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【短編小説】トワイライト

771文字/目安1分


 同じ空がどこまでも続いている。
 薄明かりに流れる雲の影。草木を抜ける風。小鳥は地面から飛び上がり、電線にとまった。すすきが揺れて、静けさが踊る。

 わたしは今日、夢をあきらめる。

 最初はとても小さな「やってみたい」からだった。できなくても楽しくて、できたらもっと楽しくて、とにかく夢中になった。「やってみたい」が「やりたい」になり、それがいつしか夢へと変わっていった。
 続けるうちに楽しいことだけじゃないと知った。むしろつらいことの方が多かった。それでも「やりたい」がいつも勝つ。できるようになるまで本当につらい。自分が今進んでいるのかどうか、自信が持てる時がなかった。でも、前進していると分かった時は本当に嬉しかった。

 夢はどんな時も同じ場所で輝きを放っている。それは、あきらめた今でさえも。

 苦しかった。何度もやめたいと思った。上には上がいるなんて、そんなことは知っていた。だけど、わたしが目指す上は、どんなに手を伸ばしても、どんなに台を積み上げても、届くことはなかった。わたしが一つ上に行くたびに、違う誰かは二つ先へ進む。何度も思い知らされた。
 そうなっても、わたしにはやり続ける以外の方法が分からなかった。前には先の見えない茨。どんどん傷が増えていった。

 何度も何度もやめたいって思っていたのに。いざ本当にそうしてしまうと、これまでがすべてなかったことになってしまう気がしてならなかった。
 終わらせることに、こんなにも勇気が必要なんて。
 優しく吹く風が、頬を撫でて冷たい。

 歩みを止めて、一つだけ分かったことがある。

 わたしにとってここは、黄昏か。それとも夜明けか。どちらにせよ、同じ空の下。同じわたし。
 向こうで顔を覗かせる太陽は、同じこの広い空を静かに燃やしている。まだ見ぬ先の目に映るものは、今は茜色。

 わたしの道は続いている。


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