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【短編小説】ただいま

458文字/目安1分


 今日も一日働いた。

 業務がかなり立て込んだ。クレームが起こってしまった。後輩の尻拭いをした。非を認めないあいつ。いろいろなことが重なった。それでも期日は迫ってくる。
 休日の仕事も覚悟しないとかなと思いながら、それでもなんとかする方法を考える。

 とにかく、疲れた。

 心は体にも影響する。動き回る仕事じゃないのに、体が重くなる。ため息が増える。
 だからといって辞めたくはならない。だって今の仕事は嫌いじゃない。きっと、もっと元気でいる時だったら今の仕事は好きと言えているかもしれない。
 あれやこれやすべてを合計するとマイナス。今日はもう休んだ方がいいんだ。明日も仕事だからゆっくりする余裕はないけれど、限られた時間を使って、せめてゼロに近づけておきたい。

 家に帰るときみが迎えてくれる。人の気も知らないで、すごく嬉しそう。何も分かっていないからこそ、いいのかもしれない。たったこれだけのことで、心が少し洗われる。体が軽くなった気になる。

 そう、いつも通り。
 雨が降ろうが風が吹こうが、家に帰ればいつもの夜。

「ただいま」



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