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エッセイ「未知しるべ」

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日々感じたことや、これまでの体験などをつらつらと書いたエッセイ。
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記事一覧

お互いさまやね。

お互いさまやね。

結婚10年目に突入した私たち夫婦。会話がないわけではないけれど、明らかに昔よりは夫の反応が薄くなった。

「ふーん」「なるほどー」「おもしろいねー」

絶対、適当に返しているよな。なんかムッとする。夫に対して遠慮のかけらもない私は、「なにその反応。こうやって、夫婦の会話は少なくなっていくんやでぇぇぇぇ」と笑いながらちょっとだけ脅す。

プリプリしながら洗い物をしていたとき、「いや待てよ」と手が止ま

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ウェディングドレスと大都会、そして軽トラのおっちゃん

ウェディングドレスと大都会、そして軽トラのおっちゃん

あれは9年ほど前、披露宴を終え、ウェディングドレス姿で2次会へ向かう最中のこと。

とんでもなく方向オンチな私は、タクシーを降ろされた場所から歩いて1分ほどの会場にたどり着けず、迷子になった。

もちろん夫も一緒だったけれど、ほぼ初めての場所。慌てて担当スタッフに電話をかけに行き、東京の大都会、ビルが建ち並ぶ大通り沿いでまさかの1人ぼっちになった。

✳︎

ええ歳をした大人。「助けてー」と泣きわ

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なに基準?

なに基準?

「自閉」って言葉に、昔から違和感がある。少なくとも私がこれまで学校現場で関わった、自閉症スペクトラムに分類される子はみな、表現は得意といえない反面、世界観をしっかり持っていた。

たまーーにポツリと打ち明けてくれた発想がおもしろく、「この素材をこう組み合わせるか!」「なるほど!」と頭が下がった。了解を得てみんなに紹介させてもらうと、自然と拍手が起こったこともしばしば。

表現しないからって、心を閉

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復活!メモ魔ライフ

復活!メモ魔ライフ

さとゆみゼミ東京道場で、日常にアンテナを張る大切さを学んだ。

しかしアラフォーの私、残念ながらすぐに忘れてしまう。

何か対策は・・・と思いついたのがメモ魔になること。いや、正確にいうとメモ魔ライフを復活させることだ。私は前職で担任をしていたとき、かなりのメモ魔だった。

「えんま帳」といわれる分厚いノートに、子どもたちの記録を残す。発表のアイデアのおもしろさ、成長具合など、可能な限り具体的に書

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ハードボイルドな教育実習

ハードボイルドな教育実習

はじめて教員の仕事を垣間見た、教育実習の思い出を書いてみる。

当時50代だった指導教官は、京都生まれ・育ちの女性。翌日からの教育実習に向け、あいさつに訪れた私を見るなり「待っていたのよー!!」と笑顔で迎えてくれた。

「なんてええ人なんや、現場の先生たちからすると結構面倒くさい(らしい?)教育実習をこんなに喜んでくれるやなんて!」と喜ぶ私が連れて行かれたのは、教室裏の農園。

「これ、全部耕して

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義父のはなし

義父のはなし

私の義父は、かなりおもしろい。そして、めちゃくちゃ温かい。

一見ひょうひょうとしていてお堅いけれど、実はめちゃくちゃおもしろい。私は義父が大好きだ。

キャリーするバッグやのに・・・さかのぼること約10年。
両家顔合わせのとき、スーツを着た義父は、キャリーバッグを手に持って登場した。キャリーするバッグやのに、普通のカバンみたいに持っている。しかも「重いわー」ってずっと言っている。

その瞬間、私

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いちばんぼし、見ーっけ!

いちばんぼし、見ーっけ!

