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「ぬま大学」第10期開講! Iターン・Uターン・Jターン・地元の人々が心理的安全性の高い環境で相互理解を深める|イベントレポート

「ぬま大学」は、気仙沼市担い手育成支援事業の一つである。本noteにおいても度々取り上げてきたので、読者の中では覚えている方もいるかもしれない。「ぬま大学」は、多くの地方で行われているいわゆる地域活性化・地域力強化事業、ひらたく言えば地方創生事業の一つと考えられるが、多くの地方のそれらと比較したとき、大きく2点の驚くポイントがある。


10年目を迎える「ぬま大学」は日本全国でも珍しい地方の好事例

上記のnoteにも記載しているが、「ぬま大学」は10年近く継続している。多くの地方で取り組まれている地域活性化・地域力強化事業は、単年もしくは続いても3年程度と長期間続かないケースが多い。そこには多くの事情があるにせよ、多くの地方は同じ事業を続けられないケースが目立つ。

何でもかんでも続ければ良いというものでなく、ものによっては潔く終える方が良いものはあるにせよ、根深い課題を持っている地方にとって、活性化の取り組みは長年続けてようやく芽が出るものが少なくない。とりわけ人材育成のようなものはそれにあたる。人はどれだけ天才であっても短い期間で育たないためである。

そうした中、「ぬま大学」は今年で10年目を迎える。運営主体となっているのは自治体及び自治体から事業を任せられている民間企業であるが、参加者は有志である。つまり有志が集まらないと実施できない事業なのだ。しかも参加者がいないにもかかわらず無理に続けているわけでない。有志が集まり続けている。それが10年に及んでいるのだから、驚くよりない。

さらに驚くべきは、その「ぬま大学」10年の軌跡を築いてきた運営者・参加者の多くが気仙沼市外にルーツを持った移住者やUターン者であり、年代も20代〜40代の若者が多いところである。恐らく全国的に見て、奇跡と言っても過言でもない人々によって、「ぬま大学」は続けられている。

筆者は、気仙沼市から少し離れた岩手県の自治体で暮らしているが、このような自治体の事業に参加する者が移住者中心であったケースはないし、20代〜40代の若者が中心だったケースもない。高校生の参加を募って平均年齢を下げなければ、若者の集まる状態を作れないのが実情である。

まして、10年続けるなど夢のまた夢といった状況で、ほんの少し離れただけなのに、これほどまでに大きな差が生じている点に強い疑問を抱かずにいられない。加えて言えば、「ぬま大学」の参加者は、男女比が半々くらいである。地元のこうした事業では、若者がいないのは当たり前として、女性の姿を見るケースも少ない。その意味でも「ぬま大学」には驚かされる。

自然と”幸福”が見られる「ぬま大学」の奇跡 - 第10期 第1日目の場から

5月27日、「ぬま大学」の第10期。2024年度の第一日目が開校した。

4月の説明会を経て、募集に応じた人々の中から選ばれたのは13名である。例年同様に移住者も多く、Uターン者も見られている。年代は20代〜40代。こちらもこれまで同様である。この日は、13名の受講者と運営・コーディネーターが大谷公民館で初めて対面することとなっていた。筆者もその一人である。

つまり、上記noteで伝えた散策の後、「ぬま大学」に参加した形となる。

大谷公民館

「ぬま大学」第10期の第一日目となるこの日は、運営する合同会社colereと第10期生、第10期生に伴奏するコーディネーターの顔合わせと相互理解をテーマとして行われている。行われた内容は主に以下の通りである。

  • 気仙沼市長によるご挨拶

  • ぬま大学について説明

  • 人生グラフを用いた自己紹介

  • バリューズカード

  • 第一日目の振り返り

  • 今後の講義間の過ごし方説明

冒頭、合同会社colereの紹介が行われ、公務の合間を縫って参加くださった気仙沼市長による講話と続いた。気仙沼市長の講話は、市長としての立場から紡がれた地方創生への疑問や地方を盛り立てるリーダーの必要性に関するお話だけでなく、一個人として参加者個々人の幸福を慮った言葉の数々が話されている。

