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終業時間は夢の後_11月24日真偽日記

「怒ってます」
「はい」

両腕を胸の前で組、頬を膨らませ、ザ・怒っているホノカがいたので何となく正座しておく。
怒っている理由は多すぎて思い当たらない。さてどれだろうか。また靴下を丸めたまま置いておいたか、上着をその辺に置いてしまったか、れともお弁当箱に残っていたご飯粒を食べてしまったとか……。うーん、わからん。

「ところでなんで正座したんですか?」
「えっと、それはホノカさんが怒ってるからですかね?」
「私、リョウ君に、とは言ってないんですけども」

まさかの引っかけである。正座を解除しながら肩を竦めた。
しかし、この手のやり取りなら何度も経験しているのでもう慣れたものだ。それにホノカも本気で怒っているわけじゃないと思うしな。

「それじゃあ結局何に対して怒ってるんだ? 」
「職場の人間関係〜……」
「おー、それはそれは、大変だ」
「他人事のようですが、リョウくんには大事な仕事があります」
「というと?」

俺にできることなんて晩御飯の準備と明日の弁当作り、皿洗い、掃除、洗濯くらいだ。我ながら十分すぎるんじゃないだろうか。

「まだありますよ」

心を見透かしたようなことを言うホノカは疲れたような足取りでやってきて。
ぽすん。と、胸の中に飛び込んできた。

「こうしてください」

そのままぎゅっと抱きしめられる。
顔を押し付けられているせいで表情は見えないけれど、珍しいことをしているせいかやや熱く火照っているのがわかる。

「お役に立ててますかね?」
「もちろん。でも終業時間はもうしばらくかかりそうです」
「なるほど。では、お好きなだけどうぞ」

立っているのも疲れるからとベッドにダイブしてからもホノカが離れることはなく。そのまま寝落ちするまで抱きしめていた。

スキンケアを施してやってから、まだ残っている洗い物を済ませて明日の準備までやっておく。偉すぎる。

そんなこんなで疲れたので、俺も癒しを求めてホノカを抱きしめて眠ることにした。これで多分疲れは吹き飛んでしまうはずだ。
淡い期待をしながら目を閉じる。暖かい体温は心地よく微睡みを誘ってきた。




懇意にしていた車のディーラーと揉めている。
少額の話ではあるのだが、態度を含めて納得がいっていない。

かなり短気かつ根に持つ性格なので、次はここで買わないだろうな、と決意している部分がある。少なくとも五年以上後の話なのだが。

1万以下の話で今後の100万近くを損すると考えると恐ろしい話だ。だがそれが人間関係というものかもしれない。

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