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サウナで「整い」に行った話

“キメる”という言葉が嫌いだ。 ポーズやファッションの話ではなく、日々をうぞうぞと楽しく暮らすオタク達がゲームにせよ映画にせよ、追いかけているジャンルの最新媒体を享受する際にツイッターで用いる言葉として、“キメる”と表現するのが嫌いだ。 なにも決まってない。お前に決まっていることは何一つ無い。すべてが未確定だ。 何が嫌いって、この言葉の対象にされる作品がだいたい面白くないのだ。キャラ付けのためにわざとらしくフリスクを携帯している中学生に近しいものを感じる。 恥を忍んで言う

    • メロスは走って誰から逃げた?

      中学生の頃。期末テストが嫌でしょうがなかった日の朝に、いつもの通学路を外れて少し遠回りをした。 別に学校をサボってはいない。毎日朝礼の二十分前には教室にいるやつが、五分前に教室に入っただけのこと。早く着こうが遅く着こうが、あの惨憺たる得点に変わりはなかったろう。なんならいつもより早く来て教科書でもめくっていればもう五点は稼げたかもしれない。 “一分一秒でも問題を先に送る”。 これが俺という人間の本質であり、行動の基本指針だ。 この宿痾とも呼ぶべき逃げ癖は俺という人間性の

      • 聖護院マンドレイク

        「それはさあ、お喋りなデブのあだ名とかじゃないの」 私がふと話の流れで『聖護院マンドレイクって知ってる?』と訊ねると、ヨシダくんは間をおかずそう返した。 どうやら物事をつまらなく解釈するということに対して彼は比類なき天才であり、並々ならぬ情熱を注いでいるようだった。 今日に限らず彼はこれまでの対話においても、話を振った際の第一声が『あっそ』『ふーん』『どうでもいいや』が殆どを占めていた。 彼は“世はつまらなくありき”を信条に定めているのだろう。そうとしか考えられない。でなけ

        • 岡田レイ、京都に没す

          『いや岡田レイって誰なん?』 と思ったnoteユーザー諸氏にはこの【YARADAKO】というnoteユーザー名がTwitterで長いこと利用しているスクリーンネーム【RAY_OKADA】のアナグラムであることを伝えるところから始めよう。伝え終わったので本題に入る。 この度、俺は平城の都奈良から平安の都京都へと入洛した。 奈良から京都への移住というこのイベントは、おそらく一般的な都道府県カーストに倣った価値観で判断すれば紛れもなく『ハレ』のイベントだろうが、この生活環境の変化

        サウナで「整い」に行った話

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        • 夕宮市奇聞録
          3本

        記事

          書を返し、書店に行こう

           とうとう図書館で本を借り続けることに限界を覚え、「夜は短し歩けよ乙女」の文庫本を買った。  俺が森見登美彦氏の著作に触れるようになったのは、図書館の『地元の作家コーナー』に並んでいた「四畳半神話大系」を手に取ったことが始まりだった。それまでの「四畳半なんとか」に対する認識は、文学界のApple信者的な奴らが、具体的には学生時代の青春をパサパサのありさまで過ごしたやつらが崇め奉るなんか厄介そうな本という認識で、正味敬遠していた。何より、なんか京都賛歌的な作風だと小耳に挟んで

          書を返し、書店に行こう

          侵入主義者はかく定めき

          厳粛な式典で大人しく座っている最中、突如として自分が発狂し、壇上に駆け登る凶行の顛末を想像してしまうこと。 あるいは職場の偉い人に罵詈雑言を叫び散らし、着るべきモノを脱ぎ捨て出さざるべきモノを出した時の周囲の反応を妄想してしまうこと。 または親しい知人との歓談の只中、目の前のそいつを中指の第二関節をとんがらせた中高一本拳で繰り返し殴打したときの反応に想いを馳せること。 これらは侵入思考と呼称される、心身ともに健康的な青少年であってもままある心理的挙動に過ぎないらしい。 なる

          侵入主義者はかく定めき

          雑貨商人トット・バリー

          "ドナ砂漠を越えた先にある大国キンジャまで、来る戦争に備えて製造した武器を輸送されたし。なお、遠洋の島にて秘密裏に製造したモノゆえ、引き渡し時まで輸送貨物の内容物は『決して』第三者に知られぬこと。" 不道徳の世界において武器商人ナヘルム・カリンの名はいついかなる時も戦火に照らされ、足もつかぬ血の海と、目も利かぬ硝煙の霧の中でも決して霞むことは無かった。 受け渡しに寸日の狂いもなく。如何なる悪路でも荷車からは火薬のひと匙さえ散らさず。 武器を求むる声あらば、諸国に戦の影あらば

          雑貨商人トット・バリー

          パンピーピンプス・ヴェンダーディギング

          限りなく愛しくも、果てしなく慎ましいこの現実を今日まで享受しつつ…それでも人生のどこかで摩訶不思議なマジックリアリズム的アクシデントと巡り会うことを期待してこなかったかと問われたら、答えは断じてノーだった。 通学電車が“きさらぎ駅”に止まったら怯えながらも一歩だけ降りてみるかもしれないし、見慣れない路地へ軽々に立ち入ったら酩酊者を誑かす赤提灯と東洋的妖魔存在が跋扈するナントカ横丁に迷い込んでしまう妄想も、幾度としてきた。 端的に言って、僕は“ふしぎなデキゴト”に憧れている。

