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春と私の小さな宇宙

73
少し不思議で哲学チックな物語です。自分でも何故こんな話を書いたのかわかりません。
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#宇宙

『春と私の小さな宇宙』 その73(最終回)

『春と私の小さな宇宙』 その73(最終回)

※ジャンル別不能の不思議な物語です。少し暗め。
※一人称と神視点が交互に切り替わります。
以上が大丈夫な方だけ閲読ください。
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「本当に元気でよかった。・・・それで、出産予定日はいつなの?」

「後、一週間ぐらい。もうすぐよ」

ハルは命の詰まった下腹部を優しく撫でる。それに応えるように内部で我が子が蠢いた。

「本当に・・・無事で、よかった・・・」

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『春と私の小さな宇宙』 その67

『春と私の小さな宇宙』 その67

※ジャンル別不能の不思議な物語です。少し暗め。
※一人称と神視点が交互に切り替わります。
以上が大丈夫な方だけ閲読ください。
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ハルの計画はゆっくりとではあるが着実に浸透するものだった。

知らず知らずのうちに人類の遺伝子は第三世代に変化していく。ハルの死後も三重螺旋のDNAは次世代に引き継がれ、第三世代の子孫を増やしていくのだ。

いかに物事を滞りな

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『春と私の小さな宇宙』 その66

『春と私の小さな宇宙』 その66

※ジャンル別不能の不思議な物語です。少し暗め。
※一人称と神視点が交互に切り替わります。
以上が大丈夫な方だけ閲読ください。
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ハルは振り返り、再び第三世代の男を見る。会った時と違い、弱々しい表情をしていた。

「カレーよ」

「カレー?」

思いもよらぬ答えに、ミハエルは耳を疑った。

「カレーは様々な具材が入っているわ。肉や野菜、水、スパイス・・・

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『春と私の小さな宇宙』 その62

『春と私の小さな宇宙』 その62

※ジャンル別不能の不思議な物語です。少し暗め。
※一人称と神視点が交互に切り替わります。
以上が大丈夫な方だけ閲読ください。
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「あった。やはりここに落ちていたのね」

拾ったのは熊との格闘で負けを悟った時、落とした注射器だった。

「この場所に落としたところを記憶していたの。まだあってよかったわ」

今度はハルが宮野の首筋に注射器を当てる。ゆがんだ顔

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『春と私の小さな宇宙』 その59

『春と私の小さな宇宙』 その59

※ジャンル別不能の不思議な物語です。少し暗め。
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自宅の入り口まで来ると、郵便受けに封筒が入っていた。すぐ目に入るよう封筒の半分がはみ出ている。

まるで絶対に気付いてほしいのだと主張しているようだった。

封筒を取り出し、家に入る。二階に上がって自室に入ると先程の封筒を見た

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『春と私の小さな宇宙』 その34

『春と私の小さな宇宙』 その34

※ジャンル別不能の不思議な物語です。少し暗め。
※一人称と神視点が交互に切り替わります。
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アキの声が聞こえた。

あの外道、どの面下げて帰ってきたんだ?

アキの目には大粒の涙が流れていた。確か涙は、罪悪感を覚えた時に出る現象だと記憶している。少なくとも、 ハルを置いて行ったことを悪く感じていたようだ。

ハルはア

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『春と私の小さな宇宙』 その30

『春と私の小さな宇宙』 その30

※ジャンル別不能の不思議な物語です。少し暗め。
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「そうだね。君の考えは正しいと思うよ、でも、こうは考えられないかな。これはあくまでボクの仮説だけど、無を満たしているものが質量やエネルギーのない、全く別のものだったとしたら。説明ができると思うんだ」

「意味がわからない」

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『春と私の小さな宇宙』 その29

『春と私の小さな宇宙』 その29

※ジャンル別不能の不思議な物語です。少し暗め。
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「そろそろ出てきなさい」

ハルは後ろの木陰に向かって言った。テレパシーではなく、声を出して言った。

ガサガ サ音を立てて、その人物は現れた。

出てきたのはアキだった。申し訳なさそうにハルを見ている。

「ハ、ハル、

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『春と私の小さな宇宙』 その3

『春と私の小さな宇宙』 その3

※ジャンル別不能の不思議な物語です。少し暗め。
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第一章


一月初旬。

薄暗く曇った空が灰色に染まっている。
去年の冬は雪が降らなかったものの寒気が停滞し、肌を突き刺すような風が吹いていた。

冬休みが終わり、厳しくなってきた寒さのせいで、大学構内に出ようとする者はほと

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『春と私の小さな宇宙』 その2

『春と私の小さな宇宙』 その2

※ジャンル別不能の不思議な物語です。少し暗め。
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プロローグ

○ 小さな宇宙

私は、気づくとそこにいた。

周りは真っ暗で身動きがとれなかった。視覚が役に立たず もどかしい。奇妙な浮遊感がする。周囲には何もなく、どこが上でどこが下なのかわからなかった。

この暗い空間に私

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『春と私の小さな宇宙』 その1

『春と私の小さな宇宙』 その1

※ジャンル別不能の不思議な物語です。少し暗め。
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宇宙は命の起源だ。

何も無い空間に無数の星や命が存在している。黒で塗り潰された背景には終わりがなく、それこそ無限に広がっている。 そんな膨大な宇宙も最初はとても小さな粒が始まりと言われている。

全ての生命がそこから誕生した

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