YARADAKO

スキを押すと好きな飲食物を知ることができます

YARADAKO

スキを押すと好きな飲食物を知ることができます

マガジン

記事一覧

サウナで「整い」に行った話

“キメる”という言葉が嫌いだ。 ポーズやファッションの話ではなく、日々をうぞうぞと楽しく暮らすオタク達がゲームにせよ映画にせよ、追いかけているジャンルの最新媒体…

YARADAKO
1年前
1

メロスは走って誰から逃げた?

中学生の頃。期末テストが嫌でしょうがなかった日の朝に、いつもの通学路を外れて少し遠回りをした。 別に学校をサボってはいない。毎日朝礼の二十分前には教室にいるやつ…

YARADAKO
1年前
20

聖護院マンドレイク

「それはさあ、お喋りなデブのあだ名とかじゃないの」 私がふと話の流れで『聖護院マンドレイクって知ってる?』と訊ねると、ヨシダくんは間をおかずそう返した。 どうや…

YARADAKO
1年前
25

岡田レイ、京都に没す

『いや岡田レイって誰なん?』 と思ったnoteユーザー諸氏にはこの【YARADAKO】というnoteユーザー名がTwitterで長いこと利用しているスクリーンネーム【RAY_OKADA】のアナ…

YARADAKO
1年前
10

書を返し、書店に行こう

 とうとう図書館で本を借り続けることに限界を覚え、「夜は短し歩けよ乙女」の文庫本を買った。  俺が森見登美彦氏の著作に触れるようになったのは、図書館の『地元の作…

YARADAKO
2年前
13

侵入主義者はかく定めき

厳粛な式典で大人しく座っている最中、突如として自分が発狂し、壇上に駆け登る凶行の顛末を想像してしまうこと。 あるいは職場の偉い人に罵詈雑言を叫び散らし、着るべき…

YARADAKO
2年前
26

雑貨商人トット・バリー

"ドナ砂漠を越えた先にある大国キンジャまで、来る戦争に備えて製造した武器を輸送されたし。なお、遠洋の島にて秘密裏に製造したモノゆえ、引き渡し時まで輸送貨物の内容…

YARADAKO
2年前
6

パンピーピンプス・ヴェンダーディギング

限りなく愛しくも、果てしなく慎ましいこの現実を今日まで享受しつつ…それでも人生のどこかで摩訶不思議なマジックリアリズム的アクシデントと巡り会うことを期待してこな…

YARADAKO
2年前
6

到達不能公園#2

「そんで、相生先生の出欠には間に合ったの」 「いや出欠は無かったんだけどさ。話はそこじゃないんだよ」 「無かったんかい」 我らが胸を張って通う玄鴨大学(げんおうだ…

YARADAKO
2年前
2

『同人誌を出す』という才能

八年と十ヶ月ぐらいツイッターをやってきて、お前達が個人の発信する文字、イラスト媒体に求める意図というか、何に飛びつくか?という習性のようなものはだいぶ把握できる…

YARADAKO
3年前
8

到達不能公園

脳科学の講義を受け持つ相生教授は、珍しい単位認定条件を設けていた。 “全十五回の講義でランダムに五回出欠を取り、その内一回でも欠席すれば単位は認めない” という…

YARADAKO
3年前
24

京の夜空には赤々と梅田駅②

① 『大阪にーはーうーまいもんがーいっぱいあるんやでー!』 『たーこ焼きーに宇治抹茶ーに天一九条ネギー!』 『大阪にーはーおもろいもんがいっぱいあるんやでー!』 …

YARADAKO
4年前
1

京の夜空には赤々と梅田駅

伏見大手筋商店街を抜けて駅に向かって歩こうとすると、出口に横たわるように踏み切りが存在している。 この踏み切りを横切る列車は商店街を一本の縦棒に見立てると、ちょ…

YARADAKO
4年前
2

【キル・ゼム・柳生正宗】

……ねばついた熱気がさ迷う夜のことだった。 空には淀んだ大気越しのおぼろ月と、目を凝らさねば見えない六等星。明かりとしての能力は期待できそうにない。 この東大寺…

YARADAKO
4年前
14

それは水のように透明な○

物心ついた頃、すでに世界は終わっていた。 どうでもいいほど遠い昔に、この星の表層は空気めいて透明な水で満たされ、陸の生き物は高層都市の名残である建造物の高所でダ…

YARADAKO
4年前
10

お前らまじで感想ヤクザをやめろ

先日、俺のお気持ち表明ツイがバズった。 https://twitter.com/ray_okada/status/1174326062089506816?s=19 (俺がバズったと認識するスレッショルドはまぁ数十ぐらいのリ…

