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よすけの短編小説まとめ

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書いた小説を投稿した順にまとめています。短いのから長いの。暗いものから明るいものまで。ほっと一息つけるように。
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#散文

【短編小説】ひうっふぃ

【短編小説】ひうっふぃ

1,556文字/目安3分

「読みにくいよ、これ」
 そう言って呼びかけても、姉ちゃんは答えてくれない。
「読みにくいよ、これ」
 さらに大きな声で呼びかける。
「うるさいな」
 そう言って、めんどくさそうな顔をする姉ちゃん。
「何回も言ってるじゃん」
 そう言って、姉ちゃんをにらみつける僕。
「知らないよそんなの」
 そう言って、そっぽを向く姉ちゃん。
 もうだめだ。こんなの僕だって読みたくない

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【短編小説】ただいま

【短編小説】ただいま

458文字/目安1分

 今日も一日働いた。

 業務がかなり立て込んだ。クレームが起こってしまった。後輩の尻拭いをした。非を認めないあいつ。いろいろなことが重なった。それでも期日は迫ってくる。
 休日の仕事も覚悟しないとかなと思いながら、それでもなんとかする方法を考える。

 とにかく、疲れた。

 心は体にも影響する。動き回る仕事じゃないのに、体が重くなる。ため息が増える。
 だからといって辞

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【短編小説】トワイライト

【短編小説】トワイライト

771文字/目安1分

 同じ空がどこまでも続いている。
 薄明かりに流れる雲の影。草木を抜ける風。小鳥は地面から飛び上がり、電線にとまった。すすきが揺れて、静けさが踊る。

 わたしは今日、夢をあきらめる。

 最初はとても小さな「やってみたい」からだった。できなくても楽しくて、できたらもっと楽しくて、とにかく夢中になった。「やってみたい」が「やりたい」になり、それがいつしか夢へと変わっていった

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【短編小説】んふぇーべ

【短編小説】んふぇーべ

1,233文字/目安2分

 昨日見た夢が頭から離れない。

 心地よい風が抜ける街並みは、なんだか懐かしい香りがする。広い道の真ん中には植え木があって、ここならボウリングだってできそうだ。
 公園では小さな男の子が風船を手放しちゃって悲しそう。僕は大きいのを一つ分けてあげた。

 それはそうと、今日は電車に乗ってお出かけだ。ぐるんと一回、坂を登ると駅にたどり着く。建物はとても堅そうだ。向こうの倉

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【短編小説】よくばり

【短編小説】よくばり

786文字/目安1分

 人生百年時代とはよく言ったもんだ。
 十代は十年しかない。二十代も十年しかない。十年を実際に生きてみると、とてつもなく長い時間だ。だけど、生きた十年はもう戻ってこない。
 仮に残りの人生が八十年あったとして、その八十年は同じようには生きられない。十代は十代なりの生き方。三十代は三十代なりの生き方。八十代なんか生きているのかも分からない。

 できるだけいい学校に進学したい

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【短編小説】トンネルの足音

【短編小説】トンネルの足音

888文字/目安1分

 誰も通らない、先の見えないトンネルをずっと歩いている。
 消えそうな明かりが一定間隔でついているだけだから、自分の輪郭もおぼつかない。歩いた先に何があるのか、終わりがあるのか、どうしてここにいるのかさえも分からない。
 ただずっと、まっすぐ歩き続ける。

 一歩進むと足音が二つ、三つと響く。それを繰り返すと自分の歩いた距離がもう分からなくなる。
 先が見えないのに歩き続け

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【短編小説】晩酌

【短編小説】晩酌

1,387文字/目安2分

 今週は特に疲れた。
 毎週毎週思うことだけど、毎週毎週それが更新されていっている気がする。月曜日から金曜日まで、一日の時間を全部使うわけじゃないのに、それがすべてのことのように追われている。
 今の仕事が嫌いなわけじゃない。むしろ好き。会社の人たちだってみんないい人。嫌な人なんてほとんどいない。わたしなりに、会社を大きくするためにどうしようか。どうしたら今よりよくなる

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