「怒ってます」 「はい」 両腕を胸の前で組、頬を膨らませ、ザ・怒っているホノカがいたので何となく正座しておく。 怒っている理由は多すぎて思い当たらない。さてどれだ…
「お祝いしようよ、祝日だし」 そんな言葉に寝ぼけ眼をこする。いつの間にか起き抜けていたミハルはふんふんと鼻息荒く息巻いている。 いつもながら唐突だ。夢でも見たの…
カタカタカタとキーを叩く音が響いている。調子の悪い空調の音がハーモニーを奏でる。……なんてオシャレに言ってみたものの、そこそこ不快だ。 「ねえ先輩、ここの空調、…
「……………………お腹すいた」 そう気づく時には大抵手遅れなくらい体が空腹を訴えている。窓の外を見ればとっぷりと日が暮れていた。さてここで問題になるのは、今が前…
「ふっふんふふふ〜ん」 今日も鼻歌まじりに掃除をする。気分は素敵な魔法使い。サッとひと拭きするだけで何もかもがキレイに……なーんて。 新居に引っ越してきて一週間…
放置された公園のベンチに腰かけ、夜空を見上げる。吹き抜ける風の冷たさに身を縮め、カイロ代わりに購入したココアの缶を転がす。 「月が食べられるって表現、言い得て妙…
「聞いてよナオ。さっき凄いことがあってさ」 アカネはスライドドアを開けるなりそう言った。返事はないが、いつものことだと気にせずに中に入る。 「近くに歩道橋あるで…
「はあ、はあ……」 息が切れる。 必死に鞭を打ち続けた体はボロボロで、体が千切れそうだ。 実際にどこかが千切れているのか、ぶちぶちと繊維の切れる音がする。 「まっ…
「かんぱーい!」 と、グラスを合わせる。 最初はビール……なんてルールはなく、私はサングリアを、対面のルカは梅酒のロックで唇を濡らしている。 喉を通っていく甘みと…
「お使い系のゲームあるじゃん」 リオンが両手に荷物を持った状態で切り出した。 鼻息荒く聞いてほしいと息巻いているので僕は一応肯定しておく。 「まあ、あるね」 「あ…
じわりと染み出すように、どこからともなく眠気が溢れてくる。 眠い。 そう自覚してしまえば全身が包まれるのは一瞬の出来事だ。今すぐ横になりたい。横になって、出来た…
「蛇を首に巻くやつあるじゃん?」 蛇の話題を出しながら、ユアは亀のように首を上着の中に引っ込めながら横を歩くカホを見やる。 「ああ、はい。テレビで見たことありま…
人を呪わば穴二つ。 なら神様を呪った場合は、天から見守っているとかいう神様も、穴に入ってくれるだろうか。 「ツクシ、一緒に帰ろ」 下駄箱で靴を履き替えていると背…
頭が痛い。ぎりぎりと輪っかで締め付けられているような感覚がする。 ああでも、晩御飯、作らなきゃ。そう思うのに体が沈み込んだベッドから立ち上がれないでいる。この間…
――届いてしまった。 ああどうしよう。なんで買ってしまったんだろう。 ぐるぐる部屋の中を動き回りたい気持ちを抑えて、机の上に置いてある小さな瓶を見つめる。不思議…
「いでででで!!っ、なんだ!?やはり殺す気か!?謀反か!?痛めつけても何も出ないぞ!?」 「HPは減ってないすよー。団長さんもやっぱり凝ってますねー。ストレッチ大…
夜長マコト
2021年11月24日 23:15
「怒ってます」「はい」両腕を胸の前で組、頬を膨らませ、ザ・怒っているホノカがいたので何となく正座しておく。怒っている理由は多すぎて思い当たらない。さてどれだろうか。また靴下を丸めたまま置いておいたか、上着をその辺に置いてしまったか、れともお弁当箱に残っていたご飯粒を食べてしまったとか……。うーん、わからん。「ところでなんで正座したんですか?」「えっと、それはホノカさんが怒ってるからで
2021年11月23日 23:51