教育実習のころからずっと、受け持った子どもたちに贈り続けてきたものがある。過ごした日々で、私が見つけた「その子のいいところ」を記したいちばんぼしカードだ。

私の原点は、「100%無理!」という担任からのひと言。当時はめちゃくちゃムカつき、ほぼ反発心から「ほんなら、私が1%の可能性でも信じ抜く教師になってやろうやん!」って思ったのがスタートだ。

「できない」ではなく「できる」ところに目を向け、自

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「言葉」が人の心を壊す可能性

「言葉」が人の心を壊す可能性

心を壊す。人間である限り、だれにだって可能性はある。たまーに「打たれ弱いから心を病むのよ」なんて聞くけれど、そんなことはないと思う。

マイナスな言葉の威力いじめやパワハラの恐ろしさは、言葉にあるような気がしてならない。少なくとも私はそうだった。「死ね」「あなたはダメ」「消えろ」など、毎日のようにひどい言葉を浴びせられ続けると、少しずつ、でも確実に心は弱っていく。ブラックコーヒーに入れた数滴のミル

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「無償の愛」はだれから?

「無償の愛」はだれから?

「無償の愛」は母から子へ注がれるっていうけれど、私はむしろ逆だと思う。母から子に注がれる愛が「無償の愛」なら、なぜ耳をふさぎたくなるような悲惨な虐待や赤ちゃんの遺棄が絶えないのだろうか。

反対に幼少期の子どもの母に対する言動は、無償の愛だなぁって思う。見返りなんて求めず、当たり前のように愛情を注いでくれる。

小学2年生になった長男は、とにかく私を褒める。少しでもメイクや髪形を変えようもんなら、

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ひとりって孤独?

ひとりって孤独?

私は1人が結構好きだ。1人でフラッと散歩に出かけるし、ラーメン屋や映画館にも入る。そんな私だけれども、高校2年生のある時期までは1人が超絶苦手だった。

「悪口に同意しない」は大罪小学校は4人グループ。中学校は8人グループ。高校は、7人だったかな。当然のようにグループで行動し、行きたくもない場所に付き添う。隣にクラスメイトはいたけれど、あのころの私は、多分孤独だった。

グループのメンバーだったY

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死してなお、生きる

死してなお、生きる

私は義母に会ったことがない。夫と出会う十年ほど前、卵巣がんで亡くなったそうだ。

読まれることのない手紙写真に映る義母は、どことなく夫に似ている。義母の弟さんと初めてお会いしたとき、「シャキシャキした感じが姉さんに似ている」「母親と似た相手を選ぶって聞くけれど、ほんまやなぁ」と言われた。

結婚後、初めての母の日を前に、私は義母宛てのプリザードフラワーを用意し、手紙を書いた。

夫は何をしだすんや

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アナログさいきょう説

アナログさいきょう説

前職のころ、週に1回のペースで学級通信を発行していた。出産して復帰するまでは、パソコンで作成、管理職などにチェックをしてもらって発行する流れが当たり前。

ただ、子どもが生まれると別だ。「保育園のお迎え」というタイムリミットがあるので、パソコンで学級通信を書く時間がない。

学級通信は任意だけれど、保護者とのコミュニケーションにかなり役立つ。実際に数名の保護者から「子どもが学校の様子を話してくれな

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Win-Winな関係づくり

Win-Winな関係づくり

お互いにとって何らかのメリットがある「Win-Winな関係」。仕事はもちろん、夫婦、友人、さまざまな人間関係を円滑にする。

ならば!親子だって例外ではないはず。

イライラが止まらない夫に似たのか、幼稚園のころから片づけが得意だった長男。諸用で学校を訪れたときに道具箱を抜き打ちチェックしても、まぁまぁ整頓されていた。しかーし、最近「やりっぱなし」が増えている。本棚から顔を出す靴下。ソファに脱ぎ散

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「100%無理」って、なぜ言い切れる?

「100%無理」って、なぜ言い切れる?

あれは高校2年の夏、1学期の期末テストの結果が出る前だったと記憶している。担任との面談でひと言、「お前には〇〇大学は100%無理やわ」と言われた。

強気な私が「なんでそんなこと言われなあかんの?もっともっと勉強して、見返してやろう」と頭の奥のほうで主張する一方、

弱気な私が「あれだけ頑張ったのにダメってことか」「なんか、頑張るの疲れたな」とささやく。期末テスト前の面談で、担任から「平均点をあと

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