を改めて確認しておきましょう。


▶ Step 1(第1幕)

EPISODE2の戦いで、一条は重傷を負いました。いまも完治には至っていません。痛みもある。部下(亀井)は一条の体を心配しています。

ところが、一条は怪人を撃滅すべく無理を押して上京します。


▶ Step 2(第2幕前半)

桜子が一条に言う「五代くんが変身しようとしたら止めてあげてください。彼、いつも突っ走っちゃうんですよ」。一条は複雑な表情を浮かべます。

おそらくこのシーンで、一条は「自分と雄介が似ている」と感じ始めたはずです。


▶ Step 3(ミッドポイント)

一条が雄介を叱咤する「君は自分をもっと大事にするんだ」。すると雄介は「一条さんだって同じでしょ?」。一条はハッとする。

ここですよ、ここ!

ここで一条は「自分と雄介が似ている」と確信したのでしょう。


▶ Step 4(第2幕後半)

一条が手紙を見つめる。EPISODE3で雄介が書いた手紙です。そこには「中途半端はしません」と書かれている。


▶ Step 5(第2幕後半)

一方その頃、街ではヒョウ怪人が暴れ回っていました。いまもどんどん犠牲者が増えている……!

一条は気が気ではありません。

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で、この後一条は腹をくくります

そして雄介に最新型白バイの試作機「トライチェイサー2000」を託します。


<5>

さて、ここでご注目いただきたいのは以下の2つです。

・注目1:「自分と雄介が似ている」と一条が確信する。かくして彼は気づいた「あっ、ダメだ!こいつは俺にそっくりだ。ってことは、いくら叱咤しても説教しても止めることはできない。こいつ、怪人と戦い続けるぞ」。

・注目2:一条は気が気ではない。いまもどんどん犠牲者が増えている!


さらに上述の通り……

・注目3:一条は知っている。怪人を止められるのは雄介(というかクウガ)だけだと。


そして以上の結果として……

・結果:一条は腹をくくった「ええい、仕方がない!こいつとタッグを組むしかない!」


つまり、一条は雄介を前向きに認めたわけではありません

上述の通り、いまもって【心配/抵抗感/疑念と恐怖】は消えていない。

「開き直り」というか「諦観の境地」というか……。

【「決してベストではない。しかし、現状取り得る選択肢の中で最良のものを選び、少しでもマシな結果を求める」という大人な決断】を一条は下したのだと言えるでしょう。



続きはこちら!!


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(担当:三葉)

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