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雄介は、疲労困憊している桜子をなぜ気遣えなかったのか?|【EPISODE3:東京】「仮面ライダークウガ」に学ぶ

※引き続き、「仮面ライダークウガ」の【EPISODE3:東京】を分析します。本記事の前に、以下の記事をご覧になることをお勧めします。


【ポイント③】一条は、なぜ手紙を握り潰したのか?


<1>

まずは、本話の冒頭シーンを振り返ってみましょう。

・0(前話:クモ怪人及びコウモリ怪人との戦いで、一条が負傷する。

・1:一条が目を覚ますと、そこは病院。雄介が運んでくれたのだ。

・2:一条が、ベッドサイドの置き手紙に気づく。手紙には「一条さんへ。大事な約束があるので一度東京へ帰ります。でも、また夜には戻ります。俺、中途半端はしません。きちんと関わりますから。五代雄介」。

・3:一条は厳しい表情になり、手紙を握り潰した……


<2>

はてさて、一条はなぜ手紙を握り潰したのでしょうか?

作中では理由は明言されていません。しかし、「おそらくこうだろう」と推測することは可能です。


▶ Step1

そもそも……一条は、雄介が怪人と戦うことに反対していました。

・【反対する理由1】怒り:一条は真剣。それゆえに「好奇心だか何だか知らぬが、軽率に首を突っ込んでくるな!」と思っている

・【反対する理由2】心配:1人の警官として、市民(雄介)の身を案じている


▶ Step2

その後、雄介は一条の前で<覚悟>を語り、クウガに変身した。これにより、「雄介が軽率に首を突っ込んでいる」という誤解は解けました

一方、【心配】の方は継続します。一条は、引き続1人の警官として雄介の身を案じている。警官として雄介を守らねばと思っている


▶ Step3

ところが、ですよ。クモ怪人及びコウモリ怪人との戦い(前話の第3幕)では……

・一条:ショットガンを持って怪人に挑むものの、まったく歯が立たない

・雄介:クウガに変身して奮戦。一条を助け、そしてクモ怪人を打ち倒した


一条は激しいショックを受けたに違いありません。嗚呼、俺は役立たずだ!警官なのに市民を守れず、あまつさえ助けてもらうとは!チクショウ!何てこった!


<3>

つまり一条が手紙を握り潰したのは、「手紙を読んでいる内に強い自責の念にとらわれ、手に力が入ったから」でしょう。


【ポイント④】雄介は、疲労困憊している桜子をなぜ気遣えなかったのか?


<1>

本話の第1幕にこんなシーンがあります。

・1:雄介と桜子は、一度東京に戻ることにする

・2:東京駅に到着。桜子はすっかり疲労困憊している

・3:ところが、雄介は平然と「昼メシどうする?学食でいっか」「まだ時間あるから、ベルトの古代文字とか解読してほしかったんだけどなぁ」

・4:桜子はうんざりした感じで「学校なんて行かないよ。今日はもう帰りたい」「ごめん、勘弁して」

・5:雄介は残念そうに笑う「そっかぁ。そうだね」


<2>

このシーン、違和感を覚えた方は少なくないと思います

「いやいやいやいや!桜子はどう見えてもヘトヘトじゃん!急に長野に呼び出され、出向き、そこで訳のわからぬ事件に巻き込まれ、友人(雄介)は奇妙な戦士に変身し、恩師(夏目教授)は惨殺され……心身ともにグッタリなんだよ!だのに、どうして気遣ってあげないの!?」。


そう、雄介があまりにも無神経な奴に見えるのです。


<3>

このシーンは一体何なのか?

単に「雄介は無神経な野郎なのだ」と解釈してしまってもいいのですが……どうも腑に落ちない。

制作者の皆さんは、なぜこんなシーンを撮ったのか?


で、いろいろ考えてみたのですが、これ、【雄介の覚悟が周囲の人々を次第に不幸にしていく未来】を暗示しているのではないでしょうか?


<4>

雄介のように「大きな目標を掲げ、そこに向かって突き進む人」が周囲の人を不幸にしてしまうことって、決して珍しくありませんよね。


例えば、

・世の中をよりよくすべく奮闘するベンチャー企業の社長

・その裏で家庭は崩壊、部下は疲弊

……とか。


彼らは、基本的には善人です。そして使命感に燃えている。本気で世の中をよりよい場所に変えようとしている。

ところが!

「世の中を変える」という大目標を優先するあまり、それ以外のことを疎かにしてしまう!そしてその結果、嗚呼!周囲の人を不幸にしてしまうのです。


<5>

もしかすると、雄介はこの手の人物なのかもしれません

彼は「人々を笑顔にする」「怪人を撃滅する」という目標を優先するあまり、それ以外のアレコレをどんどん切り捨てていくのではないか?そして周囲の人を不幸にしてしまうのではないか?

……そんな未来を予感させるシーンと言えるでしょう。



続きはこちら!!


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(担当:三葉)

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