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ドラマ、映画、YouTubeなどの映像、小説、詩集などから得たものをアウトプット。
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小説「舟を編む」三浦しをん

小説「舟を編む」三浦しをん

三浦しをんの長編小説。
あぁ何か小説を読みたいなぁと書店をふらふら物色していると、ふと目に入った文字「舟を編む」。なんて詩的なタイトルなんだろうと惹かれてしまう。思わずジャケ買い(死語ですか?)してしまう。調べてみると2012年の本屋大賞受賞作品だった。これは期待値が高い。

とある出版社が新しい国語辞書「大渡海」を作るというお話。辞書を作ることが小説になるとは大変な驚きだった。言わば裏方の物語で

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2022年映画「ある男」

2022年映画「ある男」

原作、平野啓一郎の映画。原作を読んでからプライムビデオで観た。原作に忠実でイメージどおりに映像化されていたので何となくほっとする。今年1月に原作を逸脱した内容でドラマ化し作者が自死するという悲しい事件もあった。作者の意図を無視するとは言語道断であると私は思う。

2022年9月に原作を読んで深い感銘を受けた。中心に一つだけ「本当の自分」を認めるのではなく、それら複数の人格すべてを「本当の自分」だと

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小説「正欲」朝井リュウ

小説「正欲」朝井リュウ

朝井リョウの長編小説。
初めてこの作品を知ったのは映画の広告だった。演者とか内容とかそうゆうものに興味はなくタイトルの「正欲」という言葉に強く惹かれた。日々の生活や詩作をする時「正しさ」とはなんだろうと考えることがある。だから「正欲」とは正しさを欲することなのか、正しく欲することなのか、そもそも正しい欲とはなんだろうか、強烈な興味に駆られた。映画を観そびれてしまったのでいっその事、元々原作から映像

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2023年映画「PERFECT DAYS」

2023年映画「PERFECT DAYS」

いつものように運転しながら歌い、いつもと同じルートでとあるショッピングモールに向かい、比較的人が少ない平日の映画館に入る。隣に座る年配の女性がハンバーガーを食べきってコーヒーの香りを漂わせるとそれからぽりぽりと音を立てながらポップコーンを齧っている。ちょっと嫌だなって思いながら本編が始まるのを待った。

ひとりの男の変わらぬ日々が続いてゆき、ひとりの男の変わらぬ日々がこれからも続く。

映画館を出

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2016年ドラマ「荒地の恋」

2016年ドラマ「荒地の恋」

原作、ねじめ正一のドラマ。戦後の詩誌「荒地」の同人であった詩人、北村太郎の物語。

詩歴5年の私には、まだまだ知らない詩人、読んだことのない詩人、がたくさんいる。北村太郎という詩人に出会ったのは、松下育男さんの詩の教室だった。対談ゲストが北村太郎のお嬢様の融理子さんだった為、予習としてねじめ正一「荒地の恋」北村太郎「センチメンタルジャーニー」を読み、そして教室からの資料として数篇の詩を読んだ。すっ

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2014年ドラマ「私という運命について」

2014年ドラマ「私という運命について」

原作、白石一文のドラマ。バブル崩壊後の激動の時代を背景に女性総合職として働く一人の女性の約10年間を描いたドラマ。

当時まだ一般企業で働く女性はOLと呼ばれ25歳を過ぎれば寿退社をするのが一般的な時代。いわゆるOLとは少し違った意味をもつ女性総合職を希望する人は少なかったと思う。私は主人公よりも10歳くらい歳下になるが私の時代も総合職に就いた女性は周りにはいなかった。名のない短大出身なのでそうゆ

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2010年映画「トルソ」

2010年映画「トルソ」

40数年の人生、家でひとり夜を明かすのは初めてな気がする。なんか少し嫌だなと思う。たまには家も誰もいないをゆっくり過ごしたいのではないだろうか。家の立場で考えてみるという変な思考はどこかからやってくるのだろう。

とはいえ若い頃と違って夜通し遊ぶ気力も体力もない。こうゆう時にふと呼んでふと来てくれてふと一夜を共に明かしてくれる友達がいたらいいなと思う。男でも女でも良いし男でも女でもない人でも良い。

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2008年映画「蛇にピアス」

2008年映画「蛇にピアス」

原作、金原ひとみの映画。芥川賞受賞作品。原作は読んでいないがプライムビデオのおすすめに出てきたので観ることに。小説が原作の映像作品は小説を先に読むべきと知りながらついつい。

21世紀になって間もない若者の退廃的な世界を描いた作品。主人公ルイは恋愛を通して生きている実感を求めて身体にピアスをしたり舌の形を変えようとしたり刺青を入れたりする。画竜点睛(画人が最後に瞳を入れると竜が飛び去る)。ずっと一

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2022年映画「おそ松さん」

2022年映画「おそ松さん」

ジャニーズと言えば、おそらく女子ならば一度はハマったであろうTheアイドルだ。女子たちは学校の休み時間に「あのグループの誰々が好きっ!」「昨日のテレビすごくかっこよかったよね♡」なんて話題で盛り上がるのだ。雑誌を切り抜いてオリジナル写真集を作るお友達なんかもいた。しかしながら私はこの歳になるまで一切ジャニーズにハマらなかった。もちろん知らなくはない。今や国民的という代名詞までついちゃうのだから。た

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2019年映画「蜜蜂と遠雷」

2019年映画「蜜蜂と遠雷」

原作、恩田陸の映画。原作は読んでいないが2017年に直木賞と本屋大賞を受賞し当時は書店に山積みされていた。私自身ピアノを習っていたこともありとても興味があった。音が出ない本でどうやって音楽を表現するのだろう。おそらく数々のクラシック曲の曲名やピアノのテクニックや専門用語が並んでいるのだろう。映画で実際に音楽を聴いてピアノのテクニックをみて、それから原作を読む方法でも悪くないかもしれない。

「世界

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2021年ドラマ「ソロ活女子のススメ」

2021年ドラマ「ソロ活女子のススメ」

高校生の春休み。海を見たかった。大好きなユーミンの「天気雨」の歌詞のとおり相模線にゆられ茅ヶ崎の海を見に行った。まだスマホもネットもない時代、路線図と時刻表と地図を頼りに、茅ヶ崎駅からなんとなく海があるような雰囲気だけを感じとりながら歩いた。思えばこれが人生初のソロ活。

中高生くらいの時期は教室にひとりでいると「仲間はずれ」とか「友達いない」と思われるのではないかと、休み時間がくる度にひやひやし

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2017年ドラマ「カルテット」

2017年ドラマ「カルテット」

音楽とか美術とか芸術系って仕事にするのはとても難しい。音大や美大出身でもプロになれるのはほんのひと握りである。趣味として割り切って続けてゆくのか、夢が叶うまで続けてゆくのか。「才能」があるのかないのかは他人が決めることでもあり、自分で決めることでもある。

ただの恋愛ドラマではない。夢とどう向き合うかを深く考えさせられる。たびたび出てくる名言らしきセリフがとても好き。コメディタッチなセリフもいちい

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2016年ドラマ「私を離さないで」

2016年ドラマ「私を離さないで」

原作カズオ・イシグロのドラマ。原作は読んでいないがノーベル文学賞を受賞する小説はとても興味があった。英文で書かれ翻訳された小説を読むことに少し抵抗のある私はなんとなく読まずにいて先にドラマ化された。何の情報もなくタイトルをみると恋愛ドラマなのかなとは想像がついたが、ただの恋愛ドラマではなかった。原作を読まずに映像で観てしまったことに少し後悔はしたがわかり易くとても良いドラマだった。

生きる為に産

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