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暖かいのは心から_11月12日真偽日記

「蛇を首に巻くやつあるじゃん?」

蛇の話題を出しながら、ユアは亀のように首を上着の中に引っ込めながら横を歩くカホを見やる。

「ああ、はい。テレビで見たことありますね」
「あれって冬にしたら寒いのかな」
「ええと、考えたこともなかったですね……」

カホは真面目な顔で考え始める。む、と唇を尖らせながらどうなんだろう、と呟いている。白い肌は寒空に吹かれて赤くなっていた。
どんな話題でも真剣に受け取ってくれるカホを眺めるのが好きだった。

「蛇は恒温動物ですし、外気温と同じ程度の体温になるとしたら、冷たそうですね」
「なるほど。じゃあやめとくか〜」
「え、やるつもりだったんですか」
「首周りが寂しいからさあ、今」

寒がりのユアにとって冬に移り変わる今ですら凍えるほどの寒さだ。出来るなら冬眠したい。ぶるりと震えながら襟元を正した。

「ここに巻いてるのが蛇だったら、オシャレでしょ」
「オシャレ……」
「なんて、冗談冗談。そんな真に受けないでよ」

けらけらと笑うユアにつられたのか、カホもくすくすと笑う。そしてそのまま、そっとユアの冷えた手が取られた。

「ユアさん、これからマフラー買いに行きませんか?」
「やっぱ誘導にしては下手だった?」
「わかりやすくて助かります」

本当はこのまま帰るのはなんとなく味気なくて、もう少し時間を引き伸ばしたかっただけだ。買い物じゃなくてもよかった。でも嬉しい。ユアはむにむにと唇を動かす。

「マフラー、せっかくならお揃いにしたいです。ダメですか?」

カホの手は暖かい。ユアはじんわりと伝わる熱を感じながら、照れ隠しに目を逸らした。

「ふわふわで暖かいのがいいな」
「つるつるの冷たいのはいいんですか?」
「もー、蛇はいいよー」

笑いながらユアは歩き出す。手を引かれるようにして、カホもついていく。

冬が近づいている。
嫌な足音は、軽やかなステップにかき消された。


寒すぎる。ドラッグストアをうろついていると「温めぐり かけぽか」という首にかけるカイロが目に入ったので買った。

家で使ってみたがなかなかに温かい。
職場の暖房がつくのはまだ先になりそうなので、沢山着込んでバレないようにしながら温まろうと思う。ついでに肩こりが直れば御の字である。

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