YARADAKO
4年前
66

サウナで「整い」に行った話

“キメる”という言葉が嫌いだ。

ポーズやファッションの話ではなく、日々をうぞうぞと楽しく暮らすオタク達がゲームにせよ映画にせよ、追いかけているジャンルの最新媒体を享受する際にツイッターで用いる言葉として、“キメる”と表現するのが嫌いだ。
なにも決まってない。お前に決まっていることは何一つ無い。すべてが未確定だ。

何が嫌いって、この言葉の対象にされる作品がだいたい面白くないのだ。キャラ付けのため

もっとみる

メロスは走って誰から逃げた?

中学生の頃。期末テストが嫌でしょうがなかった日の朝に、いつもの通学路を外れて少し遠回りをした。
別に学校をサボってはいない。毎日朝礼の二十分前には教室にいるやつが、五分前に教室に入っただけのこと。早く着こうが遅く着こうが、あの惨憺たる得点に変わりはなかったろう。なんならいつもより早く来て教科書でもめくっていればもう五点は稼げたかもしれない。

“一分一秒でも問題を先に送る”。

これが俺という人間

もっとみる

聖護院マンドレイク

「それはさあ、お喋りなデブのあだ名とかじゃないの」

私がふと話の流れで『聖護院マンドレイクって知ってる?』と訊ねると、ヨシダくんは間をおかずそう返した。
どうやら物事をつまらなく解釈するということに対して彼は比類なき天才であり、並々ならぬ情熱を注いでいるようだった。
今日に限らず彼はこれまでの対話においても、話を振った際の第一声が『あっそ』『ふーん』『どうでもいいや』が殆どを占めていた。
彼は“

もっとみる

岡田レイ、京都に没す

『いや岡田レイって誰なん?』
と思ったnoteユーザー諸氏にはこの【YARADAKO】というnoteユーザー名がTwitterで長いこと利用しているスクリーンネーム【RAY_OKADA】のアナグラムであることを伝えるところから始めよう。伝え終わったので本題に入る。

この度、俺は平城の都奈良から平安の都京都へと入洛した。
奈良から京都への移住というこのイベントは、おそらく一般的な都道府県カーストに

もっとみる

書を返し、書店に行こう

 とうとう図書館で本を借り続けることに限界を覚え、「夜は短し歩けよ乙女」の文庫本を買った。

 俺が森見登美彦氏の著作に触れるようになったのは、図書館の『地元の作家コーナー』に並んでいた「四畳半神話大系」を手に取ったことが始まりだった。それまでの「四畳半なんとか」に対する認識は、文学界のApple信者的な奴らが、具体的には学生時代の青春をパサパサのありさまで過ごしたやつらが崇め奉るなんか厄介そうな

もっとみる

侵入主義者はかく定めき

厳粛な式典で大人しく座っている最中、突如として自分が発狂し、壇上に駆け登る凶行の顛末を想像してしまうこと。
あるいは職場の偉い人に罵詈雑言を叫び散らし、着るべきモノを脱ぎ捨て出さざるべきモノを出した時の周囲の反応を妄想してしまうこと。
または親しい知人との歓談の只中、目の前のそいつを中指の第二関節をとんがらせた中高一本拳で繰り返し殴打したときの反応に想いを馳せること。
これらは侵入思考と呼称される

もっとみる

雑貨商人トット・バリー

"ドナ砂漠を越えた先にある大国キンジャまで、来る戦争に備えて製造した武器を輸送されたし。なお、遠洋の島にて秘密裏に製造したモノゆえ、引き渡し時まで輸送貨物の内容物は『決して』第三者に知られぬこと。"

不道徳の世界において武器商人ナヘルム・カリンの名はいついかなる時も戦火に照らされ、足もつかぬ血の海と、目も利かぬ硝煙の霧の中でも決して霞むことは無かった。
受け渡しに寸日の狂いもなく。如何なる悪路で

もっとみる

パンピーピンプス・ヴェンダーディギング

限りなく愛しくも、果てしなく慎ましいこの現実を今日まで享受しつつ…それでも人生のどこかで摩訶不思議なマジックリアリズム的アクシデントと巡り会うことを期待してこなかったかと問われたら、答えは断じてノーだった。
通学電車が“きさらぎ駅”に止まったら怯えながらも一歩だけ降りてみるかもしれないし、見慣れない路地へ軽々に立ち入ったら酩酊者を誑かす赤提灯と東洋的妖魔存在が跋扈するナントカ横丁に迷い込んでしまう