「お祝いしようよ、祝日だし」そんな言葉に寝ぼけ眼をこする。いつの間にか起き抜けていたミハルはふんふんと鼻息荒く息巻いている。いつもながら唐突だ。夢でも見たのかもしれない。「祝うって何を?」「だから、祝日」「あー、えっと、それじゃあ……どうやって?」「えっとね、まずはお赤飯炊くでしょ?」「おお……本格的だな」朝っぱらからとんでもない事を言い出した。赤飯って確か、作るとかなり時間
2021年11月22日 22:31
カタカタカタとキーを叩く音が響いている。調子の悪い空調の音がハーモニーを奏でる。……なんてオシャレに言ってみたものの、そこそこ不快だ。「ねえ先輩、ここの空調、何とかならないんですか」「なってたら直ってる」「身も蓋もないんだから」「うるせえよ」そうは言うものの、先輩がキーボードを叩く手を止める様子はない。いつも通りだなあと思う。俺は先輩のこういうところが好きだし、尊敬しているのだ。指先
2021年11月21日 22:40
「……………………お腹すいた」そう気づく時には大抵手遅れなくらい体が空腹を訴えている。窓の外を見ればとっぷりと日が暮れていた。さてここで問題になるのは、今が前回食べてから何回目の夜か、ということだ。だがそんなことを考える頭を動かすための体力さえ底を尽きている。睡眠不足もあって目を閉じたら眠れそうだけど、そのまま死んでしまう可能性は否定できない。「た、食べ物…」握っていたペンを机の上
2021年11月20日 22:54
「ふっふんふふふ〜ん」今日も鼻歌まじりに掃除をする。気分は素敵な魔法使い。サッとひと拭きするだけで何もかもがキレイに……なーんて。新居に引っ越してきて一週間。未だに浮かれた調子が落ち着かない、「ららら〜」『ちょっとアナタ、いいかしら』「うひゃあ!?」急に声がして驚いてしまった。ちなみに私は一人暮らし、悲しいかな恋人の類もいなくて、今日は来客もない。そう、つまり。「オバケ
2021年11月19日 22:17
放置された公園のベンチに腰かけ、夜空を見上げる。吹き抜ける風の冷たさに身を縮め、カイロ代わりに購入したココアの缶を転がす。「月が食べられるって表現、言い得て妙だよね」隣でホットコーヒーを飲んでいたユウは、長い時間をかけて形を変える月を見上げながら言う。今日は皆既月食の日らしい。それを知ったのは今朝のニュースで、じっくり見ることになったのは目を輝かせたユウに連れ出されたからに違いない。
2021年11月19日 00:05
「聞いてよナオ。さっき凄いことがあってさ」アカネはスライドドアを開けるなりそう言った。返事はないが、いつものことだと気にせずに中に入る。「近くに歩道橋あるでしょ、雨の日に凄い滑るところ。 あそこでお婆ちゃんが困ってて。おっきい荷物持ってるの。 いやああるんだね、こんなテンプレなことって」驚きだよ。なんて両手を広げてから、相変わらず返事のない部屋の主のことを無視して窓を開けた。澄ん
2021年11月16日 23:18
「はあ、はあ……」息が切れる。必死に鞭を打ち続けた体はボロボロで、体が千切れそうだ。実際にどこかが千切れているのか、ぶちぶちと繊維の切れる音がする。「まって、休憩を、」悲鳴を上げてもどんどん前に進んでいく。引きずり回されるような感覚に、どうにか足を動かす。体が硬直して熱を帯びる。もうだめだ。いい加減どうにかなってしまいそうだ。限界ギリギリのところで、ようやく解放された。
2021年11月16日 18:42
「かんぱーい!」と、グラスを合わせる。最初はビール……なんてルールはなく、私はサングリアを、対面のルカは梅酒のロックで唇を濡らしている。喉を通っていく甘みと酸味がブレンドされた冷たさは何者にも変えがたい快感を脳に伝えてくる。「あぁ〜おいっしい〜」「美味しいね」ルカと一緒に飲むのは久々だ。社会人になってからは互いに忙しくてなかなか予定も合わなかった。仕事の話や学生時代の友人の話な