          パンピーピンプス・ヴェンダーディギング

          到達不能公園#2

          「そんで、相生先生の出欠には間に合ったの」 「いや出欠は無かったんだけどさ。話はそこじゃないんだよ」 「無かったんかい」 我らが胸を張って通う玄鴨大学(げんおうだいがく)のチンケな学食も昼休憩の時間は猥雑な喧噪が飛び交い、学校の近所の爺さんやら用務員のおばさんも交えて大賑わいだ。我々の学費で賄われている驚異的な安さの学食が外部からの来訪者によって不当に堪能されてしまっている点についてはまた今度話すことにする。 その片隅の、学食全体でわずか4つしかない貴重な2人がけの席で(

          到達不能公園#2

          『同人誌を出す』という才能

          八年と十ヶ月ぐらいツイッターをやってきて、お前達が個人の発信する文字、イラスト媒体に求める意図というか、何に飛びつくか?という習性のようなものはだいぶ把握できるようになったので、こんなタイトルを見たら 「ウン万文字書くだけでも普通の人には到底出来ない何百人に一人の才能!」 「ましてやそれを印刷所に頼んで本にしてもらうとかマジで偉業なので胸を張ってほしい!」 とかいう褒めちぎり文を期待するであろうことは起稿のためにnoteのアプリを開いた時点でおおよそ予測できたことではある

          『同人誌を出す』という才能

          到達不能公園

          脳科学の講義を受け持つ相生教授は、珍しい単位認定条件を設けていた。 “全十五回の講義でランダムに五回出欠を取り、その内一回でも欠席すれば単位は認めない” という…なまじっか皆勤しか認めないより余程の出席率を見込める、アッパレと言う他ない脳科学の専門家らしい巧妙な誘導であった。おかげで大教室は毎度不本意にぎゅうぎゅう詰めだ。 中には相生翁の挑戦を受けて立つべく幾度かのサボタージュを決行し、最低限の労力で単位を狙う猛者も自ずと、当然に…略して自然に現れたが幾人かは教授に読み

          到達不能公園

          京の夜空には赤々と梅田駅②

          ① 『大阪にーはーうーまいもんがーいっぱいあるんやでー!』 『たーこ焼きーに宇治抹茶ーに天一九条ネギー!』 『大阪にーはーおもろいもんがいっぱいあるんやでー!』 『任天堂にみーなみ座ーに吉本新喜劇ー!』 かつてこのCMソングが地上波で流れたとき、当時の京の人々は憤激に駆られ、放送局や観光協会を始めとする各所に猛烈なクレームを入れたそうだ。 “南座を吉本新喜劇さんと同列に扱うのは……どうなんですやろ?ウフフ” “やっぱり地方の人らも、ほらね?抹茶とか九条とか聞かはって大阪

          京の夜空には赤々と梅田駅②

          京の夜空には赤々と梅田駅

          伏見大手筋商店街を抜けて駅に向かって歩こうとすると、出口に横たわるように踏み切りが存在している。 この踏み切りを横切る列車は商店街を一本の縦棒に見立てると、ちょうど鉤括弧の鉤の部分になるように配置された駅。伏見桃山駅に必ず停車するようになっている。大昔は準急以外の優等列車は停まらなかったようだが、ちょっとだけ昔にあらゆる列車が停まるようになった。 そういった理由から、ここか、次の丹波橋駅で降りて近鉄線に乗り換えれば奈良駅、京都駅へと急行ないしは特急列車で向かえる。比較的いい

          京の夜空には赤々と梅田駅

          【キル・ゼム・柳生正宗】

          ……ねばついた熱気がさ迷う夜のことだった。 空には淀んだ大気越しのおぼろ月と、目を凝らさねば見えない六等星。明かりとしての能力は期待できそうにない。 この東大寺大仏殿前という、深く長い歴史を湛えた仏閣を照らす光も、その滲んだ満月と、まばたけば盲点にかき消えそうな星しか無かった。気休め程度に八角燈籠が灯ってはいるが、光度は月とどんぐりの背比べ。光源としては頼りない。 手を伸ばせば夜闇に腕が呑まれようという、常人では足元さえ不覚な環境。 “常人”では。 大仏殿の真正面の中

          【キル・ゼム・柳生正宗】

          それは水のように透明な○

          物心ついた頃、すでに世界は終わっていた。 どうでもいいほど遠い昔に、この星の表層は空気めいて透明な水で満たされ、陸の生き物は高層都市の名残である建造物の高所でダラダラと余生を過ごすことと相成った。まあつまり惑星全域がもれなく水没都市と化した。らしい。水没してない都市って、なんだろう? 「こんにちは、どうもよろしく」 がかららら。と、居間のガラス戸と網戸をいっぺんに開けてから外の景色に向かって朝の挨拶をした。昼かもしれないが。 景色とはなんの色なのか?この星では濃淡を問わ

          それは水のように透明な○

          お前らまじで感想ヤクザをやめろ

          先日、俺のお気持ち表明ツイがバズった。 https://twitter.com/ray_okada/status/1174326062089506816?s=19 (俺がバズったと認識するスレッショルドはまぁ数十ぐらいのリツイートでもライン越えという。あまあまな感じなのだ) 俺は普段押し寄せる2800人のフォロイーの垂れ流すツイートに(実際表示されるのはもっと少ない人数のツイートだが)ガンガンどつかれながら俺も俺のタイムラインの2801人目として愚痴とか、ラーメンとか、

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