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日記、エッセイのようなもの

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思いついたことを書いてます。
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#エッセイ

古書店破り。

古書店破り。

人通りが少ない道路に面した古書店。
入口にある小さな看板に書かれた店名は読めない。

覗き込むと店内の両脇には天井まで積み上がっている本棚が並び、その奥に店主の姿が見える。

いわば今日の対戦相手だ。

年齢は40代、お洒落なあご髭、
丸ぶち眼鏡、見たこともない新聞を読みながら入口から覗き込む私を一瞥した。

「たのもー!!」

心のうちで僕は叫ぶ。

「ほう。うちに古書店破りとは大した度胸だ。お

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キャラメルとダイエット。

キャラメルとダイエット。

どうして僕の前にまた姿を現したの?
どうして僕らの思い出を
美しいままに残しておいてくれないんだ?
どうして僕の心をまた揺り動かすんだ?

キャラメル、君に言ってるんだ。

わかってる、たしかに君のことが心に焼きついたことだってある。でもそれはもう遠い過去のことだ。僕はもう君のことは、

やめてくれ、
そうやって僕を惑わせないでくれ。
君のその甘ったるい囁きが僕の歯にまとわりついて離れないんだ。

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同級生とミニスカート

同級生とミニスカート

会社から車での帰り道、いつも目に入るキャバクラがある。その前を通るたびに、あの夏の夜を思い出す。

と言っても大したことは起きてないのだけど、なぜか妙に心に残っている。

なぜだろう?

当時の僕は一浪中。その他の友達の二人は大学生となり青春を謳歌していた。三人でお酒を飲み、夜も更けてきて、当然のようにキャバクラに行くことになったのだ。

お店に入り席に着くと、さっそくキャバ嬢が隣に座ったのだけど

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ストリートピアノと書くことについて。

ストリートピアノと書くことについて。

ストリートピアノって、noteの日記と似てませんか。少なくとも今の僕はそう思っている。

たまにストリートピアノを聞きに都内へ行く。ほとんどの人は無名で、でも楽しく、あるいは緊張していたり、それぞれの生活や想いを持ってピアノを弾いている。

その音色は僕らを、同じように無名な僕らを観衆に変える。

僕はピアノの上手い下手はわからないけど、その時間がとても好きだ。

そこには、弾き手と観衆の関係があ

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散りゆく何か。

散りゆく何か。

今年の桜は父が見たがっていた桜だった。

まだ意識があり聞き取れる言葉を話していた時、父は病床で言った。

「来年の桜も見たいなあ」と。

僕は仕事がら海外の人と話す機会がある。この時期になると定型句のように日本は今サクラの季節なんだと説明する。

すると海外の人も「そうそう日本はサクラの季節だな」と言う。たぶん色んな日本人から聞き慣れているのだろう。

この時期にアメリカに出張したことがある。国

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等価値

等価値

父が亡くなったとき、驚いたことがたくさんある。

お葬式の予約の電話がフリーダイヤルだったこと。色んなコースがあること。司会役がいて有料だということ。葬儀場にいる人たちは会社員であること。お給料が支払われていること。

人の死という不可解なものが、立ち止まることも許されず、あらゆるルールに則って進められていく。

それらは父の死を軽んじていると思った。

どういうものなら適切なのかは想像もつかない

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海外出張記①

レンタカーで車を借りるシチュエーションで思いかけず、オンライン英会話のbizmatesでロールプレイングをした場面に遭遇することとなった。そのおかげで、現地の人とちょっとした会話をすることができた。

ひとしきり手続が終わると担当をしてくれた中東系の若い女性がカウンター越しに話しかけてきた。

「何しにカナダに来たの?」
「仕事だよ」
「ふーん、どんな仕事してるの?」
「営業マンだよ。カナダにね、

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GW、VLOGな日記

GW、VLOGな日記

朝。5:30に目が覚める。いつもより部屋が暗い。目線は天井を見上げたまま。カーテンの向こう側から雨の降る音。今日は雨降りだ。

家族がそれぞれの日常生活に向かっていく。送り出して空を見上げると厚い雨雲。ゆっくりと風に流されている。午後には晴れるらしい。ラッキー。洗濯ができるね。

家の雑事をひとつひとつ終わらせる。テレビはつけない。好きな音楽。熱いコーヒー。軽くなる雨の音。ちょっと散歩をしに外に出

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