もっとみる

到達不能公園#2

「そんで、相生先生の出欠には間に合ったの」
「いや出欠は無かったんだけどさ。話はそこじゃないんだよ」
「無かったんかい」

我らが胸を張って通う玄鴨大学(げんおうだいがく)のチンケな学食も昼休憩の時間は猥雑な喧噪が飛び交い、学校の近所の爺さんやら用務員のおばさんも交えて大賑わいだ。我々の学費で賄われている驚異的な安さの学食が外部からの来訪者によって不当に堪能されてしまっている点についてはまた今度話

もっとみる

『同人誌を出す』という才能

八年と十ヶ月ぐらいツイッターをやってきて、お前達が個人の発信する文字、イラスト媒体に求める意図というか、何に飛びつくか?という習性のようなものはだいぶ把握できるようになったので、こんなタイトルを見たら

「ウン万文字書くだけでも普通の人には到底出来ない何百人に一人の才能!」
「ましてやそれを印刷所に頼んで本にしてもらうとかマジで偉業なので胸を張ってほしい!」

とかいう褒めちぎり文を期待するであろ

もっとみる

到達不能公園

脳科学の講義を受け持つ相生教授は、珍しい単位認定条件を設けていた。

“全十五回の講義でランダムに五回出欠を取り、その内一回でも欠席すれば単位は認めない”

という…なまじっか皆勤しか認めないより余程の出席率を見込める、アッパレと言う他ない脳科学の専門家らしい巧妙な誘導であった。おかげで大教室は毎度不本意にぎゅうぎゅう詰めだ。

中には相生翁の挑戦を受けて立つべく幾度かのサボタージュを決行し、最低

もっとみる

京の夜空には赤々と梅田駅②



『大阪にーはーうーまいもんがーいっぱいあるんやでー!』
『たーこ焼きーに宇治抹茶ーに天一九条ネギー!』
『大阪にーはーおもろいもんがいっぱいあるんやでー!』
『任天堂にみーなみ座ーに吉本新喜劇ー!』

かつてこのCMソングが地上波で流れたとき、当時の京の人々は憤激に駆られ、放送局や観光協会を始めとする各所に猛烈なクレームを入れたそうだ。

“南座を吉本新喜劇さんと同列に扱うのは……どうなんで

もっとみる

京の夜空には赤々と梅田駅

伏見大手筋商店街を抜けて駅に向かって歩こうとすると、出口に横たわるように踏み切りが存在している。

この踏み切りを横切る列車は商店街を一本の縦棒に見立てると、ちょうど鉤括弧の鉤の部分になるように配置された駅。伏見桃山駅に必ず停車するようになっている。大昔は準急以外の優等列車は停まらなかったようだが、ちょっとだけ昔にあらゆる列車が停まるようになった。
そういった理由から、ここか、次の丹波橋駅で降りて

もっとみる

【キル・ゼム・柳生正宗】

……ねばついた熱気がさ迷う夜のことだった。

空には淀んだ大気越しのおぼろ月と、目を凝らさねば見えない六等星。明かりとしての能力は期待できそうにない。
この東大寺大仏殿前という、深く長い歴史を湛えた仏閣を照らす光も、その滲んだ満月と、まばたけば盲点にかき消えそうな星しか無かった。気休め程度に八角燈籠が灯ってはいるが、光度は月とどんぐりの背比べ。光源としては頼りない。

手を伸ばせば夜闇に腕が呑まれ

もっとみる

それは水のように透明な○

物心ついた頃、すでに世界は終わっていた。

どうでもいいほど遠い昔に、この星の表層は空気めいて透明な水で満たされ、陸の生き物は高層都市の名残である建造物の高所でダラダラと余生を過ごすことと相成った。まあつまり惑星全域がもれなく水没都市と化した。らしい。水没してない都市って、なんだろう?

「こんにちは、どうもよろしく」
がかららら。と、居間のガラス戸と網戸をいっぺんに開けてから外の景色に向かって朝

もっとみる

お前らまじで感想ヤクザをやめろ

先日、俺のお気持ち表明ツイがバズった。

https://twitter.com/ray_okada/status/1174326062089506816?s=19

(俺がバズったと認識するスレッショルドはまぁ数十ぐらいのリツイートでもライン越えという。あまあまな感じなのだ)

俺は普段押し寄せる2800人のフォロイーの垂れ流すツイートに(実際表示されるのはもっと少ない人数のツイートだが)ガンガ

もっとみる