とりわけ「ぬま大学」によって過ごす時間が各々のやりたいことのスタートになることを願って紡がれた言葉の数々は印象的で、「ぬま大学」が気仙沼市のためだけでなく、参加する一人一人の幸福のための存在であると感じられた。気仙沼市に移住を決めた方々の多くが口を揃えて『気仙沼市の人々は温かい』と話すが、その一端を垣間見た想いである。

その後、今回の会場となっている大谷地域の紹介を挟み、「ぬま大学」の説明が行われている。「ぬま大学」は、受講者がマイプランを作り、実践し、報告する半年間となる。説明の中で印象的だったのは、マイプランの作り方の説明の中で『誰を幸せにしたいか』という言葉があった点である。

気仙沼市長の講話の中にも見られたが、自然に『幸福』という言葉が見られるのは、それだけ『幸福』というものを常日頃から意識し、そこに真剣にフォーカスしてきたからなのだと考える。それは存外、容易なことでないし、誰もができることでもない。そんな『幸福』への念が自然に見られる点にただただ感嘆するばかりであった。

  • みんなで一緒にこの場をつくっていく

  • それぞれのペースを大切に

  • この半年間は、みなさんの時間

「ぬま大学」が大切にしていることとして、上記3点がある。”大学”という言葉から、多くの人々は『何かを一方的に教えられる場でないか』『一人一人がひたすら学ぶ努力をしなければならないのでないか』といったイメージを持つのでないかと思う。

しかし「ぬま大学」はそうでない。受講者の一人一人が各々のマイプランの作成から実現に向かって頑張るのは確かだが、決して一方的に何かを教えられるのではなく、また一人で孤独に頑張らなければならないわけでない。運営・コーディネーター・受講者の全員で「ぬま大学」を創り上げ、また自分のペースで自分の大切な時間を作っていくのが「ぬま大学」である。

少なくとも筆者は、今回の説明を受け、そのように感じた。実際のところ、会場への入室から本説明の時間、もっと言えば第一日目が終わるまで、一貫して誰もが話しやすく、誰もが受け入れられる空気があった。見ず知らずの他人が集まったその日に、それだけの安心感を得られるのは、大切にしていることがしっかりと柱になっているからなのだと思う。

心理的安全性の高い「ぬま大学」だからこその相互理解の即実現

説明会を終えた後は、4-5人程度のチームに分かれ、人生グラフ(ライフライン)を用いた自己紹介によって各々のバックボーンに関する理解を深めた後、バリューズカードを用いて各々の価値観に関する理解を深めた。正直な話、初対面の人々が集まり、自身に関するある程度深いところまで話す企画がしっかりと成立しているのは、不思議だった。

翻って言えば、それが成立する程に、心理的安全性の高い環境が構築されていたと言える。これは気仙沼市特有の人間の温かさに加えて、10年近く続けてきた中で育まれた豊かな経験知あってのものでなかろうか。そもそもこれらの企画がこのタイミングで成立している時点で、心から素晴らしい場だと感じずにいられなかった。

バリューズカード

「ぬま大学」第10期の第一日目は、このように相互理解を深める場として終え、次回からが本番という形で締められている。次回からは受講者の一人一人にコーディネーターが付き、各々のマイプランの作成、そして実現に向けて動き出すことになる。さも他人事のように書いているが、筆者もやるのである。

第一日目終了後は懇親会が開かれている。18人程度が参加し、昼の会よりも砕けた話をお酒と共に酌み交わし、お互いの距離感を縮めている。何を話したかは読者の想像に任せるが、終始笑いと高らかな声に満ちた楽しい時間だった。第2回目以降への期待感が高まるばかりである。

会場「ジャンジャン」

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