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エッセイ・コラム

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2024年4月の記事一覧

一人一人が決断して世の中変わるって話

一人一人が決断して世の中変わるって話

人生は決断の連続であるという意見がある。まったくもってその通りだ。
決断とは「決めて断つ」と書く。要は、何かをすると決めて、他の可能性をその瞬間に捨象する行為が決断なわけだ。

たとえば、今日何を食べるかも決断である。カレーを食べると決めれば、おそらく大概の人はラーメンやかつ丼を食べることをその瞬間は諦めることになる。ほかにも「いまから『いちご100%』を読もう」と決めれば、その瞬間は「めぞん一刻

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「エアコンが効いているところでだらだらしていればお金がもらえる仕事」で満足できるのか

「エアコンが効いているところでだらだらしていればお金がもらえる仕事」で満足できるのか

中学生のころにあるおじさんが、学校でキャリア教育に関する講演をしてくれたことがあった。
そのおじさんは「キシさん」という人で、もったりとした不思議な話し方をするおじさんだった。
講演後にはその人の物まねが一瞬流行するくらい妙な話し方ではあったのだが、肝心かなめのキシさんが一体何者であったのかはよくわかっていない。

そのキシさんが言っていたことは断片的にいくつか覚えている。「生涯賃金が全然違うから

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若いころと年を重ねた時とで夢の重みは違う

若いころと年を重ねた時とで夢の重みは違う

以前も取り上げた、お世話になっていた先生の話である。
先生に感謝の手紙をお送りしたとき、私は誤って便箋を2枚重ねずに送ってしまったことがあった。目上の人に対する手紙では失礼な行為のひとつだが、その際に先生からの手紙でお叱りを受けたことがあった。
そのとき、「君は記者であるから言っておくが、社会常識を知ってあえて踏み越えるのと、知らずに踏み越えるのとでは大きな違いがある。記者という仕事は社会常識を知

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小説みたいな現実って本当にある

小説みたいな現実って本当にある

「事実は小説より奇なり」という言葉があるが、人生を振り返るとごくまれに「事実が小説より奇」だったことがある。

いまでも「こんなことあるのか」と思ったのは、2006年の夏の甲子園の決勝戦である。
端正な顔立ちで「ハンカチ王子」として一躍有名になった斎藤佑樹擁する早稲田実業と、夏の甲子園三連覇のかかる田中将大擁する駒大苫小牧の試合だ。
もとよりメディアの報道が過熱して盛り上がっていたのだが、決勝戦は

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志ある方が「行政手続き」に苦労しているのは社会にとって損失が大きすぎる

志ある方が「行政手続き」に苦労しているのは社会にとって損失が大きすぎる

手術の練習に使うための子供の心臓の模型を作る会社の社長さんからお話を伺う機会があった。もともとものづくりを手掛けていた会社だったが、ひょんなことから心臓の模型を作ることになったという。

日本で様々な規制が多いことはよく知られているが、医療の分野ではとりわけ規制が多い。
医療者が手術の練習をするためのものであるため、国に「販売してもよいか」という薬事承認を得なくてはならない。
この薬事承認を得ると

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取材を受けてもらえるのは会社の看板のおかげである

取材を受けてもらえるのは会社の看板のおかげである

ふと思ったのだが、大手メディアの記者は、基本的に断られる経験をあまりしていない。
取材を申し込めば「ぜひ」と相手も乗り気であることも多い。いうまでもないが、それは当然取材先もパブリシティという形で利用できると考えるからである。都合が悪いものではない限り、基本的にウェルカムな状態で受け入れてくれる。そうでなくともとりあえず相手にしてもらえることは多い。

断られたり無下にされる経験を知らないと、人は

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鈴鹿サーキットに行ってF1生観戦をしてみた〜後編〜

鈴鹿サーキットに行ってF1生観戦をしてみた〜後編〜

鈴鹿サーキットは三重県の「稲生」という駅の近くにある。降り立ってみると結構な田舎だ。
駅から20分ほど歩くと鈴鹿サーキットが突如あらわれる。レースを控えてか露店やショップが並んでおり、余裕で2時間くらいの暇つぶしができる。
円安の時代だからなのかモータースポーツだからなのか、外国人がやけに多い。日本人があまり目につかないくらいであった。余談だが、トイレが異常に混むので名古屋などでトイレを済ませてお

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鈴鹿サーキットに行ってF1生観戦をしてみた〜前編〜

鈴鹿サーキットに行ってF1生観戦をしてみた〜前編〜

私にはいくつかの夢がある。
大小様々あるのだが、そのなかに「生でF1を見る」というものがあった。

私は運転は下手なのだが自動車がまあまあ好きで、「グランツーリスモ(GT)」というプレイステーションのゲームにハマったのが契機である。
他の自動車ゲームでは架空の車で架空のコースを走るものがほとんどだが、そうしたなかでGTは実在する車で実在するコースを走ることができることが幼心に実に感動的で、どっぷり

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「好き」の原体験を探る

「好き」の原体験を探る

そういえば、ことあるごとに文章を書くのが好きだ好きだと言って憚らない私だが、そもそも文章を書くのが好きになったきっかけはなんだったのだろうか。

仕事をする前、大学の時分には暇を持て余してつたない小説を書いたことがあった。どれも陰鬱な作品ばかりで小説とは人間性がよく出るものだと我ながら感心したものだが、同時に小説を書く作業というのは苦難以外の何物でもなく、おそらく私には向いていないのだろうと半ばあ

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仕事を経て、人の顔は変わるのかも

仕事を経て、人の顔は変わるのかも

しわひとつない黒々としたスーツに身を包む若者が、街を闊歩する時期である。
顔つきにはなお大学生のあどけなさが残り、社会人特有の幾ばくかの渋みみたいなものが全く感じられず、その様子を人は「若い」と形容する。

高校1年のころの担任教諭が「中学を卒業して間もないキミたちは実に幼い顔をしている。とりわけ男子は子供の顔をしている」と言われたものだ。
当時はその言葉の意味がよく分からなかったが、時間が経って

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