2021年11月14日 22:01
「お使い系のゲームあるじゃん」リオンが両手に荷物を持った状態で切り出した。鼻息荒く聞いてほしいと息巻いているので僕は一応肯定しておく。「まあ、あるね」「あれって何が楽しいのかなって思ってたんだけど」「うん」「今すーごい楽しいんだよね」ドサドサと置かれた荷物には頼んだものが入っている。急にお使いやりたい!なんて言い出した時はどうしたものかと思ったけど、満足してもらえて何よりだ。
2021年11月13日 21:04
じわりと染み出すように、どこからともなく眠気が溢れてくる。眠い。そう自覚してしまえば全身が包まれるのは一瞬の出来事だ。今すぐ横になりたい。横になって、出来たら暖かい布団に包まれて幸せに眠りたい。「ダメですよ。……とか言いたいところですが、最近は無理をさせると上に怒られるんですよね」「なかなか大変だね、管理職さんは」「そう思うなら原稿を早く仕上げてください」「おっと、急に言葉が理解
2021年11月12日 21:23
「蛇を首に巻くやつあるじゃん?」蛇の話題を出しながら、ユアは亀のように首を上着の中に引っ込めながら横を歩くカホを見やる。「ああ、はい。テレビで見たことありますね」「あれって冬にしたら寒いのかな」「ええと、考えたこともなかったですね……」カホは真面目な顔で考え始める。む、と唇を尖らせながらどうなんだろう、と呟いている。白い肌は寒空に吹かれて赤くなっていた。どんな話題でも真剣に受け取
2021年11月11日 21:35
人を呪わば穴二つ。なら神様を呪った場合は、天から見守っているとかいう神様も、穴に入ってくれるだろうか。「ツクシ、一緒に帰ろ」下駄箱で靴を履き替えていると背後からそんな声がした。振り向けば先生に睨まれている明るい髪色に、負けず劣らず明るい笑顔を浮かべたサヤが立っていた。「おー、いいね」私もニッと笑えば、サヤは「へへ、やったぜ」と言って並んでくる。「珍しい。今日早いんだ?」「
2021年11月10日 21:54
頭が痛い。ぎりぎりと輪っかで締め付けられているような感覚がする。ああでも、晩御飯、作らなきゃ。そう思うのに体が沈み込んだベッドから立ち上がれないでいる。この間にも時間は刻一刻と過ぎていて、窓の外はすっかり暗くなっている。「お姉ちゃん、大丈夫?」とんとんと優しいノックの音とともに、目に入れても痛くない妹の声が聞こえる。心配させてしまっている。何とかしなければという気持ちがぐぐっとベッドから
2021年11月9日 22:29
――届いてしまった。ああどうしよう。なんで買ってしまったんだろう。ぐるぐる部屋の中を動き回りたい気持ちを抑えて、机の上に置いてある小さな瓶を見つめる。不思議の国でアリスが飲んでいたような、まるで玩具のような見た目をしている。指先でつつけば、たぷんと液体が揺れた。ピンポーン。「っおわあぁ!?」心臓が飛び出たんじゃないかと不安になるくらい驚いた。衝撃で小瓶が倒れたが、ガラス製ではな
2021年11月8日 21:49
「いでででで!!っ、なんだ!?やはり殺す気か!?謀反か!?痛めつけても何も出ないぞ!?」「HPは減ってないすよー。団長さんもやっぱり凝ってますねー。ストレッチ大事っすよー」「お前!っくそ!どこにそんな力があるんだ!?いだだだ!」施術中は暴れないでほしい。ガチガチに固まった筋肉を解しながら「力抜いてください」と付け加える。そもそも事前に痛みが生じると説明してあるのだ。部下の人だって実験台