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気ままな読書日記

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ジャンル関係なく、気ままに本の感想を書いていきます。
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2022年4月の記事一覧

左巻健男『怖くて眠れなくなる元素』PHP

左巻健男『怖くて眠れなくなる元素』PHP

著者もあとがきに書いているが、金属ナトリウムの実験は、とても刺激的である。アルコールの中から取り出し、水をたらすだけで発火する。実験は本当におもしろい。化学のおもしろさを広めている著者によるシーリーズ本である。

書名に「怖くて眠れなくなる」とついているように、楽しくおもしろいと言うより、過去および将来の問題を取り上げて考えさせる内容である。

炭素「C」では、パロマ工業の瞬間湯沸かし器が原因の一

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ジェイソン・ドーシー、デニス・ヴィラ『Z世代マーケティング 世界を激変させるニューノーマル』ハーパーコリンズ・ジャパン

ジェイソン・ドーシー、デニス・ヴィラ『Z世代マーケティング 世界を激変させるニューノーマル』ハーパーコリンズ・ジャパン

本書は、米国の調査会社CGKに所属する著者によるZ世代についての解説したものである。所属会社での調査等を踏まえて書かれていることから、米国の状況を知るためには有益ではないかと思われる。知見の共有を目的としている。

Z世代とは、およそ1996年~2012年に生れた世代に対する名称であり、最近、よく使われることから、聞いたことがあると思われる。それ以前の世代と、思考や行動が大きく異なるとの分析がされ

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白山芳太郎『神社の成立と展開』富山房インターナショナル

白山芳太郎『神社の成立と展開』富山房インターナショナル

人類の歴史の99%は狩猟採集生活で、土器は発明されず、生で食べるか、焼いて食べるかしていた。煮物用の土器を持つ狩猟採集生活というのは日本にしかないという。

農耕は、狩猟採集生活によって食材を採りつくした場所から始まる、しかし、日本列島の人びとは探りつくさなかった。それほど自然が豊かであった。

食材を採りつくせないほど豊かなところでは「定住」した。三内丸山遺跡や、真脇遺跡などの縄文遺跡では、なが

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塩澤幸登『人間研究 西城秀樹』河出書房新社

塩澤幸登『人間研究 西城秀樹』河出書房新社

歌手の西城秀樹が亡くなってから4年が経過するが、いまだに惜しむ声が絶えないという。熱狂的なファンは、死ぬまで彼のことを忘れず、彼の音楽を聴きつづけるという<ヒデカツ(秀活)>という行為をしているという。

ヒデカツには、①一直線型、②ブーメラン型、③新規発生型の3つのパターンがあるが、著者はブーメラン型だという。彼の死により戻ってきたという意味であろう。

著者は平凡出版(現マガジンハウス)の元雑

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老松克博『空気を読む人 読まない人  人格系と発達系のはなし』講談社現代新書

老松克博『空気を読む人 読まない人  人格系と発達系のはなし』講談社現代新書

著者は、精神科医で、臨床心理士、ユング派の精神分析を行う。ほとんどの人は、人格系と発達系のどちらかに分かることができるという、著者の考え方を提示している。

会議の場で、空気を読まないで自分の思っていることを言う人と、空気を読み過ぎてイヤな気分となり、怒りを覚える人とがいる。空気を読まない人と空気を読む人とがいるが、どちらのタイプもいる。しかし、自分は関係ないと考えるのは間違いで、程度の差こそあれ

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田坂広志『なぜ、我々はマネジメントの道を歩むのか 新版』PHP新書

田坂広志『なぜ、我々はマネジメントの道を歩むのか 新版』PHP新書

2007年に出版された単行本を加筆・修正し、出版した新版である。この書名に惹かれて、以前、手に取ったことを忘れて購入した。

マネージャーとは、「部下や社員の人生」という「重荷」を背負う仕事であると感じたという。「部下や社員の人生を預かる」立場であるという。

「部下や社員の人生を預かる」とは、部下や社員の「生活」に責任を持つという意味。もう一つの深い意味は、部下や社員の「成長」に責任を持つ。

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坂村健『DXとは何か 意識改革からニューノーマルへ』角川新書

DX(デジタルトランスフォーメーション)がブームとなっている。デジタル庁の発足もあり、政府が推奨することもあって、これを掲げる企業や自治体が多いように思う。しかし、日本は、世界的には出遅れているうえ、その本質を理解できてない人が多いという。本書は、この現状への危機感から著されたものと思われる。

DXは、「情報化」や「デジタル化」とは異なり、ユーザー側の考え方レベルから変える意識改革運動の側面が大

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エマニュエル・トッド『老人支配国家日本の危機』文春新書

エマニュエル・トッド『老人支配国家日本の危機』文春新書

本書は、著者が2016年~2020年に文藝春秋に寄稿した論考と、日本の歴史学者との対談を収めたものである。書名となった論考は、2020年6月の文藝春秋に掲載され、原題が「犠牲になるのは若者か、老人か」である。今のパンデミック下の状況での考察である。とても刺激的な題名となっている。

著者は、このパンデミックを「グローバリズムに対する最後の審判」だと捉える。「付加価値の合計」であるGDPが、現実から

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