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宇宙で1番沁みる味_11月10日真偽日記


頭が痛い。ぎりぎりと輪っかで締め付けられているような感覚がする。
ああでも、晩御飯、作らなきゃ。そう思うのに体が沈み込んだベッドから立ち上がれないでいる。この間にも時間は刻一刻と過ぎていて、窓の外はすっかり暗くなっている。

「お姉ちゃん、大丈夫?」

とんとんと優しいノックの音とともに、目に入れても痛くない妹の声が聞こえる。心配させてしまっている。何とかしなければという気持ちがぐぐっとベッドから起き上がる気力に繋がりそうだ。

「大、丈夫~……」

のろのろ歩いてドアを開ける。
しまった、移しちゃうかも。風邪かもしれないのに迂闊だった。早く閉めなきゃ。あれでも晩御飯、そうだ、晩御飯作らないと。今日もお母さんたち遅いし。

「全然大丈夫じゃあないよね?」

ぷくぅと頬を膨らませたサクラは宇宙一可愛い。衝撃で宇宙空間まで飛んでしまいそうだ。これで頭痛まで吹き飛んでしまえばよかったのに、空気の読まない私の頭はギリギリした痛みを伝えてくる。
頭を押さえつつ、苦笑した。

「ちょっと頭痛いだけだし、ごめんね、今から晩御飯、つくるから遅くなっちゃうね」
「だめ。今日は私が作る」
「ええっ、だめだよ、火とか使うんだから」

ちなみにサクラは小学三年生。まだまだ目を離すのは怖い年頃である。まあ可愛さのあまり目を離そうなんて微塵も思えないのだけど。
それはさておいて。火を使うなんて危なっかしくて許可出来ない。私がキッチンに行くなら作ってしまえばいい。

「火を使わないならいいんでしょ?」
「そう、だけど」
「じゃあお姉ちゃんはベッドで寝てて」
「でもっ、危ないよ」
「いーから。一人でお留守番だって出来るんだし。困ったら呼ぶ」

小さな手がぽいんぽいんと体を押してくるので渋々ベッドに戻る。
ああまったく、頭の痛い体が憎い。今こうして横になっているうちにサクラが怪我をしたら?それにサクラの成長をこの目に焼き付けられないなんて。情けなくて悔しい。
いっそのこと、見に行ってしまおうか。

「……なんで起きてるの」
「え、ええと、ちょっと休憩?みたいな?」
「見に来ようとしてたんでしょ」
「あははー……、さ、サクラ、それ何?重いならお姉ちゃん持とうか?」
「大丈夫。寝てて」

ゆっくりと歩いてくるサクラはお盆の上を気にしている。そこには湯気の上がったお茶碗がふたつ。やや大きい水色が私のもので、小さめのピンク色がサクラのものだ。

「サクラ、ここで食べるの?」
「そうでもしなきゃ、お姉ちゃん、部屋から出てきちゃうでしょ」

心配だし寂しいし、否定出来ない。笑って誤魔化しておこう。小さく溜め息を落とすサクラも可愛い。

さて、サクラが一生懸命運んできてくれたものに目をやる。
どうやらお茶漬けのようだ。確かに買いだめがあったはずだ。これならケトルでお湯を沸かすだけでいい。梅干しを載せてくれているのはサクラなりの優しさだろう。食べる前から胸がいっぱいになる。

「美味しそう。ありがと、サクラ」
「ただお湯かけただけだよ」
「ふふ、それでも嬉しいの。いただきます」
「いただきます」

食べやすいように用意してくれたスプーンで掬って口に運ぶ。
はふはふと口の中の熱さを逃がしながら味わう。シンプルなお茶漬けでも特別に暖かくて美味しい気がした。


頭痛が強かった。

私の風邪はだいたい頭痛から来るタイプで、喉や熱に症状が出ることはほとんどない。そして顔色も変わらないので、機嫌が悪いと思われがちである。

とにかく痛みを何とかしようと薬を飲んだ。
ビタミン剤も放り込んだので今日は早く寝よう。

よく考えたら前にお粥で似た話を書いた気がする。まあいい。頭が痛いせいにしておこう。は

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