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ヒーローも、たまには苦しむ姿を見せた方がいい!!|【EPISODE6:青龍】「仮面ライダークウガ」に学ぶ(2)

※引き続き、「仮面ライダークウガ」の【EPISODE6:青龍】を分析します。本記事の前に、以下の記事をご覧になることをお勧めします。


【ポイント⑤】ヒーローも、たまには苦しむ姿を見せた方がいい!


<1>

本話には、<雄介の悩み・傷つき・苦しむ姿>が描かれています……久々に!


そもそも、雄介は弱みを見せぬキャラです。

何しろ、EPISODE1の初登場シーンの初めてのセリフが「俺さ、辛い時笑顔でいられる男ってかっこいいなって思ってる」ですからね。

いつも気丈にふるまい、どんな辛い時でも虚勢を張る!決して弱音を吐かず、愚痴をこぼさない!<Mr.強がり>と言ってもいいでしょう。


<2>

そんな雄介が初めて弱みを見せたのは、EPISODE2です。

雄介は「人びとを救いたい。しかし、たとえ相手が怪人といえども暴力を振るのは嫌だ」という葛藤を抱え、頭を悩ませました。


しかしその悩みを乗り越えると……EPISODE2の後半以降、雄介は常にニコニコ、というかヘラヘラしています

未知の怪人と死闘を繰り広げているわけですからね。実際には、いろいろと思うことがあるはずです。しかし、雄介は<苦しみ>や<痛み>を一切表には出しません


※補足:なお、雄介の心中を暗示するシーンはいくつかあります。例えば、EPISODE2の【雄介が怪人にキック → 怪人が爆発四散 → 雄介の足がアップになる】というシークエンス。怪人に致命傷を与えた足がズームアップされることで、「雄介は『嗚呼、俺はいま生命を奪ったのだ』と感傷に浸っているのだろう」と推測することができます。


<3>

しかし……本話!

4話ぶりに、雄介の弱みが直接的に描かれました


▶ 弱み1(第1幕)

バッタ怪人に敗北し、病院に担ぎ込まれた雄介。

桜子が顔面蒼白で病院に駆けつけます。すると、雄介はいつも通りヘラヘラ笑っている。そして「明日は朝が早いんだ」と言って病院を出て行ってしまった。

あれ。雄介は軽傷なのでしょうか?いや違う!一条や椿曰く、雄介は重傷。そう、彼は強がっているのです。

……と、ここまではいつもの<Mr.強がり>。

ところがこの後、「雄介が路肩にバイクを止める → うめき声をあげ、1人でじっと痛みを堪える」という場面が挿入されます。


▶ 弱み2(第2幕前半)

病院を無理に退院してから半日後、朝。

雄介は自室でこんこんと眠り続けています

おやっさんが一条に語った言葉をそのまま引用すると、「ほんとよく寝ちゃってるよ。うん。押しても、引いても、叩いても、つねっても、『うわっ』って叫んでもね、耳にフッて息吹きかけてもさ、くすぐっても、鼻毛引っぱっても、耳元で『お客さん、終電ですよ』つっても、もう全然びくともしないんだよ。いやぁ、あいつがこんなの初めてだな」。


<4>

雄介はヒーローです。

ヒーローが日常的に弱音を吐き、愚痴をこぼし、泣き言を並べるようではちょっと困ってしまいますが……しかし!それと同時に、「一切隙を見せぬヒーロー」というのもどうかと思うんですよね。だってそんなヒーロー、共感したり、同情したり、応援したりする気になれませんよね。


私たち鑑賞者の心を動かすのは、「痛みや恐怖を堪えて、人々のために戦うヒーロー」です。

「皆の前では笑顔。しかし、1人になると痛みにうめき声をもらし、恐怖に涙を流す」……私たちは、ヒーローのそんな姿にグッとくる。


つまり、本話のように<ヒーローが悩み・傷つき・苦しむ姿>を要所要所で描写するのが重要と言えるでしょう。


【ポイント⑥】些細な一言にも<痛み>が表現されている


<1>

上述の【ポイント⑤】に関連してもう1つ。

「雄介がバッタ怪人に敗北し、病院に担ぎ込まれた。桜子が顔面蒼白で病院に駆けつける」というシーンがあると上述しました。


このシーンの雄介と桜子の会話に注目してみましょう。

---

桜子が病院にやってきて「五代君……!大丈夫なの?」

雄介はいつも通りヘラヘラ笑って「うん。わざわざ来てくれたのにごめん。じつは俺、明日の朝、店の仕込みが早いんだ」

桜子はちょっと驚いた感じで「いいよ、元気なら」

雄介「ほんとごめんね。一条さんが送ってくれると思うから。じゃあね」

※この後、雄介はサムズアップして病院を出ていく。


<2>

ご注目いただきたいのは、「一条さんが送ってくれると思うから」という雄介のセリフです。


じつはですね、前話(EPISODE5)にこんなシーンがあるんですよ。

---

桜子が雄介に詰め寄る「どうして五代くんが命を賭けて戦うの!?危ないから止めてよ!」

雄介はヘラヘラと「いやぁ。だって俺、クウガだもん」

桜子はカッとして「帰る!」

雄介が慌てる「ちょっ……送るよ!

桜子いい!1人で帰る!

※この後、桜子はすたすたと歩いていってしまう。


<3>

つまり……

前話(EPISODE5):雄介が「送るよ」 → 桜子が拒否

・本話:雄介は「一条さんが送ってくれると思う」と言って去る(自分で送ろうとはしない)


そう!

「本話の雄介は、桜子を送っていくことができぬほど激しいダメージを負っていた。表面的にはいつも通りヘラヘラしているものの、その言動にはダメージの大きさが現れている」というわけですね。



続きはこちら